日々是劇評

関東圏内で観劇した舞台について率直に感想を書いています。
自分用の備忘録みたいなもんなんで遠慮なく辛口な批評もしています。

絞り込み 記事更新日=「2012/03」

613 3rd STEP 「Vector」  @中野HOPE 2012/03/26
東京都カリスマイル 「トラウマニア」  @八幡山ワーサルシアター 2012/03/19
相模舞台同盟 春興行2012 「SILVER」  @ラゾーナ川崎プラザソル 2012/03/18
風雲かぼちゃの馬車 第10回本公演 「紀尾井坂のヘン!?」  @下北沢 シアター711 2012/03/11
CAP企画vol.5 「A-15〜アイゴ〜」  @中野MOMO 2012/03/08
第4回川崎インキュベーター合同公演 「ハイパーアトラス」  @ラゾーナ川崎プラザソル 2012/03/02

※本文中に激しくネタバレ含みます!
 上演中の公演についてこれから観劇予定の方は閲覧ご遠慮ください。


613 3rd STEP
「Vector」

2012/03/26更新  ≪中野HOPE≫ ≪613≫ ≪2012/03

613 3rd STEP 「Vector」 613 3rd STEP 「Vector」

613 3rd STEP 「Vector(ベクター)」

【作・演出】
613

【キャスト】
大竹浩平、丹羽隆博、大寺亜矢子、松岡努、岡崎涼子、佐藤美佐子、小林レイ、
佐藤潤平、八木佳奈子、宮ちあき、野田孝之輔

【日程】
2012年
3月24日(土)〜4月1日(日)
計14回公演

【場所】
中野HOPE

【チケット】
前売3,000円、当日3,200円
26日、27日マチネのみ平日昼割2,500円

【公式HP】
http://www.55-613.com/

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おおまかにストーリーを洗うとこんな感じ。

遺伝子治療に関する研究の発表の日、
研究室のリーダー(主人公)の前にかつての友人が記者として現れる。
その記者は今回の発表が危険なものであることを掴んでいた。
主人公は記者に全てを語る。

今回の研究チームの発足時のこと、
製薬会社の一方的な意向で研究対象が変わってしまったこと、
研究員の1人に研究結果を持ち出されて競合会社に寝返られてしまったこと、
研究員の1人がガンで余命1年であることがわかり、チームから抜けてしまったこと、
ベクターに禁じ手にも近いエイズウイルスを採用したこと、
今回の発表がその安全性が立証される前の見切り発表であること。

研究者としての筋を通そうとする主人公と、それが納得できない記者。
ラストはアウトブレイクが起こって幕引き。

・・・うーん、悪くはない。

主人公と記者の会話から回想シーンを順に進めていく
「インタビューwithバンパイア」的な見せ方は良く出来ていたし、
研究に対するいろんな人間の立場の違い、想いの違い、そこからくる苦悩など、
そういった人間関係とその発展も見事だと思った。
単純にストーリーも面白い。


ただ細かいツッコミどころが非常に多くて、それが残念だった。

まず気になったのは演出全体の一貫性の無さ。
真っ白で抽象的なデザインの舞台装置で
カーテンや窓を開けるマイム動作なんかを行っているにも関わらず、
なぜか小道具だけ現物を必要以上に細かく揃えていて違和感があった。
公式HPの「今回の公演の見所」を見ると、確かに小道具にこだわっている旨が書いてあった。
しかしこれなら舞台セットも写実的にするべきでは?
表現したい方向性がよくわからなかった。

音響面でいえば、ストーリー的に辛い展開の連続なはずなのに、
時間経過と場面転換の際のBGMが歌詞アリの明るい邦楽。
徹底的に明るい曲を流すなら逆に悲しみを呼ぶこともあり効果的だが、
中途半端で微妙な前向き感がある曲ばかりで違和感だけが残った。

あと細かいが、上手下手のドアはSEでノック音が入るのに、
中央奥のドアは木製パネルを役者が叩く生音。
・・・何故ヽ(´Д`;)ノ

演技スタイルについても、写実的な演技をする役者とそうでない役者が混じっている。
写実的な演技をしている役者も、良いセリフを言うときは正面を切る傾向があってなんか妙。
「いまから大事なこと言うから正面向きます!」みたいなのがメチャメチャ多い。
メインでしゃべってた役者はみんなそうだったから、これは演出の指示なのかなぁ。

設定もけっこうツッコミどころアリ。
各専門分野につき1人ずつだけの研究員が集められ、
しかも集められた後に研究対象の変更というのはまずありえないし、
独立行政法人が製薬会社の一社員にあそこまで一方的に仕切られることもない。
寝返った研究員がいとも簡単に研究データを持ち出していたが、
一般企業ですらアクセス権限やアクセスログの管理が当たり前のこの時代に
あんなアナログなやり方はないだろう。


以上のような、細かな疑問がチラホラと頭をよぎってしまい
面白い作品なのにもうちょっとのところで集中できなかった。
本当に惜しい。

重箱の隅をつつくようにいろいろと書いてしまったが、
これも公式HPに「リアルに、シンプルに」というコンセプトが書いてあったからこそ。
できればもっともっと徹底的にこのコンセプトを追求してほしい。
それが達成できた上でこの作品を作れたならもっともっと良いものになったと思う。

今後に期待。
絶対ポテンシャルは持ってる集団。

P.S.
終盤まで主人公が基本あまり主張をせず、環境に振り回されるポジションだったため、
お客自身をこの主人公に置き換える狙いだったのかなぁと、ちょっと思った。
(ドラクエのように主人公の主張をなくしてプレイヤー自身にみせる、みたいな)
実際自分はそういうシンクロするような感覚に陥った。

もしこれを狙ってやっていたなら、ラストの主人公の
「発表のときはダンマリを決め込む」という決断はちょっと。。。
治すための研究を続けるためにって想いはわかるけど、
エイズウイルスベクターの安全性を立証できていない事実の隠蔽に手を貸すってことは
薬害で新たな患者を増やしてしまう可能性を無視するってことなわけで。
あまりに共感できない決断に、それまで主人公にシンクロしていた自分が
乱暴に引っぺがされた感覚があった。

あ、そんな狙いはないっていうならそれでいいっす。
個人的にそう感じただけなんで。


 


東京都カリスマイル
「トラウマニア」

2012/03/19更新  ≪八幡山ワーサルシアター≫ ≪東京都カリスマイル≫ ≪2012/03

東京都カリスマイル 「トラウマニア」 東京都カリスマイル 「トラウマニア」

東京都カリスマイル ワーサルシアター提携公演 「トラウマニア」

【作・演出】
平田侑也×東京都カリスマイル

【タイムテーブル】
2012年
14日(水)→19時30分
15日(木)→14時30分/19時30分
16日(金)→14時30分/19時30分
17日(土)→14時30分/19時30分
18日(日)→14時30分

【料金】
3200円(全席自由・日時指定)

【劇場】
八幡山ワーサルシアター

【出演】
中村まゆみ、橋本カムイ、志井しおり、繁森優、宮崎優美、海野亮平、
中田豪一、升ノゾミ(黒色綺譚カナリア派)、衛藤将展(俳協)、ひらたゆうや

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この東京都カリスマイルは、
「役者の魅力を前面に押し出す作品を目指す」をコンセプトに、
2011年11月11日11時11分に始動した集団だそうだ。

 脚本が良いねと言われても、
 演出が良いねと言われても、
 作品が良いねと言われても、
 嬉しいけれどに違うのです。
 私達は「あの役者が良かった」と言われてガッツポーズを繰り出せるのです。

これは当パンに書いてあった文章だが、
全体より「役者の個」を前面に押してくるのは非常に珍しい。
いま思うと芝居を観る前から、「興味深さ」という点ですでに引き込まれていたのかも。


芝居は小さなボロアパートの一室で展開される。
大きなヤバイ仕事を目前にして家に帰ってきたチンピラ・和馬、
結婚詐欺にあって人生の再スタートのため戻ってきた元住人・愛を中心にして、
いじめられっこ中学生、元チンピラ先輩、料理人を目指して留学するつもりの女性、
画家を目指すホームレス、借金取りから逃亡中のヅラ男とその娘などなど、
個性あふれる10人の人間が織り成す失敗ばかりのハートフルストーリー。
ざっくりいうとそんな感じのお話。


・・・圧巻だった。


当パンの言葉通り、とにかく役者が魅力的。
登場人物としてみても、役者としてみても。

みな不器用な人間でちょっと感性がずれていたりもするけれど、
各々が自分なりに一生懸命に生きている。
登場人物全員の心情が理解できるから共感し、応援したくなる。
現実にこんな集団がいるならば自分も混ざってみたいと素直に思えた。

役者としても演技力が高くて非常に素晴らしい集団だった。
見せ方を熟知した上でキッチリと自然に演じきっている。
これは主催の人を集める力なのだろう。


そして「役者の個」を押しているとのことだったが、
脚本や演出も間違いなく一級品だったと思う。
センスのいい会話の妙で何度も何度も客席を笑いの渦に巻き込んでいたし、
温かみのあるシーンではナチュラルにほっこりされられた。

あとそんな中にシュールに登場してくるトラウマの象徴。
これは上半身がトラ、下半身がウマになっていて
まるで劇団四季のキャッツのようなメイクをしたもの。
開始30秒でこれが無言で出てくるのは卑怯だろ(笑)
しかも途中で何の説明もなく2人になるし(笑)
ハイセンス過ぎて降参だYO!(;´Д`)ノシ


とにかくあらゆる面で非常にレベルの高い素敵な作品だった。
次も絶対観にいきたい。


 


相模舞台同盟 春興行2012
「SILVER」

2012/03/18更新  ≪ラゾーナ川崎プラザソル≫ ≪相模舞台同盟≫ ≪2012/03

相模舞台同盟 春興行2012 「SILVER」

相模舞台同盟 春興行2012 「SILVER」

作・演出:
實方誠一郎

キャスト:
谷生優子、柳沼慶樹、藤本ゆき乃、佐藤麻実、関根圭太、茂原純子、大畑美恩、
成瀬優子、片山賢人、田部裕士、渡邊真衣、遠藤正志、宮下真弥、小熊絢、鈴木勇太
長栄雄大、橋爪美智代、雨宮ゆりの

場所:
ラゾーナ川崎プラザソル

公演日時:
2012年
3月17日(土) 13:00 / 18:00
3月18日(日) 14:00

料金:
前売2500円 当日2800円

公式HP:
http://www.sagabu.com/

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おおまかなストーリーは
女海賊シルヴァーがいつものように海賊ブロンズのお宝を横取りすると
その宝箱の中には一人の女の子が入っていた。
じつはその女の子は海賊クリスティーナに乗っ取られた国から逃げ出してきた王女。
クリスティーナが乗っ取った国は銀の砂時計の呪いによって封印されていたのだが、
その呪いが解けてしまい、クリスティーナたちはまた悪事を働き始める。
それに立ち向かうシルヴァーたちと海軍たち。
そんな感じのお話だった。

歌ありダンスありアクションありのエンタメ舞台。
上演時間は途中休憩挟んで2時間半ちょっと。
お客の客層は演劇としてはかなり若く、固定ファンが多そうな雰囲気だった。

舞台装置は奥に6尺高の高台を作ってあってけっこう気合の入ったものだった。
あと映像投射用の幕が設置されており、キャスト紹介や場転演出などに使われていた。
照明はムービングなんかも導入されており音響演出も派手派手。
演出全体の雰囲気としては、ちょっとした新感線テイストって感じかな。


しかし開演して、ものの10分足らずでガクーン。(;´Д`)


開始直後の群集シーンで全くセリフが聞き取れないのだ。
芯の人間がしゃべっていても群集のガヤゼリフは収まらないし、足音もひどい。
しばらくの間いまいったい何のシーンなのか全く理解できなかった。
開始早々いきなり突き放されてしまった印象。

群集シーンが終わった後もちょっと厳しい展開。
メインを張っている役者たちの声量は小屋のサイズに比べてかなり小さく、
大した声量でもないのに叫び声のようなノドにかかった発声をしているので
滑舌が極めて悪くて全然セリフが届いてこなかった。

しかもかなりたくさん小ネタが挟まっているのだが、
ボケゼリフもツッコミゼリフも聞き取れないという、面白い面白くない以前の問題。
演出は稽古の段階で何度も前から見てるだろうに、この状況を何故放置しているのか?

ツッコミセンスがあるジョニー役、
客席を意識したセリフの投げ方ができていた現役元帥役と元・元帥役、
この3人の出番が増えてくる中盤以降は格段に見易くなって
ストーリーにも素直に引き込まれることができた。
序盤から彼らが引っ張るようなキャスティングだったら良かったなというのが正直な感想。

あと役者への個人攻撃みたいになってしまうのでこういった事を書くのは抵抗があるが、
最強の実力を誇るはずであるシルヴァー役の女性のアクション技術の低さ、
これだけはなんとかならなかったのだろうか?
盛り上がるはずのラストシーンで、劇中で一番クオリティの低い殺陣を見せられるのはキツイ。
アクションをウリにしている劇団のように思ったので、
そこだけは何があってもこだわってほしかった。


・・・いろいろ厳しいことを書いてしまったが、
ここは悪い集団ではない、惜しい集団なのだ。
発声や見せ方の意識などをほんの少し変えるだけで化けてくれる集団だと思っている。
名前、実力ともに神奈川を代表するエンタメ集団になってくれることを切に願う。

P.S.
土下座から逆立ちするネタは今年一番のツボだった


 


風雲かぼちゃの馬車 第10回本公演
「紀尾井坂のヘン!?」

2012/03/11更新  ≪下北沢 シアター711≫ ≪風雲かぼちゃの馬車≫ ≪2012/03

風雲かぼちゃの馬車 第10回本公演 「紀尾井坂のヘン!?」

風雲かぼちゃの馬車 第10回本公演 「紀尾井坂のヘン!?」

作: 重信臣聡
演出: 土井宏晃

【出演】
チーム「夜光雲」
菅本生、米澤良樹、高橋範行、村上亮、飯塚美花(A-LIGHT)、
小澤明充(劇団河童座)、村井彩子

チーム「彩雲」
凪達矢、堀浩隆、須佐光昭、宮内咲希子、江澤惇、
菊池幸利(VIMS)、工藤正平

両チーム共通
眞野基範、木村峻(STUDIO HeadZ)、鈴木舜・サムスン

【日時】
2012年3月
8日(木)14時〜「夜光雲」 19時〜「夜光雲」
9日(金)14時〜「彩雲」  19時〜「彩雲」
10日(土)14時〜「夜光雲」 19時〜「彩雲」
11日(日)13時〜「彩雲」  16時〜「夜光雲」

【場所】
下北沢 シアター711

【料金】
前売り/一般2500円、高校生以下1500円
当日/一般3000円、高校生以下2000円
両チーム観劇チケット/一般4000円、高校生以下2500円

【公式HP】
http://fuuunkabocha.yokochou.com/home.html

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普段は横浜のほうを拠点に活動している劇団。
今回が下北沢初進出なのかな?

客入れ中に開演前の諸注意が始まったのだが、
なんと出演者全員が出てきて「諸注意の歌」的なものを踊りながらの大合唱!

観客には昔からの劇団のファンや出演者の知り合いが多かったようでウケていたが、
個人的にはいきなりのテンションの高さにちょっと引いてしまった(汗)
711の狭い空間に十数人出てきて踊り狂っている姿はたしかに圧巻だったが(笑)
(しかも元曲は嵐の「Love so sweet」)

そして本編へ。

ストーリーはタイトル通り「紀尾井坂の変」をモチーフにしていて、
西郷隆盛を死に追いやった大久保利通を討つべく
島田一郎たちが士族らを率いて立ち上がる。
しかし人間の大きな大久保は彼らを難なくいなし、
逆に暗殺者としての彼らにレクチャーまで施す始末。
その中で島田たちは大久保の人間性を知っていく・・・。
って感じの流れになっていた。


舞台はほぼ素舞台。
奥に立てられたパネルにはバックライトが埋め込まれていて、
照明を派手に見せることにこだわった作りになっていた。

狭い舞台上を走り回る役者、必要以上に張ってまくし立てるようなセリフの掛け合い、
シーン展開の早さ、バカでかい音レベルと派手な照明。
開始1分ぐらいで気付いた。

あ、この演出、つかこうへいリスペクトだ!

最近ではこれ系の演出はなかなかお目にかかれないので
なんだか懐かしさでほっこりした気持ちになった。
好きだったなぁ、こういうの。

脚本自体もつかさんが書きそうなテイストのものだった。
足早に展開してガンガン回想挟んで、そして歌って踊って戦って。
つかこうへいLOVE具合がひしひしと伝わってくる芝居だね。

あと要所要所で熱海殺人事件に似ている気がした。
木村伝兵衛→大久保利通、刑事→島田一郎、みたいな。
キャラクターやその関係性に共通項がチラホラ。
脚本は意識して書いたのだろうか?
それともたまたま?


ただ気になってしまったのは、やはり役者の技量。
早口で張ったセリフを投げ合うのは非常に高いスキルを要する。
どうしてもセリフにいっぱいいっぱいになってしまい、細かい感情が乗せられないのだ。

出来ている人は残念ながら少数で、セリフを一生懸命がなっているだけの人のほうが多かった。
なので出来ていない人だけの会話シーンはちょっと見ているのがキツかった。
そもそも何言ってるのか聞き取ることもできない人もいたし。

あと音レベルはさすがにデカ過ぎかな。
劇場の床までビリビリ震える重低音はさすがに鼓膜にとって苦痛の域に。
重低音だけでももう少し抑えてほしかった。


全体的にみたら自分は楽しめた。
しょっちゅう見るのは疲れるが、たまに見たくなる演出。
次はKAATのような大きなハコでやるらしいのでこれにも期待したい。


・・・個人的に気になったのだが、
つかこうへい作品に全く触れていないであろう若い世代に
この作品はいったいどういう風に映るのだろうか?
「早口で声量でか過ぎ」「展開早すぎて何やってるのかわかんなかった」
「なんかパワフルだった」「とりあえず激しかった」
こういう感想がアンケートに並んでしまうのだろうか。

つかさんを知らない世代の率直な感想を聞いてみたいと思った。


 


CAP企画vol.5
「A-15〜アイゴ〜」

2012/03/08更新  ≪中野MOMO≫ ≪CAP企画≫ ≪2012/03

CAP企画vol.5 「A-15〜アイゴ〜」 CAP企画vol.5 「A-15〜アイゴ〜」

CAP企画vol.5 「A-15〜アイゴ〜」

脚本・演出:
鄭光誠

出演:
金恵玲、安岡和弘、森田兼史、中山佑太、保土田充、西山聖了、吹上かずき
北川宏美、相原えみり、佐藤衣里子、木原梨里子、栗林真弓、川田友紀、
西本桃、小関佳奈子、パク・チュンソン

公演日時:
2012年2月28日(火)〜3月11日(日)

チケット料金:
前売3,200円、当日3,500円(全席指定席)

場所:
中野MOMO

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ストーリーをざっくり書くと、
一流企業を辞めてフリーター生活してる主人公、劇団の座長、韓国留学生、
バツイチのスナック経営の女性などの個性的な人間が住んでいるシェアハウス。
そこに在日の女の子が新たに引っ越してくる。
各々が家族関係、差別、劇団の運営などについていろんな事情と想いを抱えており、
それに悩みつつも自分のあるべき姿を見つけていく。
まぁ、そんな感じのお話だった。


ストーリー自体はよくあるベタなお話。
これに似たような作品はドラマでも舞台でもたくさん観てきた。
ああ、このパターンの話かって感じで飽食気味に感じる部分もちょっとあった。

しかし見せ方が非常に良く出来ていてとても入り込みやすい。
音も、光もとても心地よいタイミングで入ってくるし、
会話シーンもテンポの取り方が上手くて、聞きやすく飽きにくい。
これは演出の力だろうか。

大人数がパーティーで騒ぎまくってるシーンでもフォーカスが散らからず、
舞台のどこを見ていいのかちゃんとこちらに暗黙的に伝えてくる。
役者全員がちゃんと「いま現在あるべきフォーカス」を理解しているんだろう。
大人数シーンでこれができるかできないか、それでその集団の地力がわかる。

印象に残ったのはフリーターの主人公と在日のヒロイン。
笑って、怒って、泣いて、そして成長していく。
とてつもなく人間臭く。

私は、芝居において演技が上手いかどうかっていうのはもちろん大事な要素だが
お客にとって単に魅力的な人間に映るかどうかっていう要素も同じぐらい大事だと思っている。

ほかのキャストもそうなのだが、この二人はとくに人間的な部分で魅力的に感じることができた。
そんな魅力的な人達が思い悩み、葛藤するからこそ見ているこちらも共感し、感動する。
この芝居の主軸として二人の存在はかなり大きかった。
おかげで非常に楽しめる作品だったと思う。


ただ気になったのは窃盗団の存在。
ストーリー的に必要性が全くないように思ってしまったのだが・・・。

窃盗団が忍び込んだことでシェアハウスの人間関係に何か影響があったわけでもないし、
かなり小ネタに走っていたせいで全体の中で浮いてしまっている印象もあるし。
意図的に笑いのアクセントとして入れているのであったなら
もっとガッツリ笑いをさらっていってほしかった(滑るかややウケしかなかった)。

しかも、主人公達のこれぞという感動できるラストシーンが終わり、
いい音楽が入ってこのまま暗転して終わるのかな、って流れでまさかの窃盗団シーン。
それもシェアハウスに忍び込んで見つかって逮捕されるまでというそこそこの長尺で。
そしてエンディングへ。

何故この順番にした(笑)(笑)
これシーンの順番逆にしたほうが良かったのでは。

あ、あとなんで「A-15〜アイゴ〜」ってタイトルにしたんだろう?
シェアハウスの名前がA-15(通称アイゴ)なのだが、あまり劇中では触れられず。
別に『そのお芝居の内容を総括したタイトルをつけるべきだ!』なんて固いことは言わないが、
あまりにアイゴってワードが劇中で印象にないので、なんだかなぁと思ってしまった。

そのへんが気になった以外は完成度の高い、良い舞台だったと思う。
CAP企画、今後も気にしてみよう。


 


第4回川崎インキュベーター合同公演
「ハイパーアトラス」

2012/03/02更新  ≪ラゾーナ川崎プラザソル≫ ≪川崎インキュベーター≫ ≪2012/03

第4回川崎インキュベーター合同公演 「ハイパーアトラス」 第4回川崎インキュベーター合同公演 「ハイパーアトラス」

第4回川崎インキュベーター合同公演「ハイパーアトラス」

<脚本>
河田唱子(へらへら眼鏡)

<構成・演出>
笹浦暢大(うなぎ計画)

<キャスト>
綾水月夜(Voice Dream)、安藤友美、石戸サダヨシ(劇団宇宙キャンパス/Re:Play)、
伊藤綾佳、伊藤優希(浅草たいこばん)、大山武史、岡朝子、蔵重智(ライト・トラップ)、
斉藤慎介、三枝ゆきの、佐藤みつよ(劇団夢幻)、里見駿、宍戸麻衣、
島貫晶江(猫と金魚)、清水智未(プロダクション・エース)、須藤旭、田辺敬太、
田原慎太郎、辻創太郎、ナラハナミ(劇団夢幻)、根生夏美(メインキャスト)、
ひとみまさこ、深尾尚男(企てプロジェクト)、藤井雅貴、布施晃、古川結衣、増渕清美、
三木美毅(47ENGINE)、三森伸子、南ちえみ、森田竜介、柳田清孝、
吉永麻美(19'プロデュース)、龍谷真紀子(U-studio ミュージック)、高島正典

ゲスト出演:
桑野東萌・・・・・1日、2日
井上麻里奈(シグマ・セブン)・・・3日
森澤碧音(ダンスカンパニーMKMDC)・・・4日

<日程>
2012年3月1日(木)〜3月4日(日)
1日(木)19:00
2日(金)14:00/19:00
3日(土)14:00/19:00
4日(日)14:00/18:30

<会場>
ラゾーナ川崎プラザソル

<チケット料金>
☆一般
前売 2,800円
当日 3,000円
☆中高生及び65歳以上(要証明書)
前売 1,500円
当日 1,800円
☆地域住民割引(要証明書)
川崎市民割 500円引き(割引併用不可)

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川崎を舞台にしたSFファンタジー。
総勢35名の出演者が入り乱れる2時間15分のお芝居。

ストーリーはざっくり言うと、
人々はドームで隔離された世界で統治されていて、
ネガティブ感情を吸い出すディスポーザーという機械によって
治安を守っている警官隊的な存在(ハイパーアトラス隊)が活動中。
でもその部隊の隊長(主人公)は外の世界での自由を熱望している。
突如「感情が実体化した化け物」が現れだしたことをきっかけに、
隊員や研究者、統治者、外への希望を持つ人間達の思惑が入り乱れて、
大きな惨事へと発展していってしまう。
そんな感じのお話。


舞台装置は高低差があってハケ口も多彩でおもしろい作りをしている。
音響照明はこのハコは機材そのものが充実しているし、
その使い方も非常に巧くて見ていて気持ちがいい。

役者はいろんなところから集まっているようで、
かなり手馴れた役者から、あらら初舞台なのかなって人、
この人どーみても普通の主婦だろって人まで様々だった。
なので役者個人のレベル差はかなり大きかった。


うーん、なんて評価のしづらい舞台だ(汗)

制作側はこの公演について、いったいどれを目指しているんだろう?
地域密着市民参加演劇?
それともプロフェッショナルな芸術作品?

多人数でのめまぐるしいアクションシーンが非常に多い、
独自の専門用語や設定がたくさん飛び交うお話、
数多い登場人物の名前と関係性をしっかり拾っていかないと話が全然わからなくなる、
などの点で、お客の年齢層の間口が狭いように思う。
これは市民演劇として見たときに大きなマイナス要素。

出演者は来るもの拒まずだそうで、そのおかげでやはり演技力の低い役者が目立つ。
登場人物が35人と非常に多く、それぞれにそれなりのピックアップシーンが作られているので
ストーリー全体が広く浅くなってしまっている。
それ故重要人物の心情をしっかり描くシーンが少なくて、いまいちどのキャラにも共感しづらい。
その結果、感動できるはずのシーンでいまいちグッっとこない。
こういった点はプロフェッショナルな芸術作品としては大きなマイナス要素。

地域密着型市民演劇をやりながらもプロフェッショナルな作品を目指そうとしているのかな。
盛り込まれていたアクション、ダンスなんかも含めてそうなのだが、
やりたいこと全てを盛り込もうとして全体としてまとまりきらず、
「どういった人に対してどういった見せ方をしたいのか」のピントが定まってない印象を受けた。

隔離された世界、感情を吸い取る機械、感情が実体化した化け物(通称:感情ゴミ)など、
設定的には十分におもしろいものを感じるし、
実際に非常に魅力的に感じるシーンも多数あった。
個人的には登場人物をもっと絞った、心情の掘り下げの深い作品として見てみたかったな。

たぶん、いろんな大人の事情があったんだろうけどもね。
そういった大人の事情をできる限り排除した、まったく違う形での再演を希望したい。


 

◎日々是劇評

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