絞り込み 団体=「CP Project」
CP Project vol.4 「桜の園 チェーホフが描きたかったもう一つの桜の園」 @ラゾーナ川崎プラザソル 2012/06/11
※本文中に激しくネタバレ含みます!
上演中の公演についてこれから観劇予定の方は閲覧ご遠慮ください。
CP Project vol.4
「桜の園 チェーホフが描きたかったもう一つの桜の園」
2012/06/11更新 ≪ラゾーナ川崎プラザソル≫ ≪CP Project≫ ≪2012/06≫
CP Project vol.4 「桜の園 チェーホフが描きたかったもう一つの桜の園」 【脚本】 アントン・チェーホフ 【演出】 小山裕嗣 【キャスト】 別府寛隆(企てプロジェクト)、永野知里、延田知香(企てプロジェクト)、高部恵子(劇団蒼い群) 、 村田次郎(劇団蒼い群)、佐藤まもる(紙芝居屋・まもる事務所)、ふくもとゆきを(劇団蒼い群)、 小川美紀子(劇団蒼い群)、三木美毅(47ENGINE)、梶原 航、鈴木克昌、 北本あや(アミュレート)、あゆむ(桃)、ひとみまさこ、大澤久美子 【日程】 2012年6月 8日(金) 19:00 9日(土) 14:00/18:30 10日(日) 14:00 【場所】 ラゾーナ川崎プラザソル 【チケット】 前売・当日 3,000円 【公式ブログ】 http://cpproject.seesaa.net/ ============================ 言わずと知れたチェーホフの四大戯曲のひとつ「桜の園」。 散財癖の治らない女当主が久しぶりに田舎に戻ってくるが、 その桜の園と呼ばれる場所は借金返済のために売りに出さなければいけない状況。 そんな状況の中で女主人の兄、娘、幼女、召使、商人などが繰り広げる 感情にまみれた会話シーンがメインのお話である。 役者陣は比較的年齢が高めで、 戯曲内の登場人物の年齢に近いキャスティングだったので 違和感もほとんどなく自然に観る事ができた。 若い劇団がチェーホフを演ると大体この年齢の部分で無理が出てしまうことが多い。 演技も落ち着いた芯のあるセリフの吐き方をできる人間が多く、好感を持てる。 実年齢を積まないと出せないような、ナチュラルかつ個性的なトーンのセリフ回しは 聞いていて心地が良い。 舞台中央に吊られた桜の木は美しく、 音響・照明なども十分に評価できるレベルの作品だった。 ・・・ただ、率直に思ってしまった感想は「退屈だなぁ」だった。 囲み舞台でほかのお客の顔が鮮明にわかる状況だったのだが、 集中力がなくなってしまっているお客はかなり多く目に入った。 寝てしまっている人もチラホラいたし。 なんていうんだろう、 上手いんだけど、あんまり面白くないって感じ? 普通にこの桜の園の戯曲を読むと、 借金に追われる危機的状況、実らないたくさんの愛情など 悲惨だったり、いたたまれなかったりといった不幸なシーンが多く、 一見「悲劇」の印象を強く受ける。 それゆえにこの作品を上演する団体は 人物描写をどれだけリアルに作れるか、 用意された沢山の長ゼリをいかに感情を込めて上手く読むか、 そういった部分に重きを置いて上演しがちである。 今回のこの公演もそういった部分を強く感じた。 しかし、この戯曲はチェーホフ本人いわく「喜劇」なのである。 登場人物は全員人として何かしら大事なネジが足りていない。 劇中で描かれるたくさんの恋はどれも歪んでいて波乱に満ちている。 この戯曲、喜劇として成立させる面白い要素はちゃんと用意されているのだ。 「喜劇として成立させること」を意識するかしないかで 会話シーンは全く別の弾み方をみせる。 そうなって初めて観客は「退屈」を感じることなく見ることができるのだ。 チェーホフをやる上で一番大事な部分は私はそこだと思っている。 あと囲み舞台の意識が低い人が多かったのが残念だったかな。 客席と舞台が一方向で向かい合ったオーソドックスな舞台では、 セリフを前に飛ばす、無駄に背中を向けない、奥足奥手など 基本的な約束事がある。 いわゆる「ちゃんと前を意識して芝居する」ってヤツだ。 囲み舞台になれば全方向にお客がいるため、どちらが前という概念がなくなる。 しかしこの状況は「前を意識しなくていい」ではなく、 「全方向を意識しなければならない」が正しいのである。 勘違いして前者の意識になってしまっている役者がチラホラと。 こういうのは意識の持ち方次第ですぐに直るものなだけにちょっと残念。 いろいろ書いてしまったが、 集まっている人間の地力は高く、評価できる団体だと思う。 今回は3年ぶりの復活公演だったみたいだが、 是非とも定期的に公演を続けて、より上を目指してほしいなと思った。 P.S. 今回の芝居のタイトルに「チェーホフが描きたかったもう一つの桜の園」という サブタイトルがついているのだが、 蓋を開けてみれば、ノーカットの初稿版を使用したってだけのことで 他でもよくみかけるオーソドックスなチェーホフの桜の園だった。 このサブタイトルを見た人は皆 「いままでどんな団体もやってこなかったようなアナザーな演出の桜の園」を期待してしまう気が。 コレ思うの私だけ?