日々是劇評

関東圏内で観劇した舞台について率直に感想を書いています。
自分用の備忘録みたいなもんなんで遠慮なく辛口な批評もしています。

絞り込み 記事更新日=「2013/11」

IQ5000 「Start Last 〜くすしきちきゅう〜」  @中野ウエストエンド 2013/11/30
劇団東京晴々 「帝国のクッキング」  @上野ストアハウス 2013/11/29
カプセル兵団 「SPACE一休」  @八幡山ワーサルシアター 2013/11/24
張ち切れパンダ 5かいめ 「さめザわ」  @新宿サンモールスタジオ 2013/11/20
A・M・D企画第22回公演 「若狭姫物語 〜種子島から未来へ〜」  @池袋シアターグリーン BOX in BOX 2013/11/17
劇団離風霊船 リブレプロデュース#5 「超特急夫婦」  @下北沢 シアター711 2013/11/16
劇団宇宙キャンパス 「メランコリーにさよならを」  @新宿シアターサンモール 2013/11/15
からふる #006 「『パパなんて大嫌い』と『さとうさんち』」  @絵空箱 2013/11/14
8割世界 「そこで、ガムを噛めィ!!」  @中野テアトルBONBON 2013/11/03
OUT of WIT 「神殺しと銀色のクジラ」  @参宮橋トランスミッション 2013/11/02
ソラリネ。#10 「止むに止まれず!」  @上野ストアハウス 2013/11/01

※本文中に激しくネタバレ含みます!
 上演中の公演についてこれから観劇予定の方は閲覧ご遠慮ください。


IQ5000
「Start Last 〜くすしきちきゅう〜」

2013/11/30更新  ≪中野ウエストエンド≫ ≪IQ5000≫ ≪2013/11

IQ5000 「Start Last 〜くすしきちきゅう〜」 IQ5000 「Start Last 〜くすしきちきゅう〜」

IQ5000 「Start Last 〜くすしきちきゅう〜」

【作・演出】
腹筋善之介

【キャスト】
朝田博之、アフリカン寺越、五十嵐聡子、大友美香子、久保田寛子、佐治彩子、
ドン・タクヤ、巴里マリエ、べっち。、マット前転、渡部愛、石谷力(IQ2500)、
大西俊貴(IsLand☆12)、奥田美樹(IsLand☆12)、腹筋善之介

【スタッフ】
舞台監督: 土井歩
照明: 島田康和(S.P.C)
音響: 齋藤瑠美子
衣装: 井形紗代子
写真撮影: 石澤知絵子
宣伝美術: 神野晋一(analogengine.jp)
制作: オフィスIQ5000、井上信、Little giants
企画・製作: オフィスIQ5000

【日程】
2013年11月27日(水)〜12月1日(日)

【会場】
中野ウエストエンド

【チケット料金】
前売  3,000円
当日  3,200円
関東圏外割引 1,500円
学割  1,500円

【公式HP】
http://iq5000.com/

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舞台は2211年、地球に大きな彗星が接近していた。
人類は全ての宇宙船を集結させ、彗星の軌道を反らすように試みる。

地上のスタジオでは36時間テレビの生放送が始まろうとしていた。
過去の英雄であるホワイトバード号のクルーをトークゲストに呼んで、
彗星軌道変更作戦の様子を中継する企画だ。

ホワイトバード号の艦長であるサイモン・ゲイルたちの昔話が始まる。
1967年のジェミニ13号での事故、そこからの一か八かの冷凍睡眠。
2170年に無事回収されてからの、自分達のDNAを巡っての弾圧的な裁判。
火星反乱軍のチョウ・アベルの侵略とその阻止。

昔話が盛り上がりを見せたところで、彗星に向かった艦隊からの緊急通信が入る。
彗星のエネルギーは膨大で、なんと艦隊は全て彗星に飲み込まれて全滅してしまった。
その際、彗星の軌道は少しだけ動いたが、それは地球にとって危険な軌道。

生放送は中止になった。
地球に残された宇宙船はホワイトバード号のみ。
元ホワイトバード軍のクルー達は再度集結し彗星へ向かって宇宙へ飛び立つ。

しかし彗星の圧倒的なパワーの前に成す術のないクルー。
サイモンは神が創った「くすしき地球」の持つ運命を信じ、
彗星の軌道を元のとおりに戻す作戦を試みる。

作戦に成功し、彗星の軌道は元に戻り、信じたとおり地球は救われた。
しかし限界を超えたホワイトバード号も爆発寸前。
クルーはそれぞれ死を覚悟する。

しかしそこで過去に生き別れるていたアンドロイドたちの助けが入る。
地球に戻るエネルギーがなくなり再び宇宙の果てへ飛んでいく彼らの船で、
クルーはまた再び長い冷凍睡眠に入ることになる。
くすしき地球を眺めながら。

幕。


だいたいこんな感じのSF話。
上演時間は2時間10分ぐらいかな。


序盤は思い出話として、過去のエピソードをひたすら語るシーンが続いた。
説明ゼリフも多く、かなりしっかり話を聞いていかないと置いていかれてしまう。
しかし頑張って話についていったと思ったら、

「はい、この話おしまい、次のエピソード」

って感じで、また時系列が飛んだ別の話題になってしまうので、
正直序盤は見ていて疲れてしまった。
純粋にそこで起きていることを楽しむ余裕がないというかなんというか。

中盤、DNAのプールの演出あたりから「おおっ」というシーンが増えて
楽しみながら前のめりで見れるように。
周囲のお客さんの空気もだいたいそんな感じだったと思う。
こういう「掴める」シーンをもっと序盤から詰め込んできたらよかったかも。

この劇団の得意とする身ひとつで行う演出法、
(テレビ的にカメラアングル回したり、人がクロスすると場転するやつ)
それが今回はだいぶ封印されていた感じがあったが、なぜだろうか。
普段はあの見事な演出法に「おおっ」と思わされて、
次は何が起きるんだろうと、どんどん作品の次の瞬間に期待を寄せて話にのめりこんでいくのだが。


終盤は、映画「アルマゲドン」的な地球のために特攻ってスジの展開。
過去の思い出話部分で各クルーの人物像を相当掘り下げてきているので、
その彼らが命を投げ出して作戦に望む姿はやはり心を打つ。

白鳥副艦長を私情で拘束していたホリー・デンソンロー、
過去の反乱の重責者であるチョウ・アベルが船に乗り込んで作戦に同行するのは
ちょっとご都合主義かなと思ってしまったが。
出演する全キャストをあのシーンに出したいのはわかるが、
個人的には彼らは地球に残ってエールだけ送る立場でいてほしかった(笑)

ラストが再び冷凍睡眠で、友人や家族からの音声メッセージを聞きながら眠りにつくってのはニクイね。
冒頭で全く同じシーンをやっているのだが、
無感情なアンドロイドによるシンプルな音声メッセージの再生。
登場人物のバックボーンが完成しているため、これがガツガツ心を揺さぶってくる。
非常によくできたラストシーンだと思う。


役者的にはバーラウンジ担当のパープルが目を引いた。
彼女がしゃべると不思議と空気が引き締まる。
声優的な上手さになるのだろうが、舞台でもこういう存在は貴重。


全体として非常に洗練された良い作品だと思う。
ただ、ラストで感動できるか、それとも大感動できるかは人次第かも。
中盤までの早口のめまぐるしい展開と膨大な情報量に耐えられるかどうか。
それにより全体の評価に大きな差が出そうな気がする。

また次に期待。


 


劇団東京晴々
「帝国のクッキング」

2013/11/29更新  ≪上野ストアハウス≫ ≪劇団東京晴々≫ ≪2013/11

劇団東京晴々 「帝国のクッキング」

劇団東京晴々 「帝国のクッキング」

【作・演出】
矢野未知生

【キャスト】
塩原啓太、村田広美、森木麻衣、さいとうあき(バカバッドギター)、三枝万里子、
山崎侑佳子、加藤朝飛、荻山規恭(劇団神馬)、若月渉、後藤啓太、鮎沢由祐

【スタッフ】
舞台監督: 酒井健太(Route∞)
演出助手: 後藤啓太
舞台美術: 矢野未知生
照明: 松本永、白井里奈
音響: 和嶋幸子、としくに(渋家)
衣装: 黛由美子、森木麻衣、鮎沢由祐
チラシデザイン: 井上梓
制作: 井上梓

【日程】
2013年11月29日(金)〜12月1日(日)

【会場】
上野ストアハウス

【チケット料金】
前売・当日  2,800円
平日マチネ割 2,500円

【公式HP】
http://www.tokyo-harebare.com/

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1939年の東京が舞台。

食糧事情の悪化により、国は食材の節約術を国民に広めようとしていた。
上野下アパートメントでも節約料理の教室が開かれ、
そこではドイツ帰りの講師・佐山や、アメリカ人とのハーフである助手の一之瀬が、
アパートの住人である女性達に料理を教えていた。

一週間後に迫る節約料理の講評会。
そこで結果を出せなければアパート住人への食料配給がなくなってしまう。
その事情を厚生省の役人・木村から知った佐山は焦りながらも料理を教えていくが、
考え方の違いもあって、教え子達との心の距離は離れていく。
ついには料理教室はまともに機能しなくなってしまい、講評会さえも中止になってしまう。

事情を知った一之瀬は木村に再検討を頼み込み、
教え子達の料理を直接食べてもらって、料理教室の成果を確かめてもらうことに。
いろんなアイデアを出し合って団結する教え子達。

当日、料理としては素晴らしいものを作り上げたが、
難癖をつけてそれを認めない木村。
しかし元ヤクザ(勘違い)の香川の活躍により木村は逃げ帰っていく。
アパートの住人達は食糧配給の危機を免れる。

アパートの住人達にこれまでの非礼を詫びた木村は
料理教室の今後を一之瀬に託す。
誰もいなくなってしまった部屋の中、泣きながら静かに一礼する木村。

幕。


だいたいこんな流れのお話。
上演時間は1時間30分ぐらい。


キャラクターも立っているし、
ヤクザの経歴の勘違いや、名前の勘違いからくるドタバタはおもしろかった。

個人的には作家志望の山之内くんの挙動不審なキャラクターがお気に入り。
振り回されるキャラとしては、非常に良いトーンでしゃべるなぁと思った。
彼が「ええーっ!!」ってなってるだけで見てるこちらは笑えてくる。
あとは天然なのかそうなのかよくわかんない、教師の岩見さんもいいね。


ただ、全体的にテイストが軽すぎるなぁと思った。

開戦直前の日本にしては登場人物の日常がほのぼのとし過ぎていて、
もう漂っている空気が2013年現代そのものなのだ。
戦争への緊張感、食糧難への不安、そういうものを抱えて生きている雰囲気が
微塵も登場人物から感じられないため、違和感がたまらなく大きかった。

男尊女卑の程度だって、今とは比べ物にならないような状態だった。
劇中で女性が男性に対して非常に強い物言いをしているシーンが数多くあったが、
当時の日本の文化ではそれはあり得ないであろう。
そういった非現実的な事象が積み重なると、やはり物語が崩壊してしまう。


こういったライトな空気の作品を作りたかったのなら、
全く別の設定で現代劇としてやってもよかったのではないだろうか。
「料理」、「女性の強さ」、どれにテーマとして一番重きをおいていたのかわからないが、
あの時代を舞台にすると、どうしてもほかのテーマは「戦争」の圧倒的な重さに食われてしまう。
設定として、もうちょっと違う選択肢があったのではないかなぁと思う。

逆に重いディープな作品を作りたかったのであれば、
ちょっとそれは…もっとがんばろう。(汗)


戦時中の脚本って、ホント難しいね。
あらためて思った。

次に期待。


 


カプセル兵団
「SPACE一休」

2013/11/24更新  ≪八幡山ワーサルシアター≫ ≪カプセル兵団≫ ≪2013/11

カプセル兵団 「SPACE一休」 カプセル兵団 「SPACE一休」

カプセル兵団 「SPACE一休」

【作・演出】
吉久直志

【キャスト】
吉久直志、青木清四郎、周晴奈、岡田勇輔、瀬谷和弘、矢島慎之介、
中山泰香、工藤沙緒梨、菊地良明、北啓志、森澤碧音、浦濱里奈

【スタッフ】
舞台監督: 笹浦暢大(うなぎ計画)
照明: 小坂章人
音響: 田島誠治、澤木正幸、小野谷大和
振付: 森澤碧音
アクションコーディネイト: 吉久直志
写真: 渡邊純子
衣装: 周晴奈
小道具: 青木清四郎
ウェブデザイン: 庄章子
制作: 山下那津子、矢澤正英、麻耶さとき
企画・製作: カプセル兵団

【日程】
2013年11月20日(水)〜11月24日(日)

【会場】
八幡山ワーサルシアター

【チケット料金】
前売  3,300円
当日  3,800円
平日マチネ割 3,000円
学割  2,500円

【公式HP】
http://kapselheidan.com/

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近未来を舞台にした宇宙SF。

戦闘マシーン・バイオロイドとして開発された一休と義満。
彼らの戦いにより魔光エネルギーが全宇宙に拡散してしまった。
魔光は触れた者の心身に異常をもたらし、ときには魔物化までさせてしまう。
魔光を浴びてしまった人は忌み嫌われ、強い迫害を受けていた。

50年後、バイオロイドによる世界征服を目論む帝国軍を築き上げた義満。
一方、一休はあてもなく宇宙を彷徨う旅を続けていた。
魔光を浴びてしまった人々を救う方法を探すため、
ときには魔物化して暴走してしまった人々を自分の手で供養するため。

そんなときに一休は過去に滅んだ惑星ミラールの女王・サヨに出会う。
彼女と彼女の持つ青い勾玉には大きな力があり、
それを狙う義満から一休は彼女を守ることになる。

そして反乱軍や流れ者のシンエモン、退魔師のチンネンなどを仲間に加え、
帝国軍との決戦に臨む。

多くの仲間を失いながらも義満の野望を打ち砕いた一休。
また孤独になったかに見えた彼だったが、
そこに生還したチンネンがひょっこりと姿を見せる。
2人は共に旅立つ。

幕。


だいたいこんな感じのお話。
上演時間は2時間と5分ぐらいあったかな。


格闘アクション満載、パワーマイム満載、ギャグ満載の
いつもながらのカプセル兵団って感じの作品だった。
熱血ヒーローもの的な王道を展開しながら、型破りなギャグでお客を腰砕けにする。
お客を選ばない、誰でも肩の力を抜いて気楽に楽しめる作品。


今回の作品は、あえて客演を呼ばずに劇団員のみでのメンバー構成にしたとのこと。
この劇団は、普段は実力派の客演を集めてそれをメインにして公演を打っていて、
比較的若手の劇団員たちはそれほどピックアップのない端役で起用されていることが多い。
観劇前にそういう部分で、正直クオリティに心配なところはあった。

しかし、そんな心配も杞憂。
たしかに役者自身の個性という点では普段より物足りない部分はあったが、
クオリティとして普段より劣化しているかといわれると、特別そんな印象は受けなかった。
劇団としても、劇団のファンとしても安心できる作品の提示ができたのではないだろうか。


オープニングシーンは残念だなと思った。
大音量の中でめまぐるしくフォーメーションチェンジしながらしゃべりまくるのだが、
群唱部分などは全くセリフが聞き取れなかったため、
状況をほとんど理解できず芝居の中に入っていけなかった。
物語の導入にあれはもったいない。

中盤以降は役者の喉が温まったのか、
音響オペがボリュームを絞り出したのか、
それとも観客の耳が慣れたのか、
特に問題には感じなかったのだが。

ただでさえ情報量の多いオープニング。
物語そのものの状況説明はもちろんのことだが、
この劇団の場合は、あの独特な演出手法をお客にきっちり提示する必要がある。
自分の肉体のみで、宇宙船や、化け物、壁、全てを表現しながらも、
一瞬で役者が演じている役がまったく別のものにスイッチする。
(主役を演じていた人が、次の瞬間いきなりザコ雑兵になったりする)

その提示すべきオープニングが、パワー押しのグジャグジャしたものになってしまうと、
お客の脳は理解不能のものに対してオーバーフローしてポカーンとなってしまう。
これでもかというぐらいに洗練された(もちろんパワーも保ったまま)クオリティのものを
オープニングで展開して、お客を引き込めていればより良かったなと思う。


中盤はちょっと中だるみ?
アクションやギャグのない会話だけのシーンになるとちょっとダレる空気が。


惑星グリーフの話は非常に良かった。
ここに限らずだが、これだけ多い登場人物の内面を
短時間でしっかりと描写しているのは素晴らしいと思う。

登場人物それぞれに自分の道を生きる理由がある。
そういう人間が己の信じるもののためにぶつかりあうから、観ていて心が動く。
そんな彼らが悲しい音楽の中で戦うシーンはホロホロしてしまう。


今回の作品の観劇を通じて、
団体のより良いものを目指す姿勢が感じられたことも良かった。
また次に期待。


 


張ち切れパンダ 5かいめ
「さめザわ」

2013/11/20更新  ≪新宿サンモールスタジオ≫ ≪張ち切れパンダ≫ ≪2013/11

張ち切れパンダ 5かいめ 「さめザわ」 張ち切れパンダ 5かいめ 「さめザわ」

張ち切れパンダ 5かいめ 「さめザわ」

【作・演出】
梨澤慧以子

【キャスト】
薩川朋子、深井邦彦、中島愛子、鈴木利典(扉座)、古市香菜(オフィス・メイ)、
斉藤マッチュ、田浦傑(渋谷ハチ公前)、高嶋綾香、三浦久枝、
谷部光明、野本光一郎(ONEOR8)、小林美江、梨澤慧以子

【スタッフ】
舞台監督: 鳥養友美、篠原絵美
演出助手: 望月清一郎(鬼の居ぬ間に)
照明: 富山貴之、中佐真梨香
音響: 天野高志、柴田直子
映像: 遠藤尚
イラスト: 粟国
宣伝美術: 佐川まりの
制作: 山下那津子
企画制作: 張ち切れパンダ

【日程】
2013年11月13日(水)〜11月20日(水)

【会場】
新宿サンモールスタジオ

【チケット料金】
一般  3,200円
学割  2,700円
初日・平日割 3,000円

【公式HP】
http://hachikire-panda.moo.jp/

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個人経営スーパーの従業員控え室が舞台。

深夜、1人の従業員・鮫沢の死体を皆が囲んでいるところから始まる。
皆死体を前にどうしたらいいのかわからず困惑している。

時は戻り数時間前へ。
まだ営業時間中のスーパーの控え室はいろんな人間が出入りする。
存在感が極めて薄い鮫沢は、部屋の中にいてもほとんどいないものとして扱われ、
ひどいときには全く気付かれていないときもある。
そのため彼は、不可抗力でいろんな従業員の裏事情現場に立ち会ってしまう。
店長と店員の不倫関係、店員の横領、恋愛事情。
それらを知ってしまう度に当事者に責められ、不慮のアクシデントで彼は死ぬ。
皆、死んでしまった鮫沢に驚き、事実を隠蔽しようとする。
ほかの従業員達は皆「自分が鮫沢を殺した」と思っているのだから大混乱。

しかし彼の死は全て、ただの死んだふりだった。
呼吸はおろか、脈まで止めれるという彼の一番の特技。
学生の頃から影が薄かった鮫沢は、
他人の注目を集める手段としてよく「死んだふり」をしていた。

途中で店長の妻の何気ない言葉で、いままでの自分が間違っていたことに気付く鮫沢。
ついに前向きに頑張る姿勢を見せ始めた彼だったが、
店長の妻の思い出の品を「過去に捉われてはダメ」とし強引に捨てようとしたことで、
彼女の激昂を受け、そのはずみで殺されてしまう。

それからずっと死にっぱなしの鮫沢。
誰もが本当に死んでしまったと思ってしまったが、やはり今回も死んだふり。

幕。


現在と過去をめまぐるしく移動する展開だったので
実際ここまでシンプルではないが、まぁ、ざっくりとはこんな感じのお話だった。
上演時間は1時間50分ぐらい。


扱っている主軸は非常に面白いと思う。

自分の存在を主張できなかった青年がなんとか自分を見てほしいと思って選んだ手段が、
「死んだふり」という、己をこの世から消すにも等しい行為であるという皮肉。
ついにその手段が間違っていると気付き、人生で初めて前向きに主張できたというのに
そのせいで命を落としてしまうという悲劇。

題材としてはかなり良質であるし、
個人的にも好きなジャンルであった。

それだけに、最後もやっぱり死んだふりだったってオチはやめてほしかったなぁ。
そこで鮫沢が再び死んだふりに走る動機がわからない。
「前向きになりかけたけど、やっぱ挫折して死んだふりに逃げた」だとしても、
そういう感情描写も見えなかったし。


あと役者それぞれのキャラが濃くて、そのこと自体は別にいいのだが、
テンション高めで演技がくどい人がほとんどだったのが残念。
脚本的に自分勝手でモラルの低い性格設定の登場人物ばかりなので、
元々お客は登場人物にはあまり共感できていない。
そこにくどい演技が相まると、笑える部分も笑えなくなってしまう。

脚本・演出が同一人物なので、こういうテンション高めのギャーギャーしたドタバタものを
最初からやりたかったのかもしれないが、
個人的には今回の脚本ならば、もっと役者にはナチュラルな演技で淡々とやらせて、
滑稽なすれ違いからくるクスリ笑いだけとってくような方向性のほうが映えたんじゃないかと思う。
サスペンス的にやっても題材がしっかりしてるので全然アリ。


あともうひとつ。

「テンション高めのギャーギャーしたドタバタもの」と前述したが、
どうしてもこれ系の雰囲気で演出された作品は、一見すると喜劇に見えてしまいがち。
本当はそれが全然喜劇でなかったとしても。
当パンの挨拶文に「喜劇を作ろうとして結果的に喜劇にならなかった」とあったので、
もちろん作り手はこの作品を喜劇でないとしているのだが。

しかし他の劇評をみると、やはりこの作品を「喜劇」として受け止めてしまった人が多いようだ。
もしこの作品を喜劇としてみた場合、
スーパーで起こっている様々なトラブルが何ひとつ解決していないことに違和感を覚える。
喜劇って、大体トラブルはそれなりに解決するものなのだ(この常識自体陳腐なことなのだが)。

今回の作品の場合、これらのトラブルは各登場人物の汚い部分を引き出すためだけに
脚本に組み込まれているだけだろうと思うので、無理に解決する必要など勿論ないのだが、
「喜劇」として観てしまったお客はそうは思ってくれないだろう。
彼らはみな「問題が残ったままだ」「消化不良だ」といった感想を抱く。
これは作り手側からすれば非常にもったいないし残念なことだ。

とんでもない皮肉になってしまうが、
「喜劇のつもりで書いた脚本が、結果的に喜劇にならなかったのに、
 お客には喜劇に見られてしまったせいで作品として損をしてしまった」
と、自分はそのように思う。


光るモノがいっぱいあるんだけど、いろいろ惜しいなぁって作品。
次に期待。


 


A・M・D企画第22回公演
「若狭姫物語 〜種子島から未来へ〜」

2013/11/17更新  ≪池袋シアターグリーン BOX in BOX≫ ≪A・M・D企画≫ ≪2013/11

A・M・D企画第22回公演 「若狭姫物語 〜種子島から未来へ〜」 A・M・D企画第22回公演 「若狭姫物語 〜種子島から未来へ〜」

A・M・D企画第22回公演 「若狭姫物語 〜種子島から未来へ〜」

【作・演出】
荒木太朗

【キャスト】
栞菜、大縄みなみ、友寄有司、大田レオン、赤沼正一、天野きょうじ、
井上貴博(TEAM the ROCKETS)、本田和大、渋木美沙、鶴見和也、鳥羽まなみ、
宮平もりひろ、チング・ポカ、平河富士雄、岡野佐多子、立花弘行、
宮城マリオ、長谷妙子

【スタッフ】
舞台監督: 高橋文章
照明: 佐瀬三恵子
音響: 菱田雅樹
楽曲: 美川奈穂
美術: 室康徳
特殊美術: 田染友秀
宣伝美術: 深田デザイン事務所
制作: 荒和彦
制作助手: 山田栄子・小野義昭
企画製作: A・M・D企画

【日程】
2013年11月13日(水)〜11月17日(日)

【会場】
池袋シアターグリーン BOX in BOX

【チケット料金】
前売  3,700円
当日  4,000円

【公式HP?】
http://www.the-rockets.jp/

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舞台は東京蒲田の日高ネジ工務店の事務室。

そこに勤務する日高社長の娘・和美は
過去アメリカ留学中に銃乱射事件で恋人を失っており、
そのトラウマで殻に閉じこもっていた。
銃の存在そのものを強く憎み、種子島の世間話にも嫌悪感を抱くほど。

そこにネジの神様が現れて、和美はタイムスリップして当時の種子島へ連れていく。
和美は、鉄砲製造技術のためにポルトガルに嫁いだ少女・若狭と出会う。
若狭の想いを聞き、若狭が持ち帰ったネジの技術の尊大さを知り、
そして彼らが自分の祖先であることを悟った和美。

前向きな気持ちになれた彼女は現代に帰り、
自ら銃規制に向けての活動を始める。

幕。


大体こんな感じのお話。
上演時間は1時間50分ぐらいだった。


話の筋は比較的ベタで王道、
笑えて泣けて、銃規制という社会性のあるテーマを盛り込んで、
そんなベクトルを狙ったような作品に感じた。


別に作品としての方向性はそれでいいのだが、
ちょっと要素盛り込みすぎて煩雑、なんだかごちゃごちゃしてる印象を受けた。
全体として一貫性がないというかなんというか。
役者個々の演じ方もバラつきがあったし。


和美を中心にしたメインテーマがしっかりと1本あるのだから、
もっとそこを重点的にしっかりと見せてほしかった。
現代のシーンで社員達がワーワー盛り上がっているシーンが妙に長かったが、
ほとんど主軸に絡んでこないならもっと削って良いのではないだろうか。

序盤、ネジ工務店の設定や人間関係を日常のシーンを通して説明しているわけだが、
浮気騒動とか、アニメ好きがどうとか、安納芋うまいとかで時間使って、
タイムスリップという物語の展開の開始が、やっと中盤過ぎるかという頃。
ちょっと時間配分に疑問符が浮かんでしまった。

そのため、後半のメインであるはずのシーンの尺がすごい短い。

タイムスリップしたことに対しての和美の順応が早すぎるし、
ほんの短かい時間だけ若狭の話を聞いただけで
あっさりと前向きになれる感情変化にも違和感が出る。
銃乱射事件のトラウマで執拗に手を拭ってしまうほどの女の子の精神が、
そんな短時間の小話で簡単に回復しないと思うのだ。
和美と若狭の間でもっともっとドラマを用意してほしかった。


あとタイムスリップする前に、過去のシーン(若狭が嫁にいく前)を挟んでいたが、
こちらは逆に時間をかけてしっかりやり過ぎだったと思う。

現代シーンで昔話を語るという行動を回想のように表現していたのだが、
タイムスリップ先の説明を主人公がそこに行く前に必要以上に済ませてしまうのは、
手法としてはよろしくないと思う。
特別な狙いがあっての「あえて」でないのであれば。

過去のいろんなSF作品を観れば大体そうなのだが、
主人公がタイムスリップしたり、異世界に紛れ込んだりする物語では、
「自分の知らない未知の空間」に入ってしまう主人公の気持ちと、
観ているお客の気持ちを、大きくリンクさせている。
「ここはどこ?」「この人達はいったい?」「なぜここに?」「もう戻れないの?」
こういった感情を主人公がお客の気持ちの代弁者として表現するから、
観ているほうはワクワクするし、次の展開に興味を持つのだ。

序盤でタイムスリップ先の説明をガッツリとやってしまうと、
お客のほうが主人公より状況を知っていて、お客の気持ちが主人公より先をいってしまう。
そのため、主人公の感情基準で話が進むとお客は展開をタルく感じてしまうし、
お客基準で話が進むと「主人公の順応速度早っ!違和感!」の板ばさみになってしまうのだ。

まぁ、いろんな構成のやり方があるとは思うが「主人公が未知の世界へ飛び込む」系の作品では、
未知の世界に対しての主人公とお客の気持ちの同期、
これはなるべく守ったほうがいいんじゃないかと思う。


あとネジの神様はやらないほうが。
完全に浮いてたし(汗)
ああいう型破りのものを出すなら、ものすごく腕のある役者が徹底的なものを見せないと
ただの悪ふざけに見えて客席の温度を下げるだけである。


歌も・・・いらないのでは?
突然役者が面切って歌い出して、「え!?あ、こういう芝居!?」と驚いてしまった。
完全にストレートプレイの空気の中で、いくらなんでもアレは唐突過ぎでしょ(苦笑)
メインを歌う役者の歌唱力も特に目を引くものではなかったし・・・。
どういう意図で「ここで歌おう!」になったのかが非常に疑問。


個人的には、ネジ工務店を中心にした話か、過去の種子島を中心にした話か、
どちらかに絞って作った作品を観てみたかった。

次に期待。


 


劇団離風霊船 リブレプロデュース#5
「超特急夫婦」

2013/11/16更新  ≪下北沢 シアター711≫ ≪劇団離風霊船≫ ≪2013/11

劇団離風霊船 リブレプロデュース#5 「超特急夫婦」

劇団離風霊船 リブレプロデュース#5 「超特急夫婦」

【作】
故林広志

【演出】
松戸俊二

【キャスト】
倉林えみ、大塚あかね、角島美緒、江頭一晃、瀬戸純哉、柳一至、栗林みーこ、松戸俊二、伊東由美子

【スタッフ】
舞台監督: 青木睦夫
照明: 川俣美也、塚原佑梨
音響: 飯嶋智
美術: 鳥谷部紀江
振付: 長橋佳奈
衣装協力: 安藤祥子
舞台製作: 小林裕忠、橋本直樹、竹下知雄
宣伝美術: verabo
制作: 落合直子

【日程】
2013年11月12日(火)〜11月17日(日)

【会場】
下北沢シアター711

【チケット料金】
指定席  3,800円
自由席  3,500円
学割  3,300円

【公式HP】
http://www.libresen.com/nextplay.html

==========================================


網子夫婦を中心にしたドタバタ騒ぎを、
その娘が回想する形でストーリーが進行する。

夫・網子仁は究極の楽観主義者で「大丈夫!」が口癖の男。
妻・網子恵はそんな夫に絶対の信頼を寄せていた。

しかし、仁が急に体を鍛え出したり、
最近不自然に出張が多かったり、
彼の上着のポケットからホテルの2人分の領収書が出てきたり。
仁の浮気疑惑が浮上したため、恵は家を出てしまう。
しかし仁は恵の家出さえ気にせず、何のアクションも起こさない。
自分の家出に何の反応もない仁にやきもきする恵。

恵の家出先は、すぐ近所の自分が管理人を勤めるボロアパート。
そこには家賃を滞納している冴えない男3人組が住んでいた。
家賃免除を条件に彼らの協力を得た恵は、狂言誘拐を仕掛けることを思いつく。
しかし仁は脅迫電話にさえ何の反応も返さなかった。

一方仁は、出張先のホテルにいた。
そこには同じ鉄道会社の同僚の来栖という女性も一緒に。
一見すると浮気現場のシチュエーションそのものであったが、
フタをあけてみれば、それらは全て会長の娘・皿戸のいたずらによるものだった。

そんなことも知らない恵たちは、
アパートの一室をまるでアマゾンのジャングルのように改装し、
その写真を仁に送って、自分がアマゾンへ行ってしまったように偽装を仕掛ける。

そんなときに仁の潔白が判明。
恵は仁が自分を追ってアマゾンへ向かったと思ってしまい、空港へ急ぐ。
恵と入れ違いでアパートにやってきた仁。
「大丈夫・・・じゃない!」と初めて焦りを見せた仁は、皆と一緒に恵を追う。

アマゾン行きの飛行機の機内の中でお互いを見つける仁と恵。
大団円。


ざっくり書くとそんな感じのお話。

上演時間は1時間40分ぐらいだったかな?
ごめん、終演後に時計見るの忘れてたが大体それぐらいだったはず。


一言で感想を言うと、伊東由美子劇場だったな、と。

序盤、シュールな夫婦の空気感は良かったのだが、
盛り込まれているネタがとにかく質が低く、
笑うに笑えない時間がしばらく続いた。
コント作家の脚本って前情報を持っていたので
もう少し笑える本を期待していたのだが。

そこに登場した、伊東由美子演じる会長の娘・皿戸。
破天荒なキャラ設定を利用して伸び伸びと舞台上で遊びまくる伊東に、
お客はそれまでのフラストレーションを解放して大笑い。

看板女優ってやつは流石だなと思った。
もちろん最初から伊東の登場を心待ちにしていたファンが多いってこともあるが、
彼女が登場してからの客席の温度の上がり方は尋常じゃない。
「彼女なら何か仕掛けてくる」「一挙一動を見逃すまい」と注視するから、
自然にストーリーそのものにも深くのめり込んでいくことになる。


伊東が登場してからは客席が温まり、役者も余計な緊張がなくなったのか、
全体的に普通に面白く見れた。
まぁ、それでも伊東がいるシーンといないシーンの差は顕著だったけれども。


欲を言うと、ラストのダンス的な動きはもうちょっとクオリティ高いものがほしかったかな。
「おもしろく」はあったのだが、残念ながら「すごく」はなかった。
ああいう部分で「うおぉぉっ!!」ってぐらいものを見せつけてくれると、
お客は前半のタルかった部分なんか綺麗さっぱり忘れ、すごい作品だったと感想を抱いてくれる。
「終わり良ければ」って思考も単純だけど、まぁ、芝居ってそんなもんだったりもする(笑)


あと目を引いたのは見事な転換。
夫婦宅、ホテル、アパートへの転換は大掛かりなのに非常に素早く、
さらには短時間の暗転で、作り込まれたジャングルのセットが突如現れたりする。
こういう職人芸を見せられるとテンション上がるね。


今回、外部のコント作家の脚本ってこともあったのか
笑い部分に関してはちょっとちぐはぐな印象もあったが、
30年前線で走り続けている老舗劇団、地力の高さはさすがだなと思った。

次に期待。


 


劇団宇宙キャンパス
「メランコリーにさよならを」

2013/11/15更新  ≪新宿シアターサンモール≫ ≪劇団宇宙キャンパス≫ ≪2013/11

劇団宇宙キャンパス 「メランコリーにさよならを」

劇団宇宙キャンパス 「メランコリーにさよならを」

【作・演出】
小林ともゆき

【キャスト】
菊田健吾、キムラシゲオ、小林真弥、芳賀信吉、柳瀬翼、上岡一路、佐藤祐治、
弦巻秀人、平沢彩乃、石戸サダヨシ、田口暁子、平本佳奈、弥浦ちえ、小林ともゆき
安達あいら、一石よしふみ(Jackpot)、大田原りな、大多和愛子(FEVER DORAGON NEO/Media Factory)、
えんどうたいと、岡本弘実、梶慧(コントユニットT@kuma)、かわもとゆうき
かわらじゅん(オフィスジョイ)、岸本尚子(Eja9)、小林勝弥(薫風武隊)、
小春千乃、品川知美、鈴木俊哉、鈴木美穂(Eja9)、たかくえみ、田辺聖尚(ネオ企画)、
谷口洋行、玉渕正紀、チョンごうき(芝居集団Team-Jishin)、仲澤剛志、
二階堂南、原田絵理(劇団DarkMoon)、hirona.、美濃宏之(劇団東京ルネッサンス)、
みむらえいこ、宮崎優美、吉田弥生、渡辺早智子(企画ユニット・WIZ)

【スタッフ】
舞台監督: 丸山賢一
照明: 林一美(潟宴Cディング・タッチ)
音響: 石井宏幸
舞台美術: 鎌田朋子
振付: 矢野あずさ
演舞: CGO
チア指導: 弥浦ちえ
映像: 曾根久光(co:jin)
アクションコーディネート: 谷口洋行
ヘアメイク: 清水亜耶子
演出助手: 弦巻秀人、柾木元一郎(Teamトライデント)
制作: 平沢彩乃、島崎翼、山田杏子(鼬屋)

【日程】
2013年11月14日(木)〜11月17日(日)

【会場】
シアターサンモール

【チケット料金】
早割  4,000円
前売  4,500円
当日  4,800円
学生  2,000円

【公式HP】
http://uchucan.web.fc2.com/

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一世を風靡した3人組アイドルグループの元メンバーだったサエ。
グループ解散から20年後、彼女は定時制の高校に通っていた。

一方全日制では、1年生の良彦がちょうど応援団に入部をするところ。
部活としてはさびれてしまっていた応援団だったが、
良彦は溢れる熱意で他の団員を引っ張っていく。

そんなときに良彦は千華という女の子に出会う。
千華は全日制で同級生からの陰湿ないじめに遭い、
それを理由に内側に引き篭もってしまい、定時制に移動していた。
実直な性格の良彦の応援に、千華も少しずつ心を開き始める。

廃部を免れるためにチア部との共存を試みる応援団。
「あの人はいま」的なテレビ番組の企画を持ちかけてくる、
他の元メンバー2人とマネージャー。
それに悩むサエ。
定時制の学生たちが抱えるいろんな悩みとコンプレックス。
全日制、定時制それぞれ、彼らの日常が進んでいく。

しかしそんなとき過去に千華をいじめた主犯グループが、
再び千華に暴行を働いてくる。
応援団や定時制の仲間に助けられた千華は
塞ぎこんでいた自分とは決別し、前を向いて歩くことを宣言する。

そしてサエも前に進むことを決意。
番組の企画を受け入れ、ラストは応援団の一員としてみんなにエールを送る。
大団円。

幕。



まぁ、だいたいこんな感じのお話。
細かいエピソードはほかにもたくさんあったが、さすがに羅列するとキリがないので(汗)


うーん、なんか話が全体的に薄っぺらかった。


応援団を立て直すべく奮闘する良彦、
元アイドル特有の悩みを抱えるサエ、
いじめられたことで心を閉ざす千華。

これだけでストーリーの軸が3本あるのに、
そこに40人以上いる登場人物の細かいエピソードが
これでもかというぐらいに入ってくる。
2時間10分という限られた上演時間の中ではこれらは
それぞれかなり薄っぺらくなるし、煩雑でごちゃごちゃにもなる。

良彦に関して言えば、もっともっと不器用で泥臭く、人間臭くあってほしかった。
『前向きなんだけど、なかなかうまくいかなくて、がんばるんだけど、
 やっぱりいまにも挫折しそうで、もうダメだ・・・でも、頑張る!!』
みたいな、彼自身の人間性を掘り下げるドラマ描写がないので、
ただひたすらポジティブなことを無責任に連呼するだけの
オートマティック・ポジティブシンキング・マシーンみたいな印象を受けてしまった。

サエに関して言えば、アイドルを辞めてから現在までの描写が少なく、
いまいち彼女の悩みそのものがこちらに伝わってこなかった。
元アイドルってことに強いコンプレックスがあるようにも見えなかったし、
マネージャーへの恋心のエピソードも「ん?」って感じだし。
番組の企画を拒むこともそれほど嫌そうじゃなかったし。
彼女の悩みそのものがよくわからないため、彼女自身にもあまり共感できなかった。

ほかの細かいエピソードをカットしてでも
このあたりの描写を徹底したほうが作品としては良かったのではないだろうか。
キャストが非常に多く、客演が多かったようだから、
それぞれに出番を与えなければっていう事情も理解できなくはないが。
お客にとってはそんな事情は全く関係ないわけで。


あと様々な問題をセリフだけで解決している感が強かった。
良い音楽、良い雰囲気、良い吐き方で、良い内容のセリフを吐けば、問題が解決する、
なんだかそんな展開が多かったように思う。

基本的に人間が心を打たれるのは、「言葉」ではなく「行動」だと思う。
まぁ「言葉」も行動のひとつと言えなくもないけど。
誰かのカッコイイ言葉に、感動して共感して盛り上がってる集団。
その光景はやっぱり見ていて違和感があるし、気持ち悪い。
そんな簡単な問題なのかなぁって思ってしまい、それらに素直に共感ができないのだ。

こりっちの感想欄に
「定時制組が簡単に踊らされているのを観て、かなりのご都合主義」
というのがあったが、たぶんそういうことだと思う。
登場人物たちは「言葉」だけでホイホイ心を動かされていたが、
現実、人間の心ってそう単純なものではないはずだ。


そしてこれは好みの問題になるかもしれないが、
いじめっこグループの扱い方について。

『無理やり押さえつけて服を脱がし、裸を撮影してネット上に流す。
 さらに本人を自ら卑猥な画像をアップした痴女扱いして、彼氏とも別れさせる』
いじめの内容はレイプにも等しく、かなり卑劣である。

劇中で、もちろんこのいじめっこグループは「悪」として扱われているわけだが、
最終的にこの「悪」は、何の制裁も受けず、何の反省も見せず、悪態をついて去っていく。
いじめを受けた側だけが前向きになっても、何も問題が解決していないのだ。
彼らは明日からも面白半分で他人の尊厳を踏みにじり続けるだろう。
千華にも何かしら嫌がらせを続けるかもしれない。

世の中にはいろんな作品があって、もちろんそれら全ての作品の中で
「悪」という存在が必ず報いとして制裁を受けているわけではない。
だから「悪」が勝ち逃げするパターンが必ずダメというわけではない。
「悪」が残るバッドエンドが人の胸を打つ作品だって沢山ある。

しかしこの作品では、登場人物の中に親もいたし、先生もいた。
この状況でこれだけ卑劣な「悪」がお咎めなしで悠々と去っていくのは、やはり納得しづらい。
現実、いじめた側が常に成敗されている世の中ではないってのは理解しているが、
これだけエンタメ寄りの作品なら、もうちょっと違った結末を用意してほしかった。
話自体は温かみのあるエンディングであるだけに、この点だけがモヤモヤとして残って邪魔をする。


ラストのサエの応援コールや、母親のドアの前での応援、
カーテンコールで客席まで役者が入り込んでの応援は非常に良かったと思う。
「終わり良ければ全て良し」というのはあまりいい言葉ではないが、
このラスト部分の良さで作品全体が救われてる感じがする。



うーん、なんだかなぁ。

脚本、キャスト、舞台セット、照明規模、
どの点を見ても当日4,800円をとっていい作品ではない。
ここしばらく、作品の右下がり感がいなめない。

そもそもどうして今回サンモールでやったのだろうか?
今回の客席の埋めれてなさをみると、普段から客席数不足で悩んでいることはないだろうし、
舞台の間尺的にも、舞台セットの高さをもっと抑えて、
不要な端役を無くしてキャスト数を少なくすればどんな小劇場でだってできるだろうし。

詳しい事情はもちろん知るところではないが、
もし「劇団的に大きなホールでやってみたい!」程度の考えでサンモールを使い、
無駄にお客が負担するチケット代を跳ね上げているなら、
そんな考えはあらためてほしいものだ。


あと、当日パンフの中に劇団員募集の文言があったが、
その中にあった記述。

『今から始めたい方も大歓迎!宇宙キャンパスで一緒にお芝居を創りませんか?
 経験は問いません。必要なのは、やりたい!!という強い意志!!』

ママさんバレーサークルの募集要項じゃないんだから。
チケット料金4,800円とる集団が口にしていい文言ではないだろう(苦笑)
自分は、未経験のやる気にだけ溢れた素人の芝居を4,800円出して観る気はない。
だったらもう1,400円出してディズニーランド行って1日楽しんでくる。


まぁ、それなりに辛辣なことを書いてしまったが。

作品の当たり外れは、たとえ有名劇団であろうとよくある。
しかし、ここしばらくの長いハズレ続き、チケット代の鮮やかな右肩上がり、
パンフのアマチュア感丸出しの劇団員募集文言。
これらのことが気になって、ちょっとキツイことを書かせてもらった。

個人的には20回も公演打ってきたような中堅劇団には
いつまでも元気であってほしいと思っている。
団体としての右肩上がりを常に目指し続け、そして結果を出してほしい。

次に期待。


 


からふる #006
「『パパなんて大嫌い』と『さとうさんち』」

2013/11/14更新  ≪絵空箱≫ ≪からふる≫ ≪2013/11

からふる #006 「『パパなんて大嫌い』と『さとうさんち』」 からふる #006 「『パパなんて大嫌い』と『さとうさんち』」

からふる #006 「『パパなんて大嫌い』と『さとうさんち』」

【作・演出】
屋代秀樹(日本のラジオ)

【キャスト】
加藤エン(知的快楽部)、廣島梨乃、内田美和子、村山新、山口祐介、
羽瀬文野(劇団ポストマン)、明光寺千晃、遠藤ちえ、仲田沙良

【スタッフ】
照明: 鈴木千晴
音響: 吉岡歩
舞台協力: 新井和幸
宣伝美術: 五十嵐沙紀
写真撮影: 赤荻梨紗
制作: からふる
企画: 吉岡歩

【日程】
2013年11月14日(木)〜11月16日(土)

【会場】
絵空箱

【チケット料金】
一般  2,500円
(ワンドリンク付)

【公式HP】
http://karafuru.blog.shinobi.jp/

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『パパなんて大嫌い』と『さとうさんち』の2本立て。


『パパなんて大嫌い』は、喫茶店を舞台にしたドタバタコメディ。
だらしのない店長とバイト女性2人で経営している寂れた喫茶店に、借金取りがやってくる。
さらに別れた女房がやってきて、娘を引き取ると強く主張する。
とどめにかかってきたのは、娘を誘拐したという身代金を請求する脅迫電話。
もうお店の中はてんやわんやの大混乱。

最終的には店長が吹っ切れて男気を発揮、借金取りが持っていた所持金を強引に借り、
身代金受け渡しの場所へ向かい、お店の外へ駆け出していく。
店長のらっきょうのこだわりの話を聞いて心を動かされていた借金取りは
わざとそれを見過ごす。
元妻は吹っ切れた店長の姿に胸キュンして彼を追いかけていく。
めでたしめでたし。


『さとうさんち』も1本目と時系列を同じくしたドタバタコメディ。
空き巣、そこに荷物を運んできた宅配員、その荷物の中に入っていた女子高生。
この3人が、ひょんな偶然からあるアパートの一室に閉じ込められてしまう。
そのアパートの部屋主「さとうさん」はどうやら猟奇的な誘拐犯。
帰ってくるまでに脱出しなければただでは済まない。

トラップだらけの部屋の中でケンカしながらも協力し合って
なんとか脱出への道を模索する3人。
「さとうさん」が帰宅したところを不意を突いて襲い掛かる作戦を立てた彼ら、
そこに誰かが部屋に入ってくる、ってところで幕。



ドタバタコメディとしては全体的にご都合主義部分が多過ぎた感があったが、
シンプルでフットワークの軽い笑いが多く、単純に楽しめる作品だった。
個人的には頭を使う作品のほうが趣味なのだが、
こういう何も考えずに見ても素直に楽める作品も良いものだなと思う。

ただ1本目は、ドタバタレベルがやや物足りない印象があったのが残念。
登場人物間の誤認や入れ違いがもっと大きいレベルで発生し、それがより長く持続すれば、
さらに痛快なドタバタになって面白かったのではないかなと。

2本目は設定がちょっとムチャ過ぎ?(笑)
脚本そのもののコント色が強すぎて、
登場人物の真剣さがいま一歩伝わってこなかった
笑いを狙いにいってる姿勢が見えちゃうと、見てるこっちは萎えてしまう。
まぁ、それでもネタはそれぞれ十分面白いのだけれども。

最後の終わり方は個人的には消化不良感。
無理やり終わらせた感があって、なんだかスッキリしない感覚が残ってしまった。


1本目で誘拐された娘が、実は2本目の女子高生であったり。
喫茶店に冷やし中華の出前を注文する電話が、実はアパートから助けを呼ぶための電話であったり。
運送屋の女性の交際相手が、実は1本目の借金取りだったり。
いろんなところが2作品の間でおもしろおかしくリンクしてるのは良かった。


おもしろかったけど、かなりコント寄り。
コントではなくコメディとして完成されたものをまた観たいなと、
そう思える作品だった。


 


8割世界
「そこで、ガムを噛めィ!!」

2013/11/03更新  ≪中野テアトルBONBON≫ ≪8割世界≫ ≪2013/11

8割世界 「そこで、ガムを噛めィ!!」 8割世界 「そこで、ガムを噛めィ!!」

8割世界 「そこで、ガムを噛めィ!!」

【作・演出】
鈴木雄太と8割世界

【キャスト】
日高ゆい(8割世界看板女優)、小早島モル、小林21種類、石田依巳架(以上、8割世界)、
北川竜二、奥山智恵野(プロダクションMAP)、小松金太郎(TheDustyWalls)、
佐倉一芯(TheDustyWalls)、中村章吾(プロダクション・タンク)、
中村匡亮(PEACE)、跳川雄大、村田佑輔(誠-Pro)

【スタッフ】
舞台監督: 海老原翠
照明: 千田実(CHIDA OFFICE)
音響: 井上直裕(atSound)
舞台装置: 村上薫
衣装: 小泉美都
宣伝美術: 福井信明(HOPBOX)、鈴木匠
パンフレットデザイン: 丸山ひとみ
振付: 白石拓也
制作: 8割世界、RealHeaven

【日程】
2013年10月30日(水)〜11月4日(月)

【会場】
中野テアトルBONBON

【チケット料金】
前売  3,300円
当日  3,500円
ペア割  6,100円

【公式HP】
http://www.8warisekai.com/

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草野球チーム「東松原ドラゴンライオンズ」は、
明日「梅ヶ丘バレッツ」との試合を控えていた。

対戦成績は0勝26敗と実力に大きな差があったが、
その日は監督の手術の成功を願う験担ぎとして、どうしても勝利したい。
そのために新戦力・武士沢を招き入れ、
勝利への念入りなシミュレーションを行うメンバーたち。

翌日、試合開始。
相手チームの豪腕ピッチャーを前に、
攻撃面ではシミュレーション通りに事が運ばなかったが、
守備面は上手く機能して予定通りの展開。
3回終了まではゼロスコアの接戦を繰り広げていた。

しかし後半は地力の差が出て大量失点。
監督の手術が痔の手術だったということも判明して、
最終回を前にして、メンバー間には完全にあきらめムードが漂う。

そこに飛び出た武士沢の一喝。
目が覚めたメンバー達は、
「とにかく1点取って、昨日までの無様な俺達に勝利しよう!」
という想いで一丸となる。

残念ながら点を取ることはできずに試合終了となるが、
正式にチームに入団する意志を告げた武士沢。
明日からより上を目指して歩き出すことになったチーム。
大団円。



ざっくりと書くとこんな感じのお話で、
上演時間は1時間50分。


ジャンル的にはドタバタコメディになるのだろうが、
なんだか全体的にガチャガチャしていて、テンポも悪く、
あまり素直に楽しめなかった。

役者の演技はかなり過剰気味で、声も張り過ぎ、顔の表情がんばり過ぎ。
脚本自体が笑いを狙いに行き過ぎてる部分も手伝って、
全体的にわざとらしい感じが充満してしまっていた。
これでは、コメディというよりはコントだ。

その物語の中を一生懸命生きている人間達がいてコメディは成立する。
狙って笑いを取りにいっている空気がお客に伝わった時点で
それはアウトになってしまう。


脚本もちょっと微妙。
なんだかしっくりこない部分が多かったように思う。


まずメンバーそれぞれの野球に対する温度が見えてこない。
この人達の中で野球ってなんなんだろう?
勝負ってなんなんだろう?

「監督の手術の成功を願って絶対勝たないといけない」という想いはものすごいのに、
ミーティング中の空気はどう考えてもおふざけテンションだし、
なんだか居酒屋で騒ぐ大学生サークルみたいな空気。
審判に金を渡して買収というスポーツマンにあるまじき発想を平気でするし、
試合で大差をつけられ監督の手術も大したことないと知ったあとは、
「記念に完全試合されようぜ」なんて言い出す始末。

でも武士沢に喝を入れられた後は、異常に気合入りまくり。
しかしあくまで大差をつけられている相手チームを倒すのではなく、
とりあえず1点取ることが昨日までの自分に勝つことだとして頑張る。

あなたたち野球好きなの?
勝負ってものをどういうふうに考えてるの?
こんな人達を観ていても率直に共感できないし、応援できない。
これではラストがどんなに劇的で感動的な展開をしようと
こちらの胸には響いてはこない。


あと武士沢が性転換しているという設定。
性転換した理由とか、その苦悩とか、いろいろ掘り下げれる部分があると思うのだが、
そのへんは一切触れずにストーリーが展開する。
おかげで、あってもなくても全く差し支えのない薄っぺらな設定になってしまっていた。
これではラストに良い決めゼリフを言うためだけに作った、
とってつけた設定に見えてしまう。


監督の奥さんや、新人くんの存在意義のなさも気になった。
こういうコメディものでは、一見役立たずな人が意外なキーマンになるものなのだが、
本当に最後までいてもいなくてもいいような、置物のような存在に。
あまりの存在の必要性のなさに違和感が。


代打を願い出た武士沢の行動も疑問。
彼女(彼)の性格ならどんなに手が深刻な状態だったとしても、
バットを手に縛り付けてでも打席に立つと思うのだが。
代打候補が新人とマネージャーしか残っていない状況ならなおさらだ。
ちょっと話の展開がご都合主義かなと思ってしまった。

そして最後の黒人さんネタはいったい。
いらないでしょソレ(苦笑)。


厳しいことをつらつらと書いてしまったが、
会議室のセットが短時間で野球場に転換するシーンや、
ノリのいい音楽で試合を表現したダンスシーンなどは本当に良かった。
きちんと魅せれる部分をちゃんと持っているのだから、
それを他の部分にも繋げていけたらいいなと思う。

次に期待。


 


OUT of WIT
「神殺しと銀色のクジラ」

2013/11/02更新  ≪参宮橋トランスミッション≫ ≪OUT of WIT≫ ≪2013/11

OUT of WIT 「神殺しと銀色のクジラ」 OUT of WIT 「神殺しと銀色のクジラ」

OUT of WIT 「神殺しと銀色のクジラ」

【作・演出】
為平康規

【キャスト】
生方真友、岡野大生(イマジネイション)、後藤幸子(東京ドラマハウス)、
佐藤麻実(相模舞台同盟)、高橋朋子、為平康規(OUTofWIT)、成瀬清春(劇団ぱんぷるぴぃ)、
和田彰(10/31〜11/2昼のみ)、佐藤ホームラン(バカバッドギター)(11/2夜〜11/3)

【スタッフ】
照明: 黒木健史(TKB)
音響: 相川麻衣
映像: 桜庭銀次郎(相模舞台同盟)
舞台装置: OUTofWIT
衣装: Candydrug
宣伝美術: 柴崎愛美
楽曲提供: TIDELAND
制作: OUTofWIT、薄田菜々子

【日程】
2013年10月31日(木)〜11月3日(日)

【会場】
参宮橋トランスミッション

【チケット料金】
一般  3,000円
平日マチネ割  2,500円
(それぞれ1ドリンク付き)

【公式HP】
http://out-of-wit.bitter.jp/

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目的地へと向かう列車の車窓。
少しずつ思い出されていく、僕と、君と、神様と、
そして、あの月と、本当の音を奏でる銀色のクジラのこと。

出会い、思い出される人々の物語と、姿を消した神様の行方、
そんな、僕と君との目的地を巡るピクニック。


以上、公式HPにあったあらすじから引用。

有明という青年と、不思議な雰囲気をまとった少女・小夜が、
列車に乗ってどこかへ向かっている。
そこに過去の出来事を回想シーンとして挟んでいく展開だ。

直感的なイメージでは「銀河鉄道の夜」っぽい感じ。
もちろん話の筋はそれと全然違うが、
展開の手法や作品全体の雰囲気がなんとなくね。
あくまで個人的にそう感じたってだけども。

序盤は一切の説明がないまま抽象的なワード満載の会話が続くので
正直ちょっととっつきにくかった。
ひたすら疑問符を植えつけられ続ける展開。

中盤以降はようやく話の世界観やいろんなワードの意味がわかってくるので
そのあたりから楽しく見れるようになるのだが、
序盤の時点で話を理解する作業をあきらめてしまったお客もいたであろう。

お客を序盤から集中させて前のめりにするような「何か」があったらいいなと思った。
盛り上がりのある終盤を見せる前にお客を思考停止させてしまうのはもったいない。


世界観や設定は非常に面白いと思う。
軍事目的で作られた第二の月の存在。
そこで人体手術を受けて、神と崇められるような力を得た男。
自分の人生の責任を他人に迫るフジミ。

ただ、個人的には有明の力(呪い)がどうしても気に入らなかった。
この力は物語のラストで判明するのだが、
そこまでいろんな人間の苦悩をずっと物語の中で描いていたはずだ。
夢を追いかけ、自分探しをし、大事な人間の死を悲しみ、
登場人物各人がいろんな苦悩を抱えている。

そこに「自分の言葉を現実にする力」という、何でもアリな無敵能力を出すことは
全てを台無しにし、作品を一気に安っぽくする。
その力使って、ああすりゃいいじゃん、こうすりゃいいじゃん、ってことになってしまうもの。
だって劇中の全ての問題はその力で解決できてしまうのだから。

せめて力を使うにはとてつもない代償が必要だとか、
非情なぐらいに厳しい条件があるとか、
何かしら制限を設けるべきだったと思う。
神の側にいた男がより神にふさわしい力を持つという皮肉。
それは面白いと思うだけに、もったいない。


全体を通して、悪くないんだけど何か惜しいなって印象。
次に期待。


 


ソラリネ。#10
「止むに止まれず!」

2013/11/01更新  ≪上野ストアハウス≫ ≪ソラリネ。≫ ≪2013/11

ソラリネ。#10 「止むに止まれず!」

ソラリネ。#10 「止むに止まれず!」

【作・演出】
佐藤秀一(3LDK)

【キャスト】
剛たつひと(ケイ☆サイド)、大坂のどか、木村慎一(弾丸MAMAER)、
藤島琴弥、服部あつえ、山口真理映、馬庭良介、天野哲也、辻創太郎、
庭山美保、永作あいり、田口治、山田真由子、永井友加里、kino、
肥田強志、重見将臣、齋藤伸明、篠田恵理

【スタッフ】
舞台監督: 吉川尚志
照明: 吉田雅史、谷地あゆみ(アイコニクス)
音響: 滝口美幸
舞台美術: 門馬雄太郎
ヘアメイク: 結城小百合、田中幸実
スチール: 原圭吾
衣装: 森千晶
方言指導: 松島圭二郎
宣伝美術: 平井辰夫
制作: 坂上裕美(AsPLUS)
制作協力: 安由利子
プロデューサー: 森友ひかり
企画・製作: ソラリネ。

【日程】
2013年10月30日(水)〜11月4日(月)

【会場】
上野ストアハウス

【チケット料金】
前売  4,200円
当日  4,500円
最前列かぶりつき席 5,000円

【公式HP】
http://sorarine.com/

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舞台は広島県、とあるお好み焼き屋さんの居間。

そこでは頑固で昔気質な父・正隆、
のんびりとした天然お姉さん系の長女・はるか、
男勝りの性格でざっくばらんな性格の末妹・ひとみ、
住み込みの従業員の青年・中田が住んでいた。
母はすでに他界していて、長男・あきらは東京に出て行ったきり。

ある日突然、音信不通だったあきらから連絡が入る。
婚約者を連れて一緒に帰省するとのことだった。

しかし戻ってきた「あきら」は性転換して、
完全に女性となっていたのだった。
しかも男性の婚約者・真一を連れてきた上に、
あきらは真一に過去の自分をカミングアウトしていない。
その事実を真っ先に知ったひとみと中田は大慌て。

なかなか秘密を言い出せないあきらを尻目に、
誤解が誤解を生んで状況はどんどん悪化していく。

父やはるかは、女性の姿のあきらをあきらの婚約者と勘違いして、
さらに真一の事をひとみの婚約者だと勘違いしてしまうし、
たまたまやってきたひとみの彼氏・藤田は、
ひとみと真一が結婚すると誤解して怒り狂ってしまうし、
あきらにまだ未練がある元カノ・ゆきは、
あきら本人をあきらの婚約者と勘違いして敵意を剥き出しにするし。

これ以上ないぐらいに家の中はドタバタしてしまう。
決意したあきらは全てを全員の前でカミングアウトする。

最初は父も真一もあきらに対して否定的な態度をとっていたが、
話をしていくうちにその理解を得る。
父親としての立派な姿を見せる父。

しかし、その父にも実は新しい恋愛相手がいて・・・
全員総ツッコミ。
幕。


ざっくりと書くとだいたいこんな感じのお話。
上演時間は約2時間。
ジャンル的には、ハートフル・ドタバタコメディといったところか。


誤解が誤解を生むドタバタコメディ作品はすでに世の中に無数にあるが、
その中でも群を抜いて素晴らしかったと思う。

とにかく誤解の量がハンパない(笑)

婚約者を連れて帰ってくる長男が実は性転換していて、
しかも婚約相手として男性を連れ帰ってくるという状況だけで
すでに家庭は大混乱確定のはずだ。

そこに二重、三重、四重、五重の誤解が重なって、
ドタバタが、もう本当に笑うしかない状況にまで発展していくその滑稽な様子は
観ていてメチャクチャおもしろかった。

たまたま全ての誤解の現場に立ち会っていて
全事実を把握している中田が右往左往している姿は、
見事にお客の気持ちを代弁していて素晴らしかったと思う。
「俺はこの家の全てを知っている!」ってセリフでは大爆笑してしまった。


あきらが真実をカミングアウトしたところからは
空気が一転してシリアスモードに。

その内容は良かったが、展開がなかなか前に進まなくてちょっとタルく感じてしまった。
前半の誤解によって作られた複雑な人間関係からくるドタバタ。
それを理解するために、お客の脳の回転速度はマックスまで引き上がっている。
その脳の回転速度に対して終盤のスローペース展開は
ちょっとそぐわないかなと思う。

まぁ、真面目なシーンをじっくりしっかりと演じたからからこそ、
ラストの軽快なオチが生きてくるって部分もあるのだが。
難しいね、演劇って。


あと個人的にはキャストの広島弁がちょっと気持ち悪く感じてしまった。
広島県の中でも地域差はあるのだろうが、
自分が知っている広島弁とは違いを感じた部分が多くて違和感があった。
まぁ、気にするには些細過ぎることなんだけど。


練りに練られた計算高い脚本、しっかりと作られたセット、
さらに役者の地力も高かったこともあって、非常に良い作品だったと思う。

次回公演を楽しみに待ちたい。


 

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