日々是劇評

関東圏内で観劇した舞台について率直に感想を書いています。
自分用の備忘録みたいなもんなんで遠慮なく辛口な批評もしています。

絞り込み 記事更新日=「2013/05」

Office Months 音楽劇 「ウレシパモシリ」  @ザムザ阿佐ヶ谷 2013/05/22
劇団くりびつてんぎょう 第10回公演 「あの素晴らしい愛をもう一度!」  @新宿シアターブラッツ 2013/05/20
Studio D2 第10回ダンス公演 「谷根千キャッツ!!」  @東京芸術劇場 池袋シアターウエスト 2013/05/12
野戦之月海筆子 「蛻(もぬけ)てんでんこ」  @夢の島公園 テント劇場 2013/05/06
神奈川県演劇連盟プロデュース公演 「踏切があがるとき」  @KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ 2013/05/05

※本文中に激しくネタバレ含みます!
 上演中の公演についてこれから観劇予定の方は閲覧ご遠慮ください。


Office Months 音楽劇
「ウレシパモシリ」

2013/05/22更新  ≪ザムザ阿佐ヶ谷≫ ≪Office Months≫ ≪2013/05

Office Months 音楽劇 「ウレシパモシリ」

Office Months 音楽劇 「ウレシパモシリ」

【原作】
遠藤周作「おバカさん」

【作・演出】
阿部義嗣

【音楽】
AKIRA

【キャスト】
秋山秀樹、阿部よしつぐ、天野朋子、岩本潤子、岩倉真彩、浮谷泰史、遠藤瑠美子、
小笠原大史、小倉卓、河上泰子、気谷ゆみか、金城尚美、沓沢周一郎、熊倉滉希、
小西のりゆき、小林沙織、小林美歌、佐々木誠、さとう未知子、じぇいそん、
鈴木彬子、高田亜矢子、高松舞、武田桃子、田中利花、土肥真夕菜、主山ナオミ、
芳賀一之、橋本薫、羽根渕章洋、日野原希美、平川めぐみ、平林靖子、原田美穂、
藤田悠平、藤本ゲン、松下湧貴、三浦奏子、宮下舞香、望月龍平、守屋由貴、
安室夏、谷中しおり、山本有祐子

【日程】
2013年5月17日(金)〜26日(日)

【会場】
ザムザ阿佐ヶ谷

【チケット料金】
前売  3,800円
当日  4,000円

【公式HP】
http://ureshipamoshiri.com/

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兄妹の元に突然下宿人としてやってきたフランス人ジェルマン。
彼はあのジャンヌ・ダルクの末裔だというが、
顔は冴えなく、格好も小汚く、体格も華奢で頼りない。

より多くの日本人に会いたいといって兄弟の元を離れたジェルマンは、
売春婦や占い師に助けてもらい一緒に時を過ごすが、
殺し屋をやっている遠藤に拉致されてしまう。
遠藤の復讐の道具として利用されるジェルマンだが、
彼の凶行を止めるべく自ら行動を起こす。

遠藤の最後の復讐相手・小森との騒動の中で
行方不明になってしまうジェルマン。
彼の仲間達がその安否を心配する中で、
まるで彼が生まれ変わったようなシラサギが皆の頭上を舞う・・・。


ざっくりと書くとストーリーはこんな感じ。
ちなみにウレシパモシリとはアイヌ語で「育み合う大地」の意らしい。

「音楽劇」と銘打っていたので
てっきり登場人物がミュージカル的に歌い出すものかと思っていたが、
基本的には芝居自体はストレートプレイで、
芝居の要所要所で男性と女性の歌い手的な存在が現れて
登場人物の心情を歌い上げるような作りになっていた。

これのハマリ具合がとにかくすごかった。
歌い手の歌唱力・立ち振る舞い・表現力が非常にすばらしく、
曲のメロディ、歌詞も非常に芝居にマッチングしているために、
彼らが登場してそれを歌い上げるたびに心をグッと掴まれて
大きく感情を上下左右に揺さぶられる。

その心地よい揺さぶりに自分は幾度となく鳥肌を立たされた。
隣の女性客は歌唱シーンになるたびに鼻をすすって泣いていた。
とにかく素晴らしかったの一言に尽きる。

最近ミュージカルの人気が少しずつ高まってきたせいなのか、
小劇場でもとってつけたように歌唱シーンを入れてくる芝居が多い。
とりあえず歌入れときゃ感動するだろみたいな。
しかしそんな浅はかな考えを持つ演劇人全員にこの舞台を観て欲しい。
「劇中に歌唱シーンを挿入する」とはこういうことなのだと、
まじまじと実感させられるであろう。


歌以外の芝居部分も非常に秀逸。

ダブルキャストどころかクインティプルキャストまで存在するという、
稽古の労力を想像すると油汗が出そうなキャスティング方式にも関わらず、
穴になっている役者は(自分が観た回では)一人もいなかった。

フランス人の主人公ジェルマンを演じていた山下湧貴は
最初こそ違和感を感じたものの、中盤から本当に外人にしか見えなくなっていたし、
劇団四季の羽根渕章洋が演じた渋い味のあるヤクザは
悪人でありながらも人間臭さ・泥臭さが醸し出された魅力的な人物になっていたし、
野良犬ポールを演じた山本有祐子の動物的なコケティッシュな動きも見事。
もちろん他のメンツも非常に技量のレベルが高く、
よくぞここまで人を集めたなと思った。

風船や布を使った舞台装置もシンプルながら非常に綺麗だったし、
ガンガン炊かずにピンポイントで絞りに絞って使っていた照明も好感度が高い。
ピアノやパーカッションの生音・生演奏ももちろん良かったし、
客席上に2階があるザムザの特徴的な構造を活かして
いろんな方角から立体的に音を出していたのも非常に効果的な手法だと思った。


個人的にいいなと思ったのは、
劇中で序盤から最後まで話題になっていた「ジェルマンが日本に来た理由」について。
ラストシーンで兄弟がこの追求を放棄したことにより、
最後までそれが明らかにならなかったことがよりお客の想像をかき立てて、
物語の奥行きと幅を広げてくれたように思った。


非常に刺激と元気を与えてくれた作品。
今回が再々演らしいが、もしまたさらにパワーアップした姿で再演してくれるのなら
自分は何度でも観に行く。


P.S.
今回の劇評が絶賛的な内容なのは、もちろん作品が良かったからです。
けっして東京小劇場観劇速報さんに
「辛口のレビューで注目です」って書かれたからではありません(苦笑)


 


劇団くりびつてんぎょう 第10回公演
「あの素晴らしい愛をもう一度!」

2013/05/20更新  ≪新宿シアターブラッツ≫ ≪劇団くりびつてんぎょう≫ ≪2013/05

劇団くりびつてんぎょう 第10回公演 「あの素晴らしい愛をもう一度!」 劇団くりびつてんぎょう 第10回公演 「あの素晴らしい愛をもう一度!」

劇団くりびつてんぎょう 第10回公演 「あの素晴らしい愛をもう一度!」

【作・演出】
山岡博美

【キャスト】
安藤清美、神山凌、渡邊顕彦、木崎誠、合志英知、琴音きなこ、石谷力、山田規、
高橋真美、濱島慎太、黒田さくや、風民、佐藤陽音、三枝聖、岡田千鶴、砂川英里、
神谷紗英、理紗、山田翼、はやしゆうへい、瀧恭介、三木美毅、なかがわあつこ、
後藤良子、安藤裕、熊井房樹、柿田康江

【日程】
2013年5月16日(木)〜19日(日)

【会場】
シアターブラッツ

【チケット料金】
前売  3,500円
当日  3,800円
平日昼割 300円引

【公式HP】
http://kuribitsu-tengyou.jp/

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物語はとある会場にカップルが次々集まってくるところから。
実はそれは別れを決意した夫婦が参加する「離婚式」の会場だった。

参加した5組の夫婦は、
それぞれ最後の共同作業として指輪を破壊したり、
結婚前の映像を振り返ったり、
恋の葬式をしたり・・・。

その中でお互いはお互いの思いに気付き、
それぞれのかたちで新しい道に進んでいく。

まぁ、こんな大体こんな感じの話かな。


この団体の芝居を観るのは初めてだったが
「くりびつてんぎょう」という団体名と、非常にポップなチラシから、
勝手に明るい今時の作風の作品だとばかり思って観に来たら意表を突かれた。
かなりアングラ寄りだったのだ。

役者は見得を切りながらセリフをがなりたて、
単語をひたすら吐きながら踊る抽象的なダンスシーンを混ぜ、
上半身裸になって服を振り回しながっら本当の愛とは何かを訴えかけてくる。
ひぇー、そういう系ならそういう系だってわかるチラシにしてほしかった(汗)
チラシ詐欺だぞコレ!(←言い過ぎw)


まぁ、アングラならアングラで、そういう視点で観劇するわけだが、
残念ながらその視点でみてもクオリティはちょっといまひとつ。

5組の夫婦が順番にいろんな儀式を行っていくのだが、
話の内容はひたすらこれの繰り返し。
観ている感覚としては、完全に同じ内容のオムニバスをずっと繰り返されてる感じ。
さすがに途中でげんなりしてしまった。

1本1本のエピソードは正直おもしろいものは少なく、
(あ、でもオカマと男勝り女のカップルは楽しかった)
それぞれの連携は皆無に近い。

せっかく「離婚式」っていうおもしろそうなテーマを取り上げているのに
こんな構成にしてしまったのだろうか。
さすがにこれはナンセンスだと思う。


あと役者の技量。
30人近くキャストがいて、見れる演技をする人間が2、3人ってのはツライ。
こういうジャンルの芝居はあえてヘタウマに演じる部分もあることはあるが、
自分が見た限りでは、ヘタウマではなくヘタのほうかなぁと思ってしまった。
まともな発声すらできない・目線も上げれないような役者も多数混じっていたが、
なんだろう、彼らは初舞台だったのだろうか?
このレベルのキャスト集めてシアターブラッツで素舞台、
それで3,500円とっていては、団体としてのあり方にまで疑問を持ってしまう。


うーん、なんかブラッツで嫌な思いすることが多いなぁ。。。
ここと相性悪いんだろうか自分?


 


Studio D2 第10回ダンス公演
「谷根千キャッツ!!」

2013/05/12更新  ≪東京芸術劇場 池袋シアターウエスト≫ ≪Studio D2≫ ≪2013/05

Studio D2 第10回ダンス公演 「谷根千キャッツ!!」 Studio D2 第10回ダンス公演 「谷根千キャッツ!!」

Studio D2 第10回ダンス公演 「谷根千キャッツ!!」

【演出・振付】
HIROKO KAWAI

【キャスト】
LISA、加藤千和、鳴海さつき、MINORI、大倉まい子、鈴木香奈子、
Nao、平野宗、本目静江、新井祥江、郡司望帆、小林留唯、
立原ありさ、ともい江梨、平井莉香子、中山扶有美、
芝井美香、山田翼、佐藤友美、尾門和也

ゲスト:渋谷健一

【日程】
2013年5月11日(土)〜12日(日)

【会場】
東京芸術劇場 池袋シアターウエスト

【チケット料金】
前売・当日  3,500円
早期予約割引 3,000円

【公式HP】
http://www.geocities.jp/kawai_dance_d2/

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谷根千(ヤネセン)には猫がごろごろしている・・・。

文京区の下町、谷中・根津・千駄木。
ここは谷根千と呼ばれ、雑誌やTVでもよく取り上げられる現在人気の街。
この辺りは猫が多くたむろっていて、猫の街としても有名である。
昼間からごろごろしてる猫たちののどかな姿は、
忙しい人間たちから見ると羨ましい限りだ・・・。

しかし!!

それは仮の姿。
実は彼らは夜な夜な集会を開き、日夜踊りまくっているのだ。
そして、偶然か必然かわからないが、
知らず知らずのうちに人間社会に影響さえ及ぼしている。
これはそんな猫たちの裏での活躍を、ダンスと芝居で綴った物語です。


以上、こりっちの公演紹介ページから抜粋したあらすじ。


ダンスパートと芝居パートに分かれた90分程度の公演だったが、
うーん、「公演」なのか「発表会」なのかと問われると
正直言って後者のほうだったなぁと思わざるを得ない。

ダンスは個々では上手い者もいるのだが、
全体としてみるとかなり技量にばらつきがあり、
揃えるべき振りのポイントポイントがほとんどズレていた。

うーん、それぞれ練習はたくさんこなしているのだろうけど、
集団で合わせる時間が少なかったのだろうか?
カチッと揃ったダンスを見たときの、
あのゾワッとくる一体感は90分間でほとんど感じられなかった。


なによりテンションが下がってしまったのは芝居パートの稚拙さ。
せっかくオープニングダンスでガッツリ盛り上げにいったのに、
その後のテンポの悪い会話で大きなブレーキ。
舞台幅がとんでもなく広いのに小劇場的な演技をしている役者が多く、
そういった違和感もかなり観劇の邪魔になってしまった。


ストーリー自体もあまり面白みないしなぁ。
シンプルなのはかまわないが、ちょっと幼稚過ぎるように感じる。
あ、幽霊達が墓石でカホンやるのは面白い発想だと思ったけど。

あと「谷根千」を銘打っているのでもうちょっと地域に根付いた話なのかなと思ったら、
豆知識的に地域ネタを入れてくるだけで、
あまり有効にストーリーに絡めている印象を受けなかった。
その地域ネタも質が全体的に浅いし。
これだったらWikiPediaでも見れば何キャッツでも作れそうな気が(苦)


うーん、いろんな面においてクオリティの向上が必要ではないかと思った。
ただの「大きな小屋でやった大きな発表会」で3,500円をとっていては
お客はいずれ離れていってしまうだろう。

すでにシアターウエストをいっぱいにする集客力はあるようなので、
彼らを逃がさないようなレベルの高い作品作りを期待したい。


 


野戦之月海筆子
「蛻(もぬけ)てんでんこ」

2013/05/06更新  ≪夢の島公園 テント劇場≫ ≪野戦之月海筆子≫ ≪2013/05

野戦之月海筆子 「蛻(もぬけ)てんでんこ」

野戦之月海筆子 「蛻(もぬけ)てんでんこ」

【脚本・演出】
桜井大造

【キャスト】
濱村篤、ばらちづこ、渡辺薫、森美音子、崔真碩、阿花女、段恵民、
武内理恵、ロビン、志衣めぐみ、リュウセイオー龍、春山恵美、桜井大造

【日程】
2013年5月1日(水)〜5日(日)

【会場】
夢の島公園・第五福竜丸展示場前広場・テント劇場

【チケット料金】
前売  3,000円
当日  3,300円
中高生 1,500円
小学生以下 無料

【公式HP】
http://www.yasennotsuki.com/

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『蛻てんでんこ』は「蛻」という町を物語世界とします。
そして、その町自体が主要なテーマとなります。

町をループする過去と未来の時間帯とともにテントの時間も流れます。

地区にある古いデパートは大蛤の蜃気楼に飲まれ現在は蛻の殻ですが、
「蝿の王」なる人物が買い取り、ビー・フライという蜂の代行をする蝿や、
医療用食用の蛆、美容用の蛭などが飼育されています。

また、サッド・ウェスト地区にはすでに用途不明となった
「虹」という元公共施設がありますが、
そこからは青少年たちが逃走を企てています。

キタ地区は不法投棄された廃棄物が堆積した荒れ地ですが、
黄昏に黒い月がかかり裸虫がばらばらに集まり焚き火を囲んでいます。

このような空間で、裸虫はそれぞれのトラウマと格闘します。
しかし。トラウマはすでに未来のものでもありました......。


以上こりっちから転載。


あらすじを見てもらえばわかるとおり、
全然わからない内容だった(笑)
それも2時間30分の長尺で。


もうまさにアングラを突っ走る作風で、
役者はほとんどのセリフを正面切ってアジるように吐いていた。
しゃべっている内容もこの芝居独特の用語だらけで、
その意味を理解するのに非常に頭を使うし、
正直頭を使っても結局はどういう意味なのかよくわからない(笑)
完全に「観て感じる」タイプの作品だった。

「観て感じる」に近い系統としては野田秀樹などもあるのだが、
あちらとは比べ物にならないぐらいに内容が難解。
どんなに世界観を独特にしても良いのだが、
もうちょっと客にとってとっかかりになるワードを混ぜてくれたら
入っていきやすいのになぁと思った。
やっぱり雰囲気だけでなく、ストーリーだって楽しみたいもの。

あと役者の力量に差があったのが残念かな。
序盤から最後まで終始長ゼリフのオンパレードなのだが、
ただアジるように歌い上げるのと、意味を踏まえた上で抑揚をつけるのとでは
お客に伝わってくるものが全く違う。
後者のセリフの吐き方をする役者がもっと多ければ
内容の理解度ももう少し高まったかもしれない。


テント芝居ということで、奥から軽トラが土をぶちまけたり、
口に含んだ水を何度も噴き出したり、手動エレベーターがあったり、
ラストは全員で火を炊いていたりとやりたい砲台だった。
こういうテント芝居ならではの独特の演出はやはり面白い。

単純に見た目だけで面白い部分もあるので、
もうちょっと敷居の低い、エンタメ性の高い作品だったらより良かったなと思った。
別に、万人ウケする作品を目指すことが常に正しいわけではないが、
コア客を逃がさずに間口を広げることは可能なはず。

スーパー歌舞伎のように、時代とともに変化していくテント芝居。
そんな風になっていったらいいなと勝手に思ってみた。


 


神奈川県演劇連盟プロデュース公演
「踏切があがるとき」

2013/05/05更新  ≪KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ≫ ≪神奈川県演劇連盟≫ ≪2013/05

神奈川県演劇連盟プロデュース公演 「踏切があがるとき」

神奈川県演劇連盟プロデュース公演 「踏切があがるとき」

【脚本】
緑慎一郎(演劇プロデュース『螺旋階段』) 

【演出】
土井宏晃(風雲かぼちゃの馬車) 

【キャスト】
遠藤仁志(放映新社)、大島寛史(チリアクターズ)、岡本みゆき(劇団麦の会)、
織田裕之、こゆきパンティー、しうまい(横須賀市民劇場プロジェクト)、
鈴木舜・サムスン(劇団裸眼と眼鏡)、高橋裕一(劇団!王子の実験室)、
田代真佐美(演劇プロデュース『螺旋階段』)、田中勝彦(ヨコスカ・ベアフット・シアター)、
仲尾玲二(G/9-Project)、橋本敬介(劇団三日月座)、前田佳寿美、
緑慎一郎(演劇プロデュース『螺旋階段』)、宮上綾、村井彩子、
山科幽閉(吾戯徒企画)、山本悦子(劇団河童座)、山元洋一

【日程】
2013年5月3日(金)〜5月5日(日)

【会場】
KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ

【チケット料金】
前売  2,500円
当日  2,800円

【公式HP】
http://kenenren.org/project/takinkaat.aspx

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父は国鉄で働いていた。1987年国鉄は民営化される。
その狭間で起きていた国鉄労働組合の闘争。
父は闘争に敗れ堕ちていく。働いていた姿すら覚えていない息子は
父の生きた道を父の知り合いの証言を頼りに紐解いていく。
遠くで聞こえる踏切の音、父は何を息子に残したのか。


息子とその婚約者が父の古い友人と偶然に出くわし、
過去の父の生き様を回想シーンとして展開していく構成だ。


自分は国労のストが起きていた時代をよく知らないため、
正直言ってストに命をかけている人々の姿がいまいちピンとこなかった。
国労闘争自体がどうしても乱暴な強硬手段であるため、
それを行うに至った人々の想いが理解できないと共感しづらいのだ。
自分の勉強不足によるところもあるが、
もうちょっと若年層を引きこむ工夫を施してくれると嬉しかったなぁ。


しかし作品としては残念な部分が目立ってしまっていた。


まず演出だが、KAATの大ホールという大きな舞台で
なんでこんなこじんまりとした舞台の使い方をしたのであろうか。
幅は7間以上あるにも関わらず、全体で広く使っているシーンはごく一部。
ほとんどは上手、中央、下手にエリアを3分割しそれぞれ順番に使用するだけ。
広い舞台を狭く使って、しかもその狭いエリアに人を詰め込んで距離の近い芝居をするので
観ていて滑稽で仕方がなかった。
もし劇場にもったいないおばけがいたとしたら憑かれて殺されると思う(笑)
これだったらSTスポットでもできなくないじゃん(笑)

あと音の使い方。
シーン切替に踏切の音やら電車の走行音を使うのはあまり効果的でないように思った。
確かに「電車」を題材にした作品なのでそういった演出をしたい気持ちはわかるが、
日常会話シーンのつなぎとしては不向きだと思う。
ここぞという時に使うのは1発使うのはいいけど、ちょっと乱発しすぎな感があったしね。

良いシーンでかかるそれっぽいBGMも、選曲・タイミングが微妙。
このへんは趣味の領域でもあると思うが、やっぱり「んんっ?」と思う部分が多かった。


そして役者も声質が良い人が揃ってはいたのだが、
どうも男性陣に棒読み役者が多かった。
セリフ読みが単調というだけではなく、全く相手のセリフを受けていないのだ。
さらにずっと奥手奥足などそっちのけで真横を向いてしゃべっているのに
良い台詞だけ客席向いてしっかりキメにくるもんだから、
全体を通してなんだかセリフの発表会みたいになっていた。
あとずっと仁王立ちでしかセリフしゃべれない人も。

逆に女性陣は好感の持てるセリフ回しができる役者が多く、
特に奥さん役の村井彩子は特別光る演技をしていたように思う。
最後の独白までに人物描写のシーンが少なかったのがもったいない部分ではあるが。
奥さんの人物描写がもっと序盤から行われていれば、
もっともっと心を動かされる独白シーンになっていたのでは。


神奈川県演劇連盟プロデュースと銘打って
こんな良いハコで公演打つんだから、
正直もう2、3歩上のレベルを目指してほしいと思った。


 

◎日々是劇評

劇場

APOCシアター
Art Theater かもめ座
KAAT 神奈川芸術劇場 ホール
KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ
pit北/区域
RAFT @東中野
アサヒ・アートスクエア
アトリエだるま座
ザムザ阿佐ヶ谷
シアターコクーン
シアター風姿花伝
シリウス・ビー
すみだパークスタジオ
ラゾーナ川崎プラザソル
王子小劇場
下北沢 「劇」小劇場
下北沢 OFF・OFFシアター
下北沢 シアター711
下北沢駅前劇場
絵空箱
吉祥寺シアター
高円寺明石スタジオ
座・高円寺1
笹塚ファクトリー
参宮橋トランスミッション
上野ストアハウス
上野小劇場
新宿 スペース雑遊
新宿 紀伊国屋ホール
新宿サンモールスタジオ
新宿シアターサンモール
新宿シアターブラッツ
新宿シアターモリエール
新宿タイニイアリス
神奈川県立青少年センター ホール
神奈川県立青少年センター 多目的プラザ
赤坂レッドシアター
川崎H&Bシアター
浅草橋アドリブ小劇場
相鉄本多劇場
大倉山記念館 第四集会室
大和田伝承ホール
池袋 シアターKASSAI
池袋シアターグリーン BASE THEATER
池袋シアターグリーン BOX in BOX
中野HOPE
中野MOMO
中野ウエストエンド
中野ザ・ポケット
中野テアトルBONBON
東京芸術劇場 池袋シアターウエスト
東松原ブローダーハウス
日暮里 d-倉庫
八幡山ワーサルシアター
文京シビック小ホール
北池袋 新生館シアター
本願寺ブディストホール
夢の島公園 テント劇場
六行会ホール
和光大学ポプリホール
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団体

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47ENGINE
613
8割世界
9-States
A・M・D企画
aji
Broadway musical
CAP企画
COTA-rs
CP Project
DULL-COLORED POP
HIME企画
Human Art Theater
IQ5000
Kanikuso
LiveUpCapsules
MS2
Office Months
Oi-SCALE
OUT of WIT
Platform
Re:Play
SORAism company
Studio D2
STUDIO HeadZ
The Dusty Walls
アトリエ・ダンカン
いと、まほろば
ヴォードヴィルの会
オールアクトカンパニー
カプセル兵団
からふる
シノハラステージング
セブンスキャッスル
ソラリネ。
ナイロン100℃
ネコ脱出
メガロザ
らちゃかん
リトルプラネット
開幕ペナントレース
企画ユニットあいてむぼっくす
空想組曲
空想天象儀
芸術集団れんこんきすた
劇団IQ5000
劇団PEOPLE PURPLE
劇団SSP
劇団お座敷コブラ
劇団くりびつてんぎょう
劇団ニコルソンズ
劇団マチダックス
劇団メリーゴーランド
劇団宇宙キャンパス
劇団喫茶なごみ
劇団東京晴々
劇団熱血天使
劇団扉座
劇団離風霊船
座・あおきぐみ
子供脳みそ
神奈川県演劇連盟
人衣企画
青少年のための芝居塾
川崎インキュベーター
相模舞台同盟
張ち切れパンダ
天才劇団バカバッカ
東京都カリスマイル
虹の素
梅パン
風雲かぼちゃの馬車
平熱43度
野戦之月海筆子
立体再生ロロネッツ
立体親切
流星揚羽
緑慎一郎とミユキーズ
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外部リンク

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