日々是劇評

関東圏内で観劇した舞台について率直に感想を書いています。
自分用の備忘録みたいなもんなんで遠慮なく辛口な批評もしています。

絞り込み 記事更新日=「2013/12」

セブンスキャッスル 「人狼 ザ・ライブプレイングシアター #08:MISSION The Castle Job」  @上野ストアハウス 2013/12/30
9-States 「それなりにハッピー」  @下北沢 OFF・OFFシアター 2013/12/27
梅パン 「いなづま」  @池袋シアターグリーン BASE THEATER 2013/12/23
ネコ脱出 「人生快速」  @下北沢 「劇」小劇場 2013/12/22
メガロザ 「靴下にカミソリ」  @新宿タイニイアリス 2013/12/20
平熱43度 番外公演微熱43度 「アシュラ」  @八幡山ワーサルシアター 2013/12/16
Re:Play 「リプレイ」  @アトリエだるま座 2013/12/15
立体再生ロロネッツ 「間宮汽船」  @上野ストアハウス 2013/12/13
SORAism company 第13回公演 「Present for me」  @日暮里 d-倉庫 2013/12/12
天才劇団バカバッカ vol.12 「ザ・ランド・オブ・レインボウズ」  @六行会ホール 2013/12/11
Platform 第4回公演 「とらわれのみ。」  @pit北/区域 2013/12/03
座・あおきぐみプロデュースvol3 「異人伝」  @本願寺ブディストホール 2013/12/02
ヴォードヴィルの会 「フィガロの結婚」  @APOCシアター 2013/12/01

※本文中に激しくネタバレ含みます!
 上演中の公演についてこれから観劇予定の方は閲覧ご遠慮ください。


セブンスキャッスル
「人狼 ザ・ライブプレイングシアター #08:MISSION The Castle Job」

2013/12/30更新  ≪上野ストアハウス≫ ≪セブンスキャッスル≫ ≪2013/12

セブンスキャッスル 「人狼 ザ・ライブプレイングシアター #08:MISSION The Castle Job」

セブンスキャッスル 「人狼 ザ・ライブプレイングシアター #08:MISSION The Castle Job」

【脚本】
上城友幸

【構成】
セブンスキャッスル

【演出】
林修司

【監修】
吉谷光太郎

【キャスト】
松崎史也、ウチクリ内倉、大里雅史、加藤光大、永石匠、高木俊、康喜弼、阿部直生、
橋本顕、浅倉祐太、橋本祐樹、佐藤優次、石井由多加

【日程】
2013年12月25日(水)〜12月31日(水)

【会場】
上野ストアハウス

【チケット料金】
前売
 SS席 4,600円
 S席 4,200円
 A席 3,800円

当日
 SS席 5,000円
 S席 4,600円
 A席 4,200円

【公式ブログ】
http://7th-castle.com/jinrou/perform.php?008

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時に21世紀初頭。
政府の手により極秘に産み出された超感覚強化系ドラッグ“C7(シーセブン)”を強奪するべく、
選りすぐられた15人のプロフェッショナル達が集められた。
ターゲットの売却価格は――50億ドル。
それぞれのプロフェッショナルがそれぞれの仕事をこなし“作戦”は無事に成功を収めた。

だが、ここで問題が発生した。
ドラッグの隠し場所を知っている仲間が2人、何者かに立て続けに殺されたのだ。
犠牲者は死ぬ前にメッセージを残した
――『獣人化ドラッグ“人狼”をキメたヤツがこの中に3人いる』、と。

残されたのは13人の悪党たち。
人狼と悪党――50億ドルを賭けた戦いが、今始まる……!



最近流行ってきた人狼ゲームのステージもの。
それぞれの設定と最初のあらすじは決まっているが、
そこからは人狼ゲームの展開次第でどうなるかは誰も知らない。


こういった人狼ゲームを扱った舞台では、いかにお客を引き込むかが重要になる。
なんせ通常の演劇でいう脚本は用意されていないのだ。
ただ舞台上で知らない人が人狼ゲームをやっているだけでは見世物として成立しない。
お客からお金をとるにはそれ相応のパフォーマンスが必要だ。

チケット料金が高めに設定されていること、
イケメン系のジャニタレ的雰囲気のキャストが多いこと、
そのため正直言って、観劇前は本当に面白いのかなと不安に思う部分があった。


しかしそういった不安はすぐに杞憂であることがわかった。


まず演出がキッチリしている。
オープニングのダンスパフォーマンスから、
ゲーム開始までの盛り上げ方、
毎晩挟まれるお客とのトークコーナー、
どれもしっかりと考えて作られていて非常に楽しめた。


そしてキャストのスキルがしっかりしていること。
さすがに全員とは言えないが、キャストの大半は人狼の駆け引きのノウハウを熟知しており、
さらにトーク力、ギャグセンスも申し分ない人間が揃っていた。
彼らが序盤からお客に好かれる立ち方ができているので、
お客としては舞台上のゲームが他人事にならず、最後まで興味深く観続けることができた。


また、お客には命を落としたキャストの正体を毎回明かしていたことは良いと思う。
本来はゲーム終了まで誰がどの役職なのかを完全に断定できない人狼ゲーム。
(襲撃で死んだ人が人間だって断定できるぐらい?)
お客に「命を落としたキャストの正体」という情報を小出しにしていくことで、
真実が少しずつ明るみになっていく楽しさが与えているため、
敷居を下げる意味でもお客にとっては良いシステムになっていたのではないだろうか。


総合的に非常に楽しい舞台であったと思う。
シリーズ化して続けていくようだが、是非これからも質の高いパフォーマンスを提供していってほしい。

また次に期待。


 


9-States
「それなりにハッピー」

2013/12/27更新  ≪下北沢 OFF・OFFシアター≫ ≪9-States≫ ≪2013/12

9-States 「それなりにハッピー」 9-States 「それなりにハッピー」

9-States 「それなりにハッピー」

【脚本・演出】
中村太陽

【キャスト】
山田青史、浅賀誠大、山田直人、大谷由梨佳、小池首領、戸枝尚、ヒロト、
倉垣まどか、市村彩子、倉垣まどか

【スタッフ】
舞台監督: 内山清人
照明: 高野由美絵
音響: 游也(stray sound)
舞台美術協力: 仁平祐也
演出協力: 本名直人
宣伝美術: し水しんたろう
選曲: コンソメ太郎(日本ハッピーエンド協会)
衣装: SH+  
映像記録: 桜井名人
企画: 『それなりにハッピー』企画実行委員会
制作協力: いちむらあやこ
製作: 9-States

【日程】
2013年12月25日(水)〜12月29日(月)

【会場】
下北沢OFF・OFFシアター

【チケット料金】
前売  2,800円
当日  3,000円

【公式ブログ】
http://9-states-hp.webnode.jp/

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3年前に離婚した男・長島が娘と動物園で会う約束をしていた。
しかし急遽元妻から「また今度」と連絡を受けて会うことができない。
ずっとこんな先延ばしを続けられてきた長島は
「また今度」という言葉そのものに失望感を抱いていた。

そして長島は動物園の飼育園に務めるようになる。
動物の知識を得て娘に気に入られたい思いで。

一方、自分の気持ちをうまく前に出せない加藤は、
交際していた女性・沙織に別れを告げられてしまう。

落ち込んでいた加藤だが、勤め先の銀行に中国から研修員の男・王がやってくる。
身勝手で自己中心的な王は勝手に研修を指揮し、
銀行強盗対策のシミュレーションを実施、その勢いで発砲して騒ぎを起こしてしまう。
本物の銀行強盗事件と勘違いされて警察に包囲される加藤たち。
逃亡する、誰かを身代わりにする、などの意見が出されてその場は大混乱。
結局は警察に突入され、誤解は解けたものの大目玉を食らう。

騒動の中で加藤は、これまで自分の「人生の選択肢」に遭遇したときに、
何もしないという選択肢ばかり選んできたことに気付く。
前を向いて自分の気持ちをさらけ出し、沙織の元へ。

これらの騒動を動物園でも見るかのように楽しんでいる謎の人外の存在。
幕。



だいたいこんな感じのお話だった。
上演時間は1時間45分。


うー、ちょっとコレはどうにもならないな。
それぐらいにひどいクオリティだ。
脚本、演出、役者、どの面においても良い部分がみつからない。


一番ひどいのは脚本。

特に銀行での騒ぎの一連がひどかった。
研修員としてやってきた人間が勝手に研修を仕切り出して、
しかもそれが「銀行強盗コント」ってどういうことだ。
ホイホイと銃が出てくるし、わき腹を打ち抜かれてもギャグで済ませてしまうし、
屋外に向けて発砲してるんだからすでに誤解ではなく立派な重罪だし。
警官が一人で勝手に突入なんて意図的にやったってできないし。

そもそも他の従業員はいったいどこに?
彼らが騒いでいるこの場所はいったい銀行のどこなの?

このように状況設定もムチャクチャなのだが、そこに生きる人間もムチャクチャ。
上司2人と王に関しては許せなくもないが、加藤の立ち位置はいったい何?
シーンごとに感情がブツ切りで、状況の中での立ち位置がブレ過ぎ。
常識人でつっこみポジションであるはずなのに、話す言葉がウソの塊にしかみえない。

そもそもつっこみは、きちんとお客の気持ちを代弁しなければいけない。
銀行というお堅い職場、大手合併先の大事な客人、発砲事件、警察に包囲されている状況、
これらをおざなりにしたままになっているから、つっこみゼリフと客の気持ちが毎回一致しない。
「そこつっこむ前にあれおかしいでしょ」みたいな瞬間の連続なのだ。
だから客席から笑いが起きない。
まぁ、これは脚本だけでなく役者の技量の問題でもあるけども。


あと動物園の飼育員のシーン一連はなんだったのだろうか。
数々のどうぶつ豆知識の披露、
思いやりと気遣いの違いについての考えや、
人間も何かに飼育されている存在ではないかという発想の提示。
どう見ても脚本家の自慰シーンにしか見えなかった。
これらって、この作品の中に本当に必要?
ラストシーンへの伏線だって、本当にとってつけたようなレベルのもんだし。


役者も全体的にレベルが低い。
全然お互いで会話できていないので、まるでセリフの発表会みたいになっていた。
「自分、このセリフこう読んでみました!」みたいな。
だったら戯曲読ませてもらったほうがよっぽど楽しめる。


ほか、いくつか前述したとおりムチャクチャな部分が多数。
車のドアのマイムおかしい、マイムに効果音あったりなかったり、
銀行強盗事件が起きてるのになかなか車発進させずに悠長にダベってる、
何故か携帯電話が実物ではなくマイム、
ホイホイ気軽に開け閉めできる銀行金庫、
もう本当にキリがない。
真剣に数えれば100は越えそうだ。

そんな空気の中で時折「人生は選択肢の連続である」ってシリアスにやられても、
観ているこっち側の心には何も響いてこないよ。
そんなの当たり前だ。
だってウソっぱちの世界から発信されている言葉なんだもの。

ぶっとんだコントテイストの作品がやりたいならそれに徹すればいいのにと思う。
下手にシリアス混ぜて要素を詰め込むから、このようにおかしなことになる。


毎日のように下北沢で上演されてる多数の演劇作品。
もちろんそのクオリティはピンからキリまであるが、
少なくとも他の地域よりはその平均レベルは高いと思ってる。
正直言って、この程度のものしか作れないなら考えたほうがいいと思うが。
しかも10年やって18回目の公演がコレっていうならなおさらだ。

次は…うん、ないな。


 


梅パン
「いなづま」

2013/12/23更新  ≪池袋シアターグリーン BASE THEATER≫ ≪梅パン≫ ≪2013/12

梅パン 「いなづま」 梅パン 「いなづま」

梅パン 「いなづま」

【脚本】
大江和希

【演出】
高江智陽

【キャスト】
山之内力哉、檜垣文子、星野好美、藤田力、佐上ユウ、岩佐久、西岡みあ、
田村朋世、山田健介、小玉賢太、牧野未来、大岸明日香、百石義典、斉藤七瀬、
鬼塚眞澄(N.A.C)、宮沢なお(AIN'T)、鎌田健嗣(BEEMinc)、柳田雅宏(N.A.C)

【スタッフ】
舞台監督:S-CASE
音響:許斐祐
照明:(有)マーキュリー
宣伝美術:藤田侑加
制作:藤田侑加・大城

【日程】
2013年12月20日(金)〜12月23日(月)

【会場】
池袋シアターグリーン BASE THEATER

【チケット料金】
一般  3,000円

【公式ブログ】
http://1st.geocities.jp/mero_mero_meronpan/

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少し片田舎の一軒家。

夫婦それぞれの友人や後輩、狂った隣人、夫の母親が次々出入りして、
繰り広げられていく重厚なお話。

幼いときに弟と死別したことをずっと引きずっている妻・美加子。
悠一の前妻・雪絵の幻に苦しみながらもそれを乗り越え、
夫・悠一と共に手をとって前に進んでいく。


大体こんな感じのお話。
まぁ、いつもながら漠然とし過ぎていて、なんのあらすじ説明にもなっていないが(笑)


舞台は両面客席の囲み舞台になっていた。
中央に3畳程度の台があり、手動で回転させることができる仕組み。
この劇場でこういうふうなトリッキーな舞台装置ってのは珍しいかもしれない。


作品自体は、うーん、ちょっとチグハグかなって印象。


脚本はセリフが綺麗で整っていて、言葉のチョイスも良かったと思う。
ただ全体的にピックアップポイントを散らしすぎていて、
最終的にそれぞれのエピソードが小粒な上にまとまっていない印象だった。
メインとなる部分は間違いなく妻に関するエピソードなのだが、
夫の後輩や妻の友人の恋愛事情を描写している時間が長く、
しかもそれがメインエピソードから独立し過ぎている。
もうちょっとそれぞれのエピソードが絡み合うような構成だったらなぁと思った。


それと過去に死んだ弟の霊(?)と、思い込みで作られた前妻。
お客から直感的に見るとどちらも幽霊的な存在なのだが、
片方は誰にも視覚的には見えない、でも妻に声を届けることはできる本当に幽霊的な存在、
もう片方は実際には思い込みで幻なんだけど、人の目にも見える存在。

外面的な扱いは近いのに、内面的には全く異質なこの存在が2つ同時に登場するのは
作品としてやや煩雑で雑多な気がする。
どちらか片方だけに絞ってもっと濃密な描写をしたほうが良かったのではないだろうか。


あと弟の霊が前妻の幻をなんとかしてくれちゃう展開、
妻が自分の力で困難を乗り越えたって感じがしなくて個人的にはイヤかな。
そのせいで、その後の妻の良いセリフがあまり心に響いてこなかった。

その直後にあった本物の前妻が訪問してくるシーン。
シーン単体としては面白かったが、作品全体として見るといらないエピソードだったように思う。
後輩の結婚成就のエピソードと合わせて、ちょっと冗長的かなと。


演出面で気になったのは、脚本とのマッチのしていなさ。
役者のスキルの問題なのかもしれないが、もっと写実的な会話劇で良かったのではないだろうか。
素で静かにしゃべって十分おもしろいセリフなのに、役者たちの演技が元気良すぎな印象。

回転盆もテレビでいうカメラワークとしての使い方しかされていなかったが、
これはあくまで視覚的な、エンターテイメント部分での要素である。
心情の描写が中心となる今回の脚本で採用する演出法ではなかったように思う。
これのせいで暗転時間が延びている印象もあったし。
コロスたちがロック解除してヒモ引っ張って盆回してまたロックするって作業の画も美しくないし。


役者は何人か巧い人がいたのだが、全体的には若い役者の比重が高く、
大学生のサークル演劇って空気が強かったのが残念。
うわべのテンションだけの会話劇ほどおもしろくないものはない。
地に足のついた、しっかりと腰の座った演技を魅せてほしい。
今回のような脚本では特に。


なんかいろいろ惜しいなぁって舞台。
この全体的なチグハグ感さえまとめられれば化けるような気もするのだが。

また次に期待。


 


ネコ脱出
「人生快速」

2013/12/22更新  ≪下北沢 「劇」小劇場≫ ≪ネコ脱出≫ ≪2013/12

ネコ脱出 「人生快速」 ネコ脱出 「人生快速」

ネコ脱出 「人生快速」

【作・演出】
高倉良文

【キャスト】
高倉良文、谷口ヒロユキ、徳田真由美、朴贊革、迫真由美、吉川英夫、今泉マサタカ、
はじかのゆうた、杉田麻由香、船戸慎士(StudioLife)、畑中ハル(潟}イカンパニー)、
大木麻紀、門柳陽子、高野亜沙美(潟tジプロダクション)、鈴木とーる(ショーGEKI)

【スタッフ】
脚本・演出: 高倉良文
舞台監督: 今泉馨
照明: 今西理恵(LEPUS)
音響: 仙浪昌弥
舞台美術: 齊藤樹一郎
宣伝美術: SaMy-BEST
制作: 小口春菜・新井知夏
企画: The cat escaped

【日程】
2013年12月18日(水)〜12月23日(月)

【会場】
下北沢 「劇」小劇場

【チケット料金】
前売  3,500円
当日  3,800円
平日マチネ割  3,000円

【公式ブログ】
http://www.the-cat-escaped.net/pctop.html

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寂れた登山鉄道駅「日向山駅」。
その駅は寂れていて、お客は一部の鉄道マニアぐらい、
鉄道会社にとっては問題のあった社員を処分する左遷先でもあった。

今回新しく辞令を受けてこの駅の勤務にやってきた白滝。
自分が左遷されたという事実を知り一時は落ち込むが、
そこに務める全員が何かしら重い過去を背負っていることを知る。
彼らの心の中の電車はずっと止まったままだったのだ。

女結婚詐欺師が騒動を起こしたり、
東山の重い病気で倒れたり、
様々な事件を経て、白滝を含む駅員達は自分の進むべき道を見つける。
そしてようやく前に向いて歩き出す。

幕。



ざっくりと書くとこういった筋のお話。
上演時間は1時間45分ぐらい。


あらすじだけ見ると非常に重苦しい話のように感じてしまうかもしれないが、
実際はバカバカしい笑いアリで楽しく見れる人情劇。
各々の笑いのセンスが光る、非常に面白い作品だった。


序盤は、正直言ってあまり話の中に入っていけなかった。
過剰な演技のキャラクターが多く、ストーリーも状況説明のためのシーンが中心のために
観ていてもあまり面白いものではなかった。
女詐欺師の事件も急展開過ぎてなんだかなぁ、って感じだったし。

しかし、中盤から近くの学校の教師であるハヤブサ先生と、
8年前の駅長であった鳥居が登場してからは急変。
確かな演技力に裏付けられたおバカなネタの数々に客席の温度は一気に上がり、
本編のストーリー展開も加速して、作品に釘付けになっていった。
とにかく面白いの一言。


脚本が非常に考えて作られているなぁと思った。
本編と関係ないコントシーンや即興シーン(ある程度は筋書きがあったようだが)に
20分ぐらい時間を割いていたので、本編は実質90分無いぐらい。

その短い時間の中で登場人物の深い部分の心理をきっちりと描写し、
めまぐるしい展開の中でそれが「停滞」から「前進」へと変化していく。
不器用な彼らのその心情の変化が、観ているこちらの心を大きく揺さぶってくるのだ。
普段「感動した」なんて言葉は安っぽくてなるべく使うのを避けているが、
この作品については率直に言うことができる。
本当に感動した。


表現力豊かな役者が多かったのも魅力的だった。

特に印象的だったのは駅長ネコの役をやっていた迫田真由美。
序盤は元気があり過ぎて、うるさい演技してるなぁと煙たく思ってしまったのだが、
年をとって死期が近づいてきてからはその佇まいが落ち着き、
長い間ずっと駅を見守ってきた、その人生から紡ぎ出される言葉は非常に重みがあった。

人生を悟りきっていてあきらめにも似た感情を持っていたにも関わらず、
東山の行動によって大きく揺り動かされ、そして最後にはその身を犠牲にして列車に飛び込む。
その姿は果てしなく美しかった。


前述したとおり序盤の空気感だけがちょっと残念だったが、
全体を見ればそんなものが気にならないぐらいに良く出来た作品であったと思う。

また次に期待。


 


メガロザ
「靴下にカミソリ」

2013/12/20更新  ≪新宿タイニイアリス≫ ≪メガロザ≫ ≪2013/12

メガロザ 「靴下にカミソリ」 メガロザ 「靴下にカミソリ」

メガロザ 「靴下にカミソリ」

【作・演出】
目黒フタエ

【キャスト】
野村真里、加瀬恵、高畑亜実、岩本未来、黒川将夫、小林光(江古田のガールズ)、
山下諒(海賊ハイジャック)、松田輝一(劇団晴天)、気田睦(唐組)、市原ユウイチ、目黒フタエ

【スタッフ】
舞台監督: 西廣奏
照明: 南香織
音響: 宮崎淳子(サウンドウィーズ)
宣伝美術: はやしくん
振付: 倉垣まどか、あきた
演出助手: 渋谷優史
制作: 会沢ナオト
企画・製作 メガロザ会

【日程】
2013年12月17日(火)〜12月23日(月)

【会場】
新宿タイニイアリス

【チケット料金】
前売  2,800円
当日  3,000円
学生  2,300円
高校生以下  2,000円
早期割:  2,500円
Xmasパーティ付チケット  4,800円
Xmasパーティだけの参加チケット  2,500円

【公式ブログ】
http://megaroza.wix.com/megaroza

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20代前半の女の子2人とその彼氏、
女子バレーサークルの女性3人(3役とも男が演じている)、
孤児院に通う3人の子供と先生、
三十路前に処女を卒業したくて街頭に立つ女性。
彼らの混沌とした生き様を描いた物語。


という感じのお話。
上演時間90分。

いつにも増してざっくり過ぎていて、全くあらすじの説明になっていないが、
しょうがない、本筋が全くわからなかったのだ。


内容的には、ゆるーいショートコントの詰め合わせ的な感じ。
会話内で使っている言葉のチョイスは松尾スズキとかに近いかも。
作家が松尾スズキを好きなのかどうかは知らないが。


しかし、

とにかく面白くない。
とにかく質が低い。
そして、とにかく不快。


全体的に、特に主宰の目黒フタエに強く感じた印象だが、
力抜いてダラッと演じるのを「カッコイイ」と思っているのだろうか?
真剣さを見せない飄々としたアウトローな空気を「カッコイイ」と思っているのだろうか?
過激な下ネタ、社会批判、著名人ディス、これらのような人が通常あまり触れない部分を
無神経にいじくるのが「カッコイイ」と思っているのだろうか?

『オレらはァ、努力とか成功とか興味ないしィ、
 ただ今この一瞬を好きなことやってパァーッて生きたいって感じ?
 ロックンロール!!』

自分が彼らから受けた印象はこんな感じ。
もちろん彼らが本当にそう思っているかどうかはわからない。
でも少なくとも自分にはそういう風に見えた。

芸能人にもそういう空気を持っている人はたくさんいるが、
それは実力がある人がやってこそのものである。
能力が低い人間のそういう振る舞いは、ただひたすらダサい。
ただのイタい人にしか成り得ない。


ストーリーはめちゃくちゃで、とにかく下ネタゴリ押し。
きっちりした本筋もなければメッセージ性もない。
突如挿入される学芸会みたいな歌やダンス。
何分間も続く意味不明な主宰のソロダンス(ダンサー的にスキルが高いわけでもない)。

本当に何がしたいのか、その糸口さえも見えない作品だった。
やってる本人達にとってもコレを演じていて楽しいのだろうかと疑問に思うぐらい。


あとスルーできないのが、福島と震災についてのあまりにも乱暴でテキトーな扱い方。
以下こりっちに投稿されていた感想のひとつを転載。

『一つ言える事は福島の被災者の前でも演れるのか?
 向こうでは三回目の冬を迎える♪
 東京でヌクヌク暮らしている奴には解らないだろう♪
 もちろんこんな事書いているオヤジにも♪
 だからこそ軽く描いて欲しく無いのだ♪』

まったくその通りだと思う。
こんなテイストの芝居で軽々しく扱ってほしくない。
「福島の人はかわいそうなんだよ」みたいな扱い方、
完全に小馬鹿にしておちょくってるようにしか思えない。

ふざけるのも大概にしろ。


いつものように「次に期待」で文を〆たいところだが、
次を観に行くことはないし、もし観に行ったところで何かしら進化が起きているとは思えない。
メガロザ、個人的ブラックリスト入り。

さよーなら。


 


平熱43度 番外公演微熱43度
「アシュラ」

2013/12/16更新  ≪八幡山ワーサルシアター≫ ≪平熱43度≫ ≪2013/12

平熱43度 番外公演微熱43度 「アシュラ」

平熱43度 番外公演微熱43度 「アシュラ」

【作】
小池利明

【脚色・演出】
桃原秀寿

【キャスト】
〈阿形〉
宝栄恵美(平熱43度)、内山正則(時空動画)、片山耀将(シアターキューブリック)、
クシダ杏沙(ASSH)、四宮勘一(candid)、高橋優都子、塚本健一(マグネシウムリボン)、
柳瀬翼(劇団宇宙キャンパス)

〈吽形〉
籠谷和樹(平熱43度)、松本祐一(平熱43度)、秋山慎治(うぃなぁエンタテイメント)、
石川毅、原田明希子(スーパーグラップラー/銀色金魚)、松山由紀子(ELEGYKING STORE)、
宮内利士郎(原色mixer)、吉留明日香

【スタッフ】
舞台監督: 丸山賢一
照明: 朝日一真
音響: 土屋由紀
スチール: 鏡田伸幸
宣伝美術: ツチヤコウヘイ(Notes)
ダンス振付: ME☆GU
制作協力: 石井恵利華(エムキチビート)
企画・製作: 平熱43度

【日程】
2013年12月11日(水)〜12月15日(日)

【会場】
八幡山ワーサルシアター

【チケット料金】
前売  3,000円
当日  3,500円
高校生以下  1,500円
通し券  5,000円

【公式ブログ】
http://43deg.com/

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軍事開発として極秘裏に研究されていたウイルス。
これが事故により漏れてしまった。

このウイルスは、人間に感染すると風邪にも似た初期症状を発症するが、
後にその体に変異を起こし、人によってはエスパーのような特殊な力を持つようになる。
人々は感染者を忌み嫌い、迫害・隔離の対象にしていた。

そんなとき、感染者によるアシュラと呼ばれる反政府組織が発足。
防衛長官をもその特殊な力で暗殺するその行動に、
政府は本腰を入れて彼らの完全抹殺に乗り出してくる。

主人公・秋生は政府の特殊部隊に所属していた。
ウイルスの感染者はほとんどが子供。
彼らを抹殺する任務に自問自答する彼だが、
なんとそのとき恋人の紗来も感染者だったことを知る。

秋生は紗来を逃がし、感染者抹殺の任務に向かう。
戦争を止めたい紗来は感染者達と自分達の人権を訴えるデモを起こそうと考えて、
感染者の子供たちの協力を得て施設に向かう。

対峙してしまう秋生の部隊と紗来たち。
彼らは殺し合い、その中で秋生も命を落としてしまう。
不幸な巡り合わせに泣き悲しむ紗来。
泣き止んで立ち上がったときの彼女の顔は、
すでに全面戦争に臨む反政府組織のリーダーとなる顔であった。

幕。


大体おおまかにはこんな感じのお話。
上演時間は1時間50分。


出演する役者は8人だけなのだが、彼らには全員役が2つ与えられており、
政府側と反政府側でそれぞれ1役ずつ。
「ゼロ転換」と呼ばれる一瞬でシーンを切り替える手法でめまぐるしくシーンを展開し、
政府サイドと反政府サイドのストーリーを同時進行で描いていた。

16役を8人でやるという発想がおもしろい。
一瞬で政府サイドと反政府サイドの場面が切り替わるため、
役者の物理的移動時間が排除され、お客がダレる瞬間が全くない。
観ていて脳みそが熱くなるぐらいに疲れるが、こういう種の観劇疲れは心地よいものだ。
(年配の方にとってはゆっくり観れなくてしんどいかもしれないが 笑)

特に子供たちが壁の隙間に追い込まれているシーンの展開は見事。
演劇であの臨場感はなかなか他で観ることはない。


全体の演出としては、ほぼ素舞台の中で役者が自分の体のみを駆使して表現する手法。
展開のスピード感などは、かつて惑星ピスタチオでやっていたそれに近いものがある。
「ゼロ転換」ってやり方もそうだし。

こういった演出法も最近は決して珍しいわけではないが、
この団体のそれはとにかくキレがものすごい。
役が入れ替わるその瞬間が、しっかりとその場の役者全員で共有されていて乱れがない。
それでいて一人一人の切り替えのメリハリも素晴らしい。
相当な量の稽古があったのではないか。


脚本に若干ムチャがあった感はある。
テレポーテーション能力がある時点で暗殺は簡単なわけだし、
ほかの能力も「もっとこう使ったらうまくいくじゃん」みたいなものがあったので、
そのあたりは若干ご都合主義部分があったかなと。

しかし、ラストの殺し合い→ヒロインの号泣→立ち上がって歩き出す、の流れは
本当にセンスの良い演出がされている。
鮮やかで、切なくて、悲しくて、そして力強い。
観ているこちらの心をガンガンに揺さぶってきていた。


ちょっと声量のバランスの悪さが気になったが、
(ワーサルでそんなに大声でがならなくても、って部分が序盤から非常に多い)
全体的に観て本当に練って作られた作品だと思う。

拍手。


 


Re:Play
「リプレイ」

2013/12/15更新  ≪アトリエだるま座≫ ≪Re:Play≫ ≪2013/12

Re:Play 「リプレイ」

Re:Play 「リプレイ」

【脚本】
井村容子

【演出】
小林ともゆき

【キャスト】
ZYNM、児玉尚幸、石戸サダヨシ、波多野孝、柾木元一郎、
井村容子、福田源八、SUMIO

【スタッフ】
音響: 石井宏幸
照明: 福田源八、佐々木彩
振付: SUMIO

【日程】
2013年12月13日(金)〜12月15日(日)

【会場】
アトリエだるま座

【チケット料金】
一般  2,500円

【公式ブログ】
http://ameblo.jp/re-play2011/

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インターネットで奇妙な噂が流れていた。
とある公園のホームレス達の中に「ヌシ」という男がいて、
その男のスープを飲むと人生をやり直すことができるらしいという噂。

闇金融の仕事に疲れ、妻との関係にも疲れた男・市川は
このスープの噂を聞きつけ、公園でヌシを探していた。

市川はホームレスの仲間に加わり、共に公園で時を過ごす。
メンバーは、母親から虐待を受けてトラウマを抱える男、
試合中に相手を殺してしまったボクサー、元警官など様々。
スープは飲む前の記憶を彼らから奪っていた。

そんなとき市川の妻・睦美が市川を探しに公園にやってくる。
市川の目の前でヌシにスープを飲まされ苦しむ睦美。

実は睦美を含め全ての仲間達は、前世で市川と関わりを持っていた。
そのときに追った心の傷は、スープを飲んで記憶を消しても癒えることはない。

ホームレスの仲間と別れを告げ、
スープによって精神が壊れてしまった睦美を看病する市川。
そのとき睦美が繰り出した言葉は「裏切ったな」。
襲い掛かる睦美により崩れ落ちる市川の姿を映しながら暗転。

幕。


うん、なんともあらすじ書きづらい話(笑)
前世の記憶を遡る回想がちょくちょく入るし、ちょっと文章では説明しにくい。
上演時間は1時間30分ぐらいだったかな。


終始暗い雰囲気の中で、人間のキレイでない部分の心情を主として描写していた。
10月に公演していたOi-SCALEの「武器と羽」に非常に近い空気かな。
公園のホームレスを扱ってる部分も似てるし。

役者それぞれが落ち着いた写実的な演技でシーンを展開し、
きっちりとそういった裏の含みのある感情を表現できていたと思う。
少人数の芝居で役者にみな地力があるので、非常に見やすくてダレることもない。
ここ最近、若い役者のテンション頼りの芝居ばっかり観てたんで、こういうの観ると安心する(笑)


しかしヌシの設定って老人だったのかな?
個人的には、演じる役者に相応の年齢設定で良かったのではないかなと思う。
どうしても「老人を演じようとしている若者」の姿に見えてしまい、
その戯画化された演技が、全体で通していた写実的な演技に水を挿してしまっていた気がする。
けっして下手とかではないのだけども。
こちらに呼吸を読ませない独特なセリフの間の取り方には何度もドキッとさせられたし。


あとヌシって結局なんだったのだろうか。
神様?悪魔?もしくは死神的な?
その正体が何であろうとそれは別にいいのだが、
彼の行動動機が最後までわからなかったのだけ引っかかった。
ただの自分の読解力不足だったらスンマセン。

ただ、好みとしてはもうちょっと高尚な存在だったほうが良かったかも。
怒りの感情を出しているときにやや小物な感があったので。


市川がスープを飲まずに正気を保っていたのに何故ホームレスと行動を共にしたのか、
(家庭と仕事を捨てての家出なら愛人宅にずっと転がりこんでいれば済む)
前世の繋がりを忘れている市川がそこまで責められなきゃいけないものなのか、
いくつか疑問が残る部分もあったが、
ストーリー全体としては非常に面白い展開の仕方をする、良く出来た作品であったと思う。
演出面でも光の入れ方なんかは「おっ」と思う部分が多かったし。

また次に期待。


 


立体再生ロロネッツ
「間宮汽船」

2013/12/13更新  ≪上野ストアハウス≫ ≪立体再生ロロネッツ≫ ≪2013/12

立体再生ロロネッツ 「間宮汽船」 立体再生ロロネッツ 「間宮汽船」

立体再生ロロネッツ 「間宮汽船」

【脚本・演出】
牧島敦

【キャスト】
宇佐見未奈(立体再生ロロネッツ)、ジェット朗(立体再生ロロネッツ)、おくだりえ(立体再生ロロネッツ)、
池田俊介(立体再生ロロネッツ)、田口和(立体再生ロロネッツ)、池澤夏之介、市川彩、
大久保悠依(ナイスコンプレックス)、こいけ、佐藤麻里子、中村大悟、中村充宏(東京ドラマハウス)、
馬場あずき((馬)真肋製菓)、藤本ひでたか、渡辺優美

【スタッフ】
演出助手: 宇佐見未奈(立体再生ロロネッツ)
舞台監督: 伊藤清一(a58b)
舞台美術: 石倉研史郎(a58b)
音響: 水野裕・なかいももこ
照明: 若原靖(LICKT-ER)
衣裳: さりー(a58b)
メ イ ク: 我那覇多笑美
音楽: カトヒロ
振付: 吉野友香乃
映像撮影: 佐藤宏之
写真: 佐藤静香
宣伝美術: 瀧山真太郎
広報: わたなべみな・大槻桂子(立体再生ロロネッツ)
企画制作: 立体再生ロロネッツ

【日程】
2013年12月12日(木)〜12月15日(日)

【会場】
上野ストアハウス

【チケット料金】
前売  3,000円
当日  3,500円
ペア割  5,800円(2名分)
花の金曜日割引  2,800円
松(小学5・6年生):  1,500円
竹(中学生):  2,000円
梅(高校生):  2,500円
とことこ:  2,500円 ※大人1名と小学校4年生までのお子様2名まで
マミヤさん:  1,000円

【公式HP】
http://www.steroro.com/

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お金持ちの会長さんが船上で自分の生前葬をしたいということで、
その家政婦が間宮汽船に依頼しにきている。

そして生前葬当日。
70名ほどを招待していたが、残念ながら集まったのは10名程度。
しかも彼らはここが生前葬の場であることを知らされていない。

突然海賊に扮してシージャックを仕掛ける間宮汽船の社員達。
状況が理解できずにとまどい、苦情を訴える乗客たち。
そこでいきなり社員の一人に会長の魂が乗り移る。
会長の魂は若き日の戦時中のもので、何故か船をとりまく状況も戦時中に。
船は戦闘機や潜水艦に襲われてしまう。

とっさの機転で戦闘機や潜水艦の難を逃れた間宮汽船。
そこで正気に目覚めた乗客たちは状況を推察する。
すでに会長は亡くなっていたため生前葬ではなくなってしまったが、
擬似的な海への散骨ということで、マジック用の紙吹雪を海に撒く。

幕。



だいたいこんな感じのお話。
上演時間は1時間50分。


いやー、ひどい。


劇団員による前説がグダグダだった時点でかなり嫌な予感はしていたのだが、
その想定のななめ上をいかれてしまった。


とにかく終始ギャーギャー騒いでる印象だった。

サプライズの生前葬を強引に仕掛ける社員達、
それに反抗して怒号を飛ばす乗客たち、
さらにそれを上から押さえ込む社員達。
もうずっとギャーギャー騒ぎ。

その応酬がひたすら続いてウンザリしていたところで会長の魂が社員に乗り移って、
命令する会長に対してまたギャーギャー騒ぎ。
もう、ただただうるさいだけの時間だった。

もしかしてこんなものをドタバタコメディだと思っているのだろうか?
何をお客に見せたいのか、伝えたいのか、全く理解できなかった。


そして騒ぎが収まって、いまさらになっての乗客同士の自己紹介。
メインであろう大騒動を散々やった後に、そんなまったりした時間見せられても、
観てるこっちは「早く終わってくんないかな」としか思わない。

しかもその自己紹介を済ませても謎は全く解決しないときたもんだ。
乗客同士に全く共通項はないし、生前の会長とも比較的疎遠な人間が大多数。
よくわかんないけど必然的に集まったんだよきっと、みたいな
腑に落ちない説明でみんな納得して紙吹雪を撒く。
あんだけ不条理にギャーギャー暴れておいて、最後に納得いく説明も提示してくれないのか。
あの苦痛な時間を耐えたことさえ報われない(怒)


小ネタもクオリティ低いし、
テンポ崩して間延びするようなしつこいネタが多い。
このへんは役者の技量の問題か。


あと暗転が多過ぎ。
ここの演出部は、よその劇団の公演って観に行ったことないのだろうか?
いまどき場転全てを暗転で行う芝居なんて、逆にレア過ぎて貴重に思えるぐらいだ。
演出的に意味のある暗転、それ以外の暗転は客の集中を切るだけの無価値の時間である。


ほか、銃がどうとか、敬礼がどうとか言いたいことは沢山あるが、
気になるところを全部羅列してもキリがないし、意味もない。
それぐらいにあらゆる面が粗かった。

うーん、いつもなら「次に期待」で文を〆るところなのだが・・・
現状ではブラックリスト入りしてしまうなこれは。


 


SORAism company 第13回公演
「Present for me」

2013/12/12更新  ≪日暮里 d-倉庫≫ ≪SORAism company≫ ≪2013/12

SORAism company 第13回公演 「Present for me」 SORAism company 第13回公演 「Present for me」

SORAism company 第13回公演 「Present for me」

【脚本・演出】
塩澤剛史

【キャスト】
さとうちえみ、横山周、埴生雅人、清水恭子(ACJ)、牟田朱莉沙、野村優、
濱屋純、椎名凛、古賀伸也、緒形奈々美、竹中義能、綾原あさ美、
杉浦亜美(エーライツ)、オビカジロー(東京アザラシ団)、神条忍、塩澤剛史

【スタッフ】
舞台監督: archi
舞台美術: 鎌田朋子
照明: 宮崎正輝
音響: 吉田望(ORANGE COYOTE)
チラシ絵: 佐藤智恵美
受付: 金子由樹
制作: SORAism company

【日程】
2013年12月11日(水)〜12月15日(日)

【会場】
日暮里 d-倉庫

【チケット料金】
前売  3,500円
当日  3,800円
平日マチネ割  2,800円
ペア割 6,500円(2名分)
DM割  3,000円

【公式HP】
http://soraism.poo.gs/

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サンタクロースが腰を痛めて動けなくなってしまったことで、
代わりにサンタの仕事をしなければいけなくなってしまった妖精ニッセ。
ニッセは自分の代わりにサンタの仕事をしてくれる人材を求めて行動に出る。

場所は代わって、豪華客船による船上パーティーの会場。
ニッセはそこに招待されていた探偵の神薙刀に目をつけたのだった。
最初はニッセの依頼を拒む神薙刀だったが、そこでシージャック事件が発生、
船は大爆発を起こしてその場にいた全員が死亡してしまう。

生と死の狭間の世界の中、ニッセは神薙刀に交渉を持ちかける。
それはサンタをやってくれるなら、神薙刀を爆発の少し前の時間に戻してあげるというもの。
その約束を飲んだ神薙刀はシージャックを阻止して爆発を止めるべく行動に出る。

しかしシージャック犯はただの学生たちによるドッキリ。
再び船は爆発してしまい、失敗してしまう。
その後何度チャレンジしても船は爆発してしまい、事件の真相はなかなか見えてこない。
ついに突き止めたと思われたクルージング会社の専務でさえも、爆破犯ではなかった。

そして神薙刀はついに真犯人に辿り着き、事件を解決する。
幼馴染の綾子に最高のプレゼントを贈ることができた神薙刀。
しかし公安のうっかりにより再度船は爆発してしまう。
「またやんのかよー!」

幕。


だいたいこんな感じのお話。
上演時間は100分ぐらい。


正直言って最初はどうしようと思ってしまった。


内輪ウケの前説、大学生ぐらいの若い役者の過剰な演技、
次々に出演者が出てきて煩雑に情報をばら撒いていく展開。
「うわー、もしかして痛い芝居にあたってしまったか」と心配してしまった。

しかし一度船が爆破して、タイムスリップが始まってからは展開が一転。
失敗を繰り返しながらも着実に情報を集めて、
少しずつ事件の真相に近づいていく推理ミステリーものになってからは
非常に面白くなって、常にワクワクしながら観ることができた。

ミステリーとしては、お客が主人公と同じ視点で展開するタイプ。
神薙刀が無駄に天才でないのがいいね。
謎を解いていく速度がお客のそれと非常に近いし、
個性的なまわりの人間に対してのツッコミがしっかりとお客の心情を代弁できている。
主人公と観客とで、知識も心情もリンクがしっかりとされるので
お客は自然と物語の中にのめり込んでいけるのだ。


神薙刀を演じていた塩澤剛史が安定していたってことも良かった。
全体的にみて役者スキルが決して高くないメンバー構成だったのだが、
事件の真相探しになってからは彼はほぼ出ずっぱりでセンターポジション。
主軸になる彼の演技力がしっかりしているので、
常にシーンが一定以上のクオリティを保つことができていた。


何度も事件の瞬間を繰り返すってのはちょっと前に映画であったばかりだし、
推理モノとしての筋書きは、いかにも犯人っぽい人がいたと思ったら、
実は真犯人は幼馴染(厳密にはちょっと違うけど)、というようにベタな展開。
でも必要以上にこねくり回さずにシンプルな展開にしていたことに逆に好感を持てた。

綾子が妹を引き止めてる部分だけ惜しかったかな。
ちょっと露骨にやり過ぎて、伏線としての提示が強すぎたように思う。
早い段階でお客に「綾子に何かある」って悟られ過ぎるのは、お話としてもったいない。


非常に楽しく観ることができた。
あとは全体的なキャスト陣のスキルがもう少し上がればなと思う。
これからもより良い作品を目指してほしい。

また次に期待。


 


天才劇団バカバッカ vol.12
「ザ・ランド・オブ・レインボウズ」

2013/12/11更新  ≪六行会ホール≫ ≪天才劇団バカバッカ≫ ≪2013/12

天才劇団バカバッカ vol.12 「ザ・ランド・オブ・レインボウズ」

天才劇団バカバッカ vol.12 「ザ・ランド・オブ・レインボウズ」

【脚本】
ゆるボーイゆるガール

【演出】
桐野翼

【キャスト】
木村昴、野村龍一、原将明(トムハウス)、市川欣希、レノ聡、熊野直哉、篠原正明(ナカゴー)、
ZiNEZ、KAIRI(from FOLK:LORE)、雷斗(S'cLean)、田村将一、田部圭祐、東慶光、
岸本学、長谷川弘、加瀬太喜、前川昂哉、大泉一旗、津村録太郎、
まつながひろこ(スターダストプロモーション)、池田裕子(ヒラタオフィス)、
中村知世(アワーソングスクリエイティブ)、津賀保乃、京香(ホリプロ)、
金野美穂(ポニーキャニオンアーティスツ)、綱島恵里香(サンズエンタテインメント)、
宇野なおみ、佐藤シャミーナ、横内のぞみ、海口ゆみ、堤もえ、脇田美帆、
山藤桃子、安藤紫緒(スターダス・21)、紗弓、木村飛鳥、岩尾由美子、
木村萠子、中原紫帆

【スタッフ】
舞台監督: 井関景太、村上洋康
美術: 原田愛
照明: 山内祐太、江森由紀
音響: 高橋真衣
音楽: 小澤時史
振付: 下司尚実、近藤彩香
衣装: 田村五月桃、山下桃世
映像: 松澤延拓
撮影: 大竹正悟
デザイン: 柴山修平
特設サイト: ヒロセミサキ
アクション指導: 白倉裕二
制作: 吉田千尋、ひかり
企画・製作: 天才劇団バカバッカ

【日程】
2013年12月11日(水)〜12月15日(日)

【会場】
六行会ホール

【チケット料金】
前売  3,500円
当日  3,800円
平日マチネ割  3,300円
学割  1,500円

【公式HP】
http://www.t-bakabakka.com/

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小さな映画製作会社が社運を懸けて手がける大プロジェクト。
それは江崎幸男の作品「虹の国」を日米合同で映画製作するもの。

しかしのっけから主演を務めるはずのウイル・スミスが降板、
代役には何故か白人のバスケットボール選手がやってくる。
スポンサーはムチャクチャな要望を出してくるせいで脚本はむちゃくちゃになるし、
脚本担当者は私情で勝手にヒロインを増やしたりで、
映画は最初の原案はどこへいったのというぐらいにムチャクチャな方向へ。

しかしそうやってできた作品も、自分達の想いによってできたもの。
「虹の国」を撮るにはまだまだ自分達が未熟だったと悟る。

出来上がった「虹の国」はその年の最低映画賞を受賞してしまう。
しかに皮肉なことに映画製作過程を追ったドキュメンタリーは大ヒット。
映画製作会社はなんとか存続できることになる。

めでたしめでたし。


超々ざっくりすぎてアレだが、まぁだいたいこういう筋のお話。
上演時間は1時間45分ぐらいかな。


内容は、うーん。


緞帳が上がると、まず始まるのは自己紹介の歌。
ここでいきなりポカーンとしてしまった。

「自己紹介の役割を持った歌」ではない。
曲のワンフレーズを使って1人ずつ名前と役割を説明する、
本当にガチの「自己紹介の歌」なのだ。

劇中の表現にて、場の状況やそこにある人間関係を伝えていけばいいのに、
オープニングに箇条書きみたいな人物説明を歌でぶっこんでくる、
そのセンスに全く共感できない。
だったらパンフに人物説明でも人物相関図でも掲載しておいてくれたほうがまだいい。

しかもその後すぐ続くのは、プロデューサーのテンパりソング。
幕開けからおふざけ曲が2連発。
もう序盤から気持ちが切れてしまった。

それ以降、ちょくちょく歌が入ってくるのだが、
目を見張る歌唱力を持つ役者は1人だっていないし、
役者は口パクで事前録音した声に頼っている部分も多数。
ピンマイクは一切使用せずに、全部ハンドマイクでやるもんだからマイクの手渡しが見苦しい。

「あんなどうでもいいところは歌うのに、
 なんでここは歌わずに台詞の独白?こここそ歌じゃない?」
みたいに感じるところも多くあった。
特に後半は、もう歌挿入するのめんどくさくなったのかな、ってぐらいに歌がない。

この団体は「劇中で歌う」ってことについて、いったいどういう意識でいるのだろうか?
盛り上がるから?楽しいから?
きちんとしたミュージカルを観ればわかるように、歌に入るためには必ずそこに動機がある。
その動機が作れてないから、どうしても「とりあえずここ歌ってみました」程度に見えてしまうのだ。
これではただの舞台を使ったカラオケ大会になってしまう。


あとストーリーが・・・なんか納得いかない。

映画を作っていく上でトラブルが頻発、
しかもそれは役者・スタッフそれぞれの身勝手さが主な原因。
結局ダメな作品が出来上がっちゃった!

・・・そこまでは別にいいのだが、
それをプロデューサーが「これはこれでみんなの想いが詰まった作品だ」って言って、
なんだか良い感じの雰囲気にまとまってチャンチャンってのが、ちょっと(汗)

スポンサーが横暴な注文つけてきて、それに製作側はハイハイ従って、
脚本家は自分の狙っている子のためにヒロイン追加して話壊して、
顔怪我するのがNGだから足しか狙わないというおかしなアクションシーンをやって、
禁じている社内恋愛を破ったカップルは作品の中でイチャイチャして、
これのどこが「みんなの想いが詰まった作品」なのか。
「作品のことなんか微塵も考えずにそれぞれが好き勝手やった結果」でしかないはずだ。
正直この展開には違和感以外に何も感じることができない。

あと細かいけど、さっきまで「監督史上最高のカットが撮れた!」って喜んでた監督が、
5分後には「ふざけた脚本にしやがって!」みたいに脚本家に怒ってるのはナンなの(苦笑)
満足してたんちゃうんかい(笑)


演出面もなんだか。

舞台上に人が残っていることが多く、照明で切ってシーンを展開しているのだが、
ピックアップが当たっていないモブと化してる人の動きが非常に目立つ。
あの人数が舞台上に同時に存在していて、
ピックアップでない人も常に何かしら動いてるってのは、お客にとって結構うっとおしいのだ。
あきらかにフォーカスを奪うような共演者殺しの動きをしている役者もいたし。

あと客席後方から報道陣がインタビューするって手法、ビミョーかと。
だって実生活でそんな視点に立つことないでしょ、インタビュアーとその対象に挟まれるって。
客席後方からインタビューの声を飛ばすことで何を表現したかったのか、さっぱりわからない。

ウィル・スミスオーディションのときもそう。
特に客いじりするわけでもないのに客電をつけるってどういう演出意図なのか。
客席が明るくなったのに、特に客席では何も起きずにまた照明が落ちる。
こちらとしては、なんだか客席にいてスベらされたみたいで気持ちが悪い(苦笑)


役者は全体的に演技がくどいかも。
句読点で息継ぎが多いし、動きもオーバーアクションが多いので、
かなり会話テンポが悪くてシーンがもっさりする。
カーテンコールで木村昴が見せてくれた速度の1歩手前ぐらいの塩梅でダァーッと演じて、
全体として10分ぐらいタイムを縮めてくれたほうが作品にハリが出ると思う。

ボイパやブレイクなどのパフォーマンスは素晴らしかったと思う。
ああいう常人には出来ない事をビシッっと見せてくれると、こちらはテンションが上がっていく。
逆に言うとそこが一番劇中で心が動いた部分だっていうのは、作品としては悲しいことだが。
本編からちょっと外れたオマケ部分のパフォーマンスだしね。
これぐらいのクオリティのものを本編でも見せてくれていたらなぁ。


うーん、パンフに「こんな劇場で公演できるなんて」という主宰の言葉があったが、
正直言って六行会ホールはまだ身の丈及ばずだと思う。
実力不足で大きな劇場押さえて、かかる費用はチケット代にてお客負担、なんてスタンスでは、
いずれお客に見放されてしまうだろう。

まだまだ若い劇団。
せっかくジャイアン声優という花形がいるのだから、
飛び級なんかしようとせずに、一歩一歩地力を高めながら前に進んでほしい。

次に期待。


 


Platform 第4回公演
「とらわれのみ。」

2013/12/03更新  ≪pit北/区域≫ ≪Platform≫ ≪2013/12

Platform 第4回公演 「とらわれのみ。」 Platform 第4回公演 「とらわれのみ。」

Platform 第4回公演 「とらわれのみ。」

【構成・演出】
住吉美紅

【キャスト】
住吉美紅、早さきえこ、安見謙一郎、戸草内淳基、斉藤慎介(以上、Platform)、
干場明日実(東京オレンジ)、三浦麻理恵(47ENGINE)、江島ゆき、忍翔、小原敬生

【スタッフ】
舞台監督: 鷲尾亮太
照明: 佐藤歩
音響: 村上美月
制作: 小島尚子、干場明日実、斉藤慎介、嶋拓哉、谷陽歩、大沼由加理
広報: 畑野芳正
衣装小道具: 戸草内淳基
舞台美術: 早さきえこ
物販プロデューサー: 安見謙一郎
映像撮影: 滝沢浩司
裁判アドバイザー: 辻周典
演出助手: 安見謙一郎、小原敬生

【日程】
2013年11月29日(金)〜12月1日(日)

【会場】
pit北/区域

【チケット料金】
一般  2,800円
リピーター割  2,300円
5回通し券 10,000円

【公式HP】
http://www.plafo.info/

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「ある晴れた日のことです。
わたしは、とらわれのみとなりました。」
突如捕らえられた主人公は
観客が判決を下す「即興裁判」にかけられ、
有罪ならば囚人、無罪ならば刑務官としての人生を歩む。
反転する正義、浸食し合う境界。
日替わり主人公と4人の女囚と2人の刑務官が織り成す
閉ざされた世界の春夏秋冬。


以上が公式HPに記載されていたあらすじ。

物語は前半の裁判シーンと後半の監獄シーンに分かれており、
おおまかな筋書き以外は(それすらもほとんどないが)全て即興で演じて作っていく。
ラストシーンさえ決められていないため、
どんな幕の閉じ方をするかはお客どころか演じ手さえもわからない。


企画としては非常におもしろいものだと思う。
インプロ界の動向を詳しく知っているわけではないので
これが目新しい趣向なのか、それとも昔からやってることなのかは知らない。
しかしお客も演じ手も十分に楽しめる構成であるし、
物語の横への振り幅が∞に近いので、
演じ手次第でとんでもない神作品に化ける可能性も秘めている。

お客から事前に一言ゼリフを集める手法も良かったと思う。
開演前にお客は自分の好きなセリフ(テーマは用意されている)をカードで提出、
それを劇中で役者がここぞというときに無作為で一枚引いて、そのセリフを口に出す。

状況にぴったりのセリフが飛び出せばその奇跡に感心して客は沸くし、
見当違いのセリフが飛び出してもその滑稽さで客が沸く。
そしてお客に自分が作品に参加している感を与えて、作品に対して前傾姿勢にさせる。
よくできた手法だ。


ただ、企画自体は素晴らしいと思うのだが、
課題があるなぁと思ったのはその演じ手たち。

前半の裁判シーンは見事なぐらいに話が、テンポ良くかつ愉快に展開し、
インプロ作品として非常にクオリティの高いものであった。
しかし物語が後半の刑務所シーンに入るとグダグダに。
演じ手がお互いに探り合って、展開に迷い、
観ているこっちが心配になってしまうような状況になっていた。

まぁ、もちろん即興なので、その回によってアタリハズレはあるだろう。
神が降りたような奇跡の展開をみせる回もあるだろうし、
残念ながらそうならない回だってあるだろう。
しかしお客は基本的にはその1回しか見ない。
たとえ神が降りなかったとしても、それなりの水準のものを提示できる力が求められる。

裁判シーンはうまくいって、刑務所シーンはグダる、
これは物語のガイドラインの大小の差によるものだと思う。

裁判であれば、裁判官が進行役を務め、検察と弁護人が交互にしゃべるという、
いわゆる決められた一つの「ガイドライン」がある。
これは富士山の登山道に張られたロープのようなもので、
それによって山を楽しむ自由度は下がるが、道に迷うことなく山頂まで行くことができる。

しかし刑務所シーンでは守らなければいけない「ガイドライン」がほとんどなく、
山の例えでいうならば、ロープも登山道もない状況だった。
どんなルートで山頂を目指してもいいが、遭難の確率はグンと跳ね上がる。

前半ぐらいのガイドラインがあれば大丈夫、
後半ぐらいのガイドラインなら厳しい。
つまり演じ手のスキルが現状でそういう水準であったということであろう。
完全な自由度の中ではどうしていいかわからず迷走してしまう。
力量不足が露呈した形だ。

ただ、もちろんガイドラインがなくても成立させられるスキルを持つのが理想ではあるが、
個人的には前半ぐらいのガイドラインがあっても作品としては十分だと思う。
即興として難易度の高いことをやってるかどうかより、楽しいものを見せてくれるかどうか、
一般のお客さんはそういうもんだと思うし。


あと、これは直感的に感じたことだが、
演じ手に自己中な人多い?

自分が提示した展開プランを、すでに破綻が見えているのにゴリ押しし、
他の演じ手の提示したプランは即否定する、そんな時間がものすごく目立った。
「イエスアンド法」なんてのはもう古い手法なのかもしれないが、
さすがに「ノー」が多過ぎて気になった。
チームで作品作りではなく、個人で作品作ろうとしてる感じ。

こういう人はわかりやすく、人とセリフ被るね。
相手が何をやりたいかを汲む気がないから、相手のセリフ終わりを感じ取れずに喰っちゃう。
相手のことを考えずに自分ペースで演じようとするから、そのセリフを喰われちゃう。
セリフ被りの回数と、その人の自己中レベルって、
おもしろいぐらいに比例するんだなぁと思って、違う意味で興味深く観察してしまった。


あ、もうひとつ気付いたのは、男性と女性の状況説明方法の違い。
演劇では状況や設定を何らかの形でお客に伝えなければいけないわけだが、
男性キャストは、短い一言もしくはワンアクションで簡潔に伝えたがる。
女性キャストは、長い説明台詞で伝えたがる。
この違いがものすごく顕著だった。

たまたまこの座組のメンバーがそう偏っていただけなのか、
それとも男性女性それぞれの本能的な部分なのか、それはわからないが。
どっちも一長一短あるから良し悪しはないけれども。
あ、すいません、そう感じたってだけの話で劇評でもなんでもないです。


前述したが企画は非常に面白いものだと思う。
あとは演じ手次第。
インプロはスキルも求められるし、お客に好かれるタレント性も求められる。
特に後者のほうはとてつもなく重要で、同時にとてつもなく難しい部分でもある。

追求してより上を目指してほしい。
次に期待。


 


座・あおきぐみプロデュースvol3
「異人伝」

2013/12/02更新  ≪本願寺ブディストホール≫ ≪座・あおきぐみ≫ ≪2013/12

座・あおきぐみプロデュースvol3 「異人伝」

座・あおきぐみプロデュースvol3 「異人伝」

【作・演出】
青木淳高(座・あおきぐみ)

【キャスト】
阿沙花、伊藤未央、大橋勇太、岡田典子、岡田美樹、加藤由香子、金澤辰典、
菊川聖羅、篠崎章宏、巣山孝幸、崎智絵里、玉城海、橋本里沙、春宮茉由、
和田士季、橋詰昌弘、昼田富彦、津村英哲、とうふ、東野行恭、中川智美、
西川ゆき依、原田久仁茂

【スタッフ】
舞台監督: 鹿島樹(森羅演劇空間)
照明: 岡田潤之
音響: team HonBan
殺陣指導: 津村英哲(ツムラ組)
方言協力: 玉城栄子、松堂シヅエ
宣伝美術: 荒川温子(L'aube Produced by Bridge for Flappers)
制作: 阿部真弓

【日程】
2013年11月29日(金)〜12月1日(日)

【会場】
本願寺ブディストホール

【チケット料金】
一般  3,000円

【公式HP】
http://aokigumi.net/

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とある架空の島国のお話。
この島では2つの民族が共存していた。

片方の民族は竜神教を信仰していたが、その僧正がもう片方の民族に暗殺されてしまう。
竜神教の民族は、相手の民族を「鬼」と勝手に呼称し忌み嫌い、島から追い出す。

それから10年後、「貿易を始めたい」との申し出を受けて島にきた鬼たち。
しかしその呼び出しは陰謀で、彼らは島民たちに命を狙われてしまう。
鬼に理解のある富一家にかくまってもらう鬼たち。

一方、現・竜神教僧正の妹である凪に仕える勇龍は、
仲間とはぐれてしまった鬼・タリクと出会う。
10年前に鬼の少年を斬ってしまったことを悔やんでいた勇龍。
なかなかタリクに心を開けない。

再度島民たちの襲撃を受け、
貿易話が僧正の罠であったことを悟った鬼たち。
船を燃やされ退路を失った彼らは竜神教の本部に乗り込んでいく。

そこで鬼たちの前に立ちはだかる勇龍だったが、
鬼と呼ばれる彼らが自分達人間と何も変わらないことを目の当たりにして、
自分が守りたいものを守るという信念に従い、僧正に刀を向けることに。

前・僧正の暗殺さえも陰謀であったことが判明したり、
僧正の側近・左梗が裏切ったりで状況は一変するが、
最終的には島民、鬼たちは分かり合い、民族の壁はなくなり平和が訪れる。

幕。


だいたいこんな感じのストーリー。
上演時間はしっかり確認してなかったけど、たぶん120分前後だった気がする。


島民は標準の日本語をしゃべり、鬼は全く別の言語をしゃべる(首里方言を基にしたものらしい)。
まったく違う言語をしゃべる民族同士が争い、そして和解していくお話。

いやー、難しいね。

劇中でお互いの民族の言葉が通じないという表現は演出上ほしいところだが、
鬼の言葉をお客さえも理解できない点は作品にとって大きな負荷になる。
映画と違って舞台では字幕を表示することもできないので、
民族の言語の差を出しつつ、お客にも話の筋を理解をさせるそのバランスが本当に難しい。

実際、物語の導入で鬼たちが緊迫してがなり立てているシーンでは
本当に何をしゃべっているのかわからず、
もう観るの放棄しようかなってぐらいにキツイ時間に感じた。
客席に座っていて、まるで舞台側に無視されてるような感覚にさえ思えてしまうのだ。

島民と鬼の会話だったり、固有名詞が増えてくる中盤以降は会話内容が推測できるようになるだが。
しかし、それでも脳内の翻訳機能を使って「変換作業」というワンステップが入ってくるため
素直に物語自体を楽しむ邪魔になっているのは変わりない。

何かしらそのあたり工夫が必要だなと思った。


あと語り部の存在意義が謎すぎる。
この島を見守る竜神様的な設定だったようだが・・・必要?
シーン内で高めた温度が、あの無感情な語りが入るたびにリセットされてる感があって、
個人的にはその存在が好きになれなかった。
どうしてもやりたかったなら登場人物の独白の挿入でも良かったのでは。


役者間の実力差がかなり大きかったが、そこはちゃんと配役でカバーしていた。
デキる人がちゃんと話を引っ張るべきポジションについていたし、
笑いなんかも狙えるスキルのある人だけが狙って、きちんと拾っていたので良いと思う。
凪の要所要所の力の抜けた演技や、親衛隊のバカさ加減は楽しかった。

ただ、アクションは・・・左梗以外の人のスキルがいくらなんでも低すぎ(汗)
上半身だけで剣を振るう人が目立つし、役者の動きのキメが甘いから、SEが非常に入れずらそう。
(まぁ、音響のサンプラーもお世辞にもスキルが高いようには思えなかったが)
魅せれない殺陣シーンなら見せないほうが作品としてはよっぽどいい。


話の筋は王道だしテーマもいいと思うのだが、
竜神様から授かった勇龍にしか抜けない剣とか、
凪と勇龍の許婚設定とか、
10年前に捕らわれてから敵側に寝返っている右梗とか、
掘り下げが足りてなくて、存在自体が冗長に思えてしまう部分も見受けられた。

あれだけ卑劣な悪の大ボスキャラで通してた僧正が
ラストで「私は間違っていたのか…」って都合よく改心するのもちょっと。
それはさすがに無理だろうよ(苦笑)


脚本・演出・役者ともに惜しい部分がいっぱい。
いろいろ書いたが、別に駄作ではない。
もっともっと考え悩み抜いて、プロとしてのクオリティの舞台に仕上げてほしい。

次に期待。


 


ヴォードヴィルの会
「フィガロの結婚」

2013/12/01更新  ≪APOCシアター≫ ≪ヴォードヴィルの会≫ ≪2013/12

ヴォードヴィルの会 「フィガロの結婚」 ヴォードヴィルの会 「フィガロの結婚」

ヴォードヴィルの会 「フィガロの結婚」

【原本】
ロレンツォ・ダ・ポンテ

【翻訳・演出】
中野浩靖

【キャスト】
梶原航(NIKITA)、宇夫形歩唯、鳥越さやか(パレナージュ)、清藤昌幸、菅原健人、麻由、
小山裕嗣(企てプロジェクト)、猪俣京子、渥美浩太朗、宇野仁美(明治座アートクリエイト)、柴田昌治

【スタッフ】
照明: 千葉慶一
音楽伴奏: 桐生三知代
舞台装置: 松川伸二(松川工房)、加島祥全
ロゴデザイン: 永松幹太
記録: 千葉宏樹
企画・製作: 中野浩靖

【日程】
2013年11月28日(木)〜12月1日(日)

【会場】
APOCシアター

【チケット料金】
一般  2,000円

【公式HP】
http://www.vaudevillenokai.com/

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往年の名作「フィガロの結婚」の上演。

結婚を控えるフィガロとスザンナ。
それを阻止しようと悪巧みするマルチェッリーナとバルトロ。
権力者の立場を利用してスザンナを狙うアルマヴィーヴァ伯爵。
そんな浮気性の夫に悩む伯爵夫人。
伯爵夫人に強い片思いを抱くケルヴィーノ。

個性的な登場人物のドタバタを軽快に描いた作品。



「フィガロの結婚」というと、貴族批判を描いた社会的で重厚な作品、
しかもオペラとして上演されるイメージが近いが、
この団体は「ヴォードヴィル」という作風で作品を作り上げていた。

団体のHPによれば「ヴォードウィル」とは、オペレッタよりもやわらかい軽歌劇をいうらしい。
社会的なテーマ、哲学的なテーマを特別意識せずに、
その場で起こるストーリー展開を純粋に楽しむものとして作られるそうだ。
どの年齢層でも気楽にエンタメとして楽しめるような、そんな方向性ってことなのかな。

実際、通常3時間を越える膨大な脚本は1時間50分までそぎ落とされ、
どのシーンもかなりコミカルに表現されていたように思う。
オペラと違ってほぼ演技シーンが中心、歌は要所要所でそこそこって感じ。
バランスは一般的なミュージカルと、ストレートプレイの中間ぐらいってニュアンスだと
わかりやすいだろうか。


モゴモゴとしゃべって子音が消えてしまう、
または破裂音の発声だけ大きすぎてセリフが聞き取りづらい役者が少数いたが、
役者全体の力量は平均的に高く、コメディとして十分に楽しめる出来になっていた。

個人的にいいなぁと思ったのは悪役を務める役者陣。
いやらしい性格の伯爵や、マルチェッリーナ、バルトロ、アントニオ。

こういったポジションを担当する役者が何も考えずに悪人を演じるとお客に嫌われてしまい、
笑い部分が成立しなくなってしまうケースが多いのだが、
悪人ではあるけども、コミカルで楽しいキャラクターとして描写ができているため、
お客には嫌われることなく物語を盛り上げることに貢献していた。
こういうの、簡単なようでけっこう難しい。


劇場は小さいし、セットも照明も最小限の中で上演された作品だったが、
値段以上に価値のある良い作品だったように思った。
「ヴォードヴィル」という路線で、観る側はもちろん、演る側の敷居を下げているのも良いと思う。
大量のアンサンブルが出てきて豪華なセットの上で歌って踊って大盛り上がり、
それがフィガロの結婚だ、なんて先入観を抱いてる人にとってはどうか知らないが(笑)

また次に期待。


 

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