日々是劇評

関東圏内で観劇した舞台について率直に感想を書いています。
自分用の備忘録みたいなもんなんで遠慮なく辛口な批評もしています。

絞り込み 記事更新日=「2013/03」

劇団IQ5000 「Big Bell」  @中野ウエストエンド 2013/03/13
劇団IQ5000 「Mr.VeryGoodMan」  @中野ウエストエンド 2013/03/12
第5回川崎インキュベーター合同公演 「ブルーシートチルドレン」  @ラゾーナ川崎プラザソル 2013/03/11
開幕ペナントレース 「グレコローマンの休日 SEASON 2」  @アサヒ・アートスクエア 2013/03/06
KanikusoPRESENTSオムニバス公演#2 「秋のき、冬のゆ。」  @上野ストアハウス 2013/03/05
カプセル兵団 「DUST SHOOTERS 〜ダストシューターズ〜」  @笹塚ファクトリー 2013/03/03

※本文中に激しくネタバレ含みます!
 上演中の公演についてこれから観劇予定の方は閲覧ご遠慮ください。


劇団IQ5000
「Big Bell」

2013/03/13更新  ≪中野ウエストエンド≫ ≪劇団IQ5000≫ ≪2013/03

劇団IQ5000 「Big Bell」

劇団IQ5000 「Big Bell」

【作・演出】
腹筋善之介

【キャスト】
腹筋善之介

【日程】
2013年3月8日(金)〜3月10日(日)

【会場】
中野ウエストエンド

【料金】
前売 3,500円
当日 3,700円

【公式HP】
http://www.iq5000.com

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劇団IQ5000の劇団員全員が出演している「Mr.VeryGoodMan」とは別に
同じ週で上演される「Big Bell」は、腹筋善之介の1人芝居。
1人で200を越える登場人物を全て演じきる。

舞台は「Mr.VeryGoodMan」と同じクラウド・アイランドで、時は100年前。
まだこの島が無人島だった頃、1人の男が流れ着く。
彼の名前はビッグベル、海賊との争いの中で海に落とされてここに漂着したのだった。
記憶を失った彼は孤独に悩み、1人で空想のペットなどを作って時を過ごしていた。

その後次々に新しく人々が漂流し、それを保護していくうちにひとつの街が形成される。
それなりの暮らしができるまでに街が発展したとき、島は海賊の脅威にさらされる。
ビッグベルは仲間たちと策を練ってその海賊の撃退する。


あらすじ的には大体こんな感じ。

1時間40分の1人芝居で、パワフルかつスピーディーに話が展開していく。
その熱量は半端なく、お客をたった1人で引きこみ続けるその力は素晴らしい。
そのぶん消費カロリーも半端なく、開始10分で腹筋氏はすでに汗だくだく。
話によると1本やると体重が5kg落ちるらしい。
あながち冗談ではないなと思った(笑)


でも主軸の話は、全体の上演時間の中で約4割程度。
残り6割は、暖流と寒流の野球対決から分身魔球攻略回想シーン、女将さんと板前さんの絡み、
戦闘機1号、2号、3号、源氏ガニと平家ガニの戦いなど、
完全に本筋から脱線したネタオンパレードの時間だった。
まぁ、普通に考えたらふざけすぎと言われてもしかたがない。

しかしそのバカバカしさが突き抜け過ぎていて、とにかく圧巻なのだ。
型をしっかり持っている人間の「型破り」は観ていて本当に楽しい。
演出的スキル、役者的スキル、どちらも最上級のパフォーマンスであった。


惑星ピスタチオ出身でいまでも活躍している役者は非常に多い。
いつまでも彼らには現役で最上級のパフォーマンスを提示し続けてもらいたいものだ。


 


劇団IQ5000
「Mr.VeryGoodMan」

2013/03/12更新  ≪中野ウエストエンド≫ ≪劇団IQ5000≫ ≪2013/03

劇団IQ5000 「Mr.VeryGoodMan」

劇団IQ5000 「Mr.VeryGoodMan」

【作・演出】
 腹筋善之介

【キャスト】
朝田博之、アフリカン寺越、五十嵐聡子、大友美香子、久保田寛子、坂本泰久、佐治彩子、
ドン・タクヤ、巴里マリエ、べっち。、マット前転、渡部愛、大西俊貴(IsLand☆12)、
奥田美樹(IsLand☆12)、上高原佳子(IsLand☆12)、腹筋善之介 

【日程】
2013年3月6日(水)〜3月10日(日) 

【会場】
中野ウエストエンド

【料金】
前売 3,000円
当日 3,200円
学生 1,500円(前売・当日共)

【公式HP】 
http://www.iq5000.com

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クラウド・アイランドという世間から隔離された離島での物語。
海流で完全に外界から遮断されたその島では
心豊かな人々が、食や音楽を育みながら平和に暮らしていた。

ミスター・ベリー・グッドマンと呼ばれる男もその1人。
彼は誰よりも優しく、誰よりも島を愛しており、
島の人々もそんな彼を愛していた。

しかし1人の男が島に漂着してから状況が一変してしまう。
ドンという名のその男は実は海賊で、
島に石ころのように転がっているダイヤの原石を狙ってやってきたのだった。
ドンは邪魔な存在であるベリー・グッドマンを陥れ、孤立させる。
そして甘い言葉で島民をだまして島の外へ連れ出そうとする。

ドンの企みに気付いたベリー・グッドマンは街の人々を守るべくその体を張って・・・


といった感じのお話だった。


開演前には作・演出の腹筋善之介が島のDJとして舞台に立ち、
ラジオ放送のワンコーナーという設定でトークを繰り広げている。
そのトーク力はさすがで、開演前にキッチリと客席を温めてることに成功していた。
この空気からスタートできるのは演者にとってかなり嬉しいことだろう。


最初は島の人間の自己紹介も兼ねた、
ヘビメタバンドとベリー・グッドマンの対決シーン。

しかし叫び・がなり系の発声をする役者が多くてセリフがかなり聞き取りづらかった。
せっかく客席が温まった状況からスタートしてるのにこれはもったいない。
ストーリの導入部はもっと丁寧にやってほしいなと思った。


中盤にかかるとシーンが落ち着いてきたこともあって格段に見やすくなり、
物語に一気に引きこまれていった。

この団体は素舞台で小道具も使用せずに
全て役者の身体やそのフォーメーションで表現するのがウリなのだが、
いま思うと、序盤はその怒涛のように繰り広げられる表現に
自分の脳がついていけていなかったのかもしれない。
中盤ぐらいから見やすくなったのは、その表現を脳内変換することに馴れていったからなのかも。

わかりやすいけどそれでいて伏線たっぷりの脚本は非常に面白い。
登場人物も、とにかくみんなアホなのだが、みんなそれ以上に魅力的だった。
彼らが一生懸命になっている姿は観ているお客の心を揺り動かし、
自然と応援したくなる気持ちにさせてくれる。

あとは音楽の使い方も秀逸だったと思う。
無駄にたくさんの曲を用意せず、メインテーマ数曲を繰り返し使用することによって、
お客の脳に対して、そのシーンのテンションの在り方の刷り込みができているのだ。
後半はベリー・グッドマンのテーマがかかるたびに心が躍っていたのは自分だけではないと思う。


最後もほっこりとした気持ちで終われる温かい結末だった。
終演時にお客をこういう気持ちにさせるってのは大事なこと。

次回公演も楽しみにしたい。


P.S.
あ、ひとつ気になったのだが、劇中に捨てギャグが多かったこと。
つまらないとかスベッてるとかそういうのじゃなくて、
「最初から笑わせる気がなさそうなネタ」がちょこちょこ目についた。
これってどういう意図で入れてるんだろうか?


 


第5回川崎インキュベーター合同公演
「ブルーシートチルドレン」

2013/03/11更新  ≪ラゾーナ川崎プラザソル≫ ≪川崎インキュベーター≫ ≪2013/03

第5回川崎インキュベーター合同公演 「ブルーシートチルドレン」 第5回川崎インキュベーター合同公演 「ブルーシートチルドレン」

第5回川崎インキュベーター合同公演 「ブルーシートチルドレン」

【脚本】
河田唱子

【構成・演出】
笹浦暢大

【キャスト】
安藤友美、石井隆平、伊藤綾佳、伊藤優希(活人無双流 阿部道場 清龍館)、
梅岡寛正(劇団カンタービレ)、小山内詩音、小野諒人、鹿島夕雨生(劇団夢幻)、
木ノ下郁子、蔵重智(ライト・トラップ)、小林恵悟、佐藤みつよ(劇団夢幻)、
下宮悠(社団法人日本喜劇人協会)、田原慎太郎、天藤旭(メインキャスト)、
永塚拓馬、ナラハナミ(劇団夢幻)、成川友里子(チームトリプルY)、
林充晃(流星揚羽)、原尚治、比嘉哲也、ひとみまさこ、布施晃、
古川結衣(うっちゃり公演ほかす)、松崎夢乃、三木美毅(ミキミキ・コネクション)、
三森伸子、峯野友莉子(ワタナベエンターテイメントカレッジ)、
森田竜介(LINKentertainment)、柳田清孝、吉永麻美(19'プロデュース)、
和世レオ

【日替わりゲスト】
山崎涼子(Aling)、齋藤花恵
乾直樹、白髭真二、
福士綾弓、鈴木絢香(Dance Company MKMDC)

【日程】
2013年3月8日(木)〜3月10日(日)

【会場】
ラゾーナ川崎プラザソル

【チケット料金】
前売・当日 3,000円
高校生以下及び65歳以上 2,000円
川崎市民割 2,500円
川崎インキュベーター会員割  2,500円

【公式ブログ】
http://blogs.yahoo.co.jp/siminngeki

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架空の川崎市を舞台にしたSFモノ。

「全ての市民は演劇の義務を負う」
「市の指定台本以外は上演不可」
「市民の演劇指導には特別高等警察が指導に当たる」
という条例を10年前に課せられた川崎市民。

条例制定時から活動を続けていた劇団ワタリダロケットだが、
オリジナルの台本でやりたいことを主張した看板女優が警察に捕まり、
劇団はボロボロになってしまう。
しかしなんとか公演をやり遂げるために劇団の脚本家と演出家は、
市民登録されていない難民、通称「ブルーシートチルドレン」を劇団に引き入れ、
公演に向けて稽古に励むことになる。

そして公演本番。
捕らわれ洗脳されてしまった看板女優を助けるべく
劇団ワタリダロケットは本来の脚本を書き換えて公演に臨む。
そのとき洗脳失敗により怒りの感情が増幅してしまった演劇指導官が暴走、
看板女優を連れて逃走する。
しかしその指導官の上官がそれを阻止し、劇団も市を出て活動していくことになり、
その後看板女優も洗脳から回復してハッピーエンド。


超ざっくり過ぎて怒られそうだが、だいたいこんな感じのあらすじだ。


去年もこの企画の公演を観ているが、
相変わらず照明の充実っぷりは素晴らしい。
使用されている灯体の数はハンパないし、
どうでもいいような小ネタなんかにもムービングを使用するという贅沢さ。
派手だし、その使い方のセンスも良いと思う。

音響は選曲センスは良いが、
殴り音などのSEがちょっとこもっている聞こえ方をしていて、コントっぽいかな。
いかにも「殴っているのでお決まりの効果音出してます」って感じに
なってしまっていたのが残念。

ダンスの使いどころや挿入の仕方も上手くて、
演出的な部分では十分過ぎるクオリティの作品だったと思う。


しかし演出手法に「おおっ」と感心する部分はあっても、
作品が面白かったか、面白くなかったで聞かれると、
それは後者だと答えざるを得ない。


どうしても脚本が好きになれなかったのだ。


何が気に入らなかったかというと、
登場人物たちに全く共感できなかったこと、これに尽きる。


まず設定の「演劇を市民に強要する」という条例だが、
それによって市民がどう良くなってどう悪くなったのかが
イマイチこちらに伝わってこないのだ。

「それってどれぐらい辛いことなの?」
「その条例で彼らはどんな不幸をこうむったの?」

このへんがぼんやりし過ぎている。
その条例によって人々がどういう状況になったのかが見えないため、
条例に抗う人々の想いがわからず、
それに共感しづらくて感情移入ができない。

「指定台本しか上演できない」という条例も同じ。
劇中の会話からすると指定台本でもかなり脚色が認められているようだし、
この条例が自由を迫害しているという感がいま一歩少ないため、
これも抗う人々の想いに共感しづらい。


しかもこの条例、所詮は市が決めた条例なので、
さっさとほかの市に引っ越せば問題ないのでは?、と思ってしまった。
表現の自由を求めるなら、自由がない土地で10年もがんばらなくてもいいじゃん(汗)
実際ラストも劇団は他の土地でやっていこうってエンディングだし。
最初からそうすればいいのに・・・。


ほかにツッコミどころを挙げると、
橋の下で過ごすブルーシートチルドレン達が
街で噂になるようなすごい演じ手っていうのもよくわからない。
生きていくために窃盗や詐欺を繰り返す貧しい孤児がなんで演技を?
彼らは演劇条例とか関係ない生き方してるはずなのでは?

まわりくどい条例を押し付けてきた市長の目的・動機もうーん、って感じだし、
洗脳装置「ブレインシェイカー」の存在意義もいまいちピンとこない。

洗脳失敗で暴走した指導官の行動の意味もよくわからない。
怒りの歯止めが利かなくなって、それで何の意図で看板女優連れて逃走したの?
ラストシーンを緊迫させて盛り上げるためだけに暴走させて
ラスボス化させたのかなって印象。

ブルーシートチルドレンから上納金を巻き上げていた男も、
金ヅルを奪われたことで警官に刃まで向ける意図が理解できない。


とにかく登場人物各々の行動動機(それが善であれ悪であれ)が
理解できないために、彼らがどんなに良い台詞を感情込めて吐いたところで
まったくこちらの心が揺さぶられないのだ。
これは脚本としてかなり痛いポイントだと思う。
(行動動機が比較的シンプルでのびのびと生きているブルーシートチルドレン達や
 NPO、川辺の警官達には好感を持てたが)


あと暴力的な表現が多いのが気になった。
強者が弱者を一方的に殴ったり、罵声を浴びせたり、屈辱を味わわせたり。
この公演の趣旨をみる限りではお客は老若男女の幅広いライトな層が多いはずだ。
その層に観せる芝居としては、いささか乱暴な表現・演出が多過ぎたように思える。

特に気になったのが、看板女優役の女の子が顔を足で踏まれるシーン。
リアルに踏まれてたように見えたが・・・。
やるほうは「リアルを追求した役者根性の見せ所」と思うのかもしれないが、
お客に「あの人の役者根性すごいなぁ」と思わせた時点で、芝居は失敗だろう。
そのときお客はその人を「物語の登場人物」でなく、
「頑張ってる役者」としてしか見ていない。
あ、これは脚本じゃなく演出的な部分か。


うーん、

全体的にみると、物語の設定と展開だけに目がいってしまい、
「お客の心情をどうコントロールしていくか」という配慮に欠けた脚本だったように感じた。
ここでお客に状況を理解させ、しばらく緊張させて、一瞬だけ緩めて、
急に引っ張って、パターンを刷り込んだと思ったら裏切って・・・といった感じで、
お客の心を縦にも横にも揺さぶる仕掛けを計算高く入れてこそ、
初めて面白い脚本が完成すると自分は思っている。


いろいろ書いたが、良い部分もちゃんと持っている作品。
誰でも出演可能として演劇作品に参加する敷居を下げながらも、
ちゃんと質を追求する姿勢はみせている企画。
期待値が高いからこそ、こうしていろいろ書きたくなる。

次の作品に期待する。


 


開幕ペナントレース
「グレコローマンの休日 SEASON 2」

2013/03/06更新  ≪アサヒ・アートスクエア≫ ≪開幕ペナントレース≫ ≪2013/03

開幕ペナントレース 「グレコローマンの休日 SEASON 2」 開幕ペナントレース 「グレコローマンの休日 SEASON 2」

開幕ペナントレース 「グレコローマンの休日 SEASON 2」

【作・演出】
村井雄

【キャスト】
高.ok.a.崎拓郎、大窪寧々、G.K.Masayuki、村井雄、
岩☆ロック、富田遊右紀、秋山慎治、浅川仁志、
田中文彬、山下修吾、山田マサル

【日程】
2013年2月28日(木)〜3月3日(日)

【会場】
アサヒ・アートスクエア

【チケット料金】
前売 3,300円
当日 3,800円

【公式HP】
http://www.kaimakup.com/jp/

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ローマの休日をパロディにしたシュールコント作品。
レスリングのコスチュームをまとった10人ほどの筋肉質の男が
次々と摩訶不思議な世界観を表現する。


アサヒ・アートスクエアの中に丸いリングを1つ設置し、
役者はそのリング上に限らず、舞台下やキャットウォークを走り回って
多角的にパフォーマンスをしていた。

場内では常にスタッフがカメラを回していて、
その映像をリアルタイムで大きなモニターに表示。

客席などはとくに設置されておらず、
リングの下で自由に立ち見って感じのスタイル。


内容はかなりシュールだった。

金曜ロードショーのテーマを傘をラッパ代わりに口ジャミで歌い、
赤い鎧の武者がDJやったり、
大量のコインを投げつけられながら長い説明台詞を語り、
イスの上でだるまさんが転んだ的なことをしたり、
人間で列車を表現していちご狩りに出かけたり。

テーマや意味を考えてはいけない、
ただ頭をバカにして、目に映るものを感覚的に楽しむ、
そういう感じの作品。


別にそういう方向性自体はいいと思う。
エンタメに重々しいテーマは必要条件ではない。
ただ、それならちゃんと笑えるものをやってほしかった。

全体的にみんなで激しい動きをしながら叫ぶ、パワー押しのネタが多くて、
正直ネタとして面白いかと言われれば、そうでないものが大半だった。
ギャーギャー叫んで暴れて走り回って、
やってるほうはアドレナリンが出ていて楽しいかもしれないが、
見ているこっちは逆に冷めてしまう。

あとシーンが展開しなさ過ぎ。
同じネタ、同じ動きに長い尺を取り過ぎていて、見てるほうは飽きてしまう。
20秒で済ませれば面白かった動きを2分も3分も変化なく続けるからスベるのだ。
ネタをしつこくしつこく引っ張って、引っ張った先にとくにオチもなし。
これでは笑いたくても笑いようがない。


意味やテーマを持たないシュールな芝居は、
一見楽なようだが、非常に難しい。
なにせ「意味やテーマの提示」という一つ表現手法を封じるということなのだ。

この路線で続けていくならば、
「こういう演劇もたまにはアリだよね?」ではなく、
「これが本当の演劇の形だ!」と思わせるような、
その最上級の作品を追求してほしい。


 


KanikusoPRESENTSオムニバス公演#2
「秋のき、冬のゆ。」

2013/03/05更新  ≪上野ストアハウス≫ ≪Kanikuso≫ ≪2013/03

KanikusoPRESENTSオムニバス公演#2 「秋のき、冬のゆ。」 KanikusoPRESENTSオムニバス公演#2 「秋のき、冬のゆ。」

kanikusoPRESENTSオムニバス公演#2 「秋のき、冬のゆ。」

【作・演出】
迫田元

【キャスト】
谷村好一(エムアール)、永野和宏(劇団新人会)、賢茂エイジ(さるしげろっく)、
今若孝浩、小島啓寿、串山麻衣、天晴一之丞(水色革命)、太田勝(猿芝居)、
藤井紅葉(映像。舞台企画集団ハルベリー)、里中あや(ナインズプロモーション)、
戸草内淳基(加速装置)、神崎ゆい、瑞樹カンナ、小林知未(多少婦人)、
渡辺祐未(立花演劇研究所)

【日程】
2013年2月27日(水)〜3月3日(日) 

【会場】
上野ストアハウス

【チケット料金】
前売 3,000円
当日 3,200円

【公式HP】
http://www.kanikuso.net/

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オムニバス2本立てで、
両方とも面白おかしく仕立てたドタバタコメディ。

1本目はとある会社の面接会場。
極度の緊張症の男、銀座のママ、滑舌が悪い成金男、真面目な姉妹などが
面接官が投げかける素行調査のような質問に応えていき、
マイナス査定の人間は強制的に別室に連れて行かれる。
劇中でほとんどお客には設定の説明がないが、
ラストシーンで、実は事故に巻き込まれて生死の境を彷徨っている人の面接で、
合格であれば生の世界に帰れるというものだったことがわかる。

2本目は1本目の会社の別室のお話。
そこは会議室で、次の大きな案件のプランについての話し合いがされている。
レッドプランとブループラン、どっちにするか決断を迫られるが、
優柔不断の社長はまったく決められず、皆やきもきする。

途中で案件を引き受けること自体のリスクが判明し、
社員達は皆その案件を断る方向で進めるよう社長に勧めるが、
普段は優柔不断な社長がそれだけは頑なに拒否。
実はその案件のクライアントは社長の娘だった。
社長の想いを知った社員は一致団結してその案件に取り組む。


超ざっくりだが、だいたいあらすじはこんな感じ。


1本目は見ていてちょっと暑苦しかったかな。
全体的に役者が狙い過ぎている感が出ていて、逆に笑えなくなってしまっていた。
登場人物として真面目に面白いことをしないとコメディは成立しない。
バラエティ番組のひな壇芸人みたいな安いボケとツッコミは舞台ではやってほしくない。

あと最初に面接を受けていた3人、ちょっとバランスが悪過ぎると思う。
緊張でドモって上手くしゃべれないキャラと滑舌が悪くて聞き取れないキャラが同時に出てくるってのは、
ネタ的には殺し合ってるだけだし、シーンのテンポが極端に悪くなる。
銀座のママは何の色もついていなくて、正直この脚本上での存在意義がわからないし。
お客の心を掴む導入部分でこの組み合わせはなんだかなぁと思った。

さらに話の構成に起伏がない。
5人面接して、それぞれ個性的なキャラをみせて、実はこの面接の正体はこんなでした、って
ただそれだけの展開しかしないので、話の盛り上がりがほとんどないのだ。
淡々と順番に小ネタ混ぜながら面接シーンみせてもお客的には見ていて何もワクワクしない。
もうちょっと構成面、なんとかならなかったものか。


次に2本目。
逆にこの2本目はびっくりするぐらいに秀逸だった。

まず役者の力量が圧倒的にこちらのほうが上だし、
テキストそのものもかなり面白い。
どこまでが脚本で、どこまでが役者が提示したものなのかわからないが、
非常にテンポが良くて質の高いネタの応酬は見ていて気持ちがいいものだ。
お笑いをちゃんとわかってる人がしっかり作った芝居って感じ。

特に谷村好一演じる社長のおじいちゃん的なおもしろ可愛さは素晴らしい。
天晴一之丞の特異なルックスと濃いキャラクターには常に目を奪われるし、
太田勝のつっこみのトーンも非常に面白い(つっこみは声質が重要な要素だと思っているので)。

笑わせるだけ笑わせておいて、
最後にレッドとブルーが何を意味するかわかるところでお客をほっこりさせる。
とても素敵な家族愛溢れるお芝居だった。


この2本立てのオムニバス公演。
おそらくこの2本目がやりたくて、1本目を後から伏線として作り上げたのだと思われる。
そのせいで1本目は一貫したテーマが見えない、笑いに走っただけのコントになってしまったのではないだろうか。
要素の詰め込みはもちろんよくないが、1本目にも十分にお客の心を揺さぶるテーマを盛り込んでほしかった。

しかし2本目は本当に素晴らしい出来だったと思う。
人材を集める力もあるようだし、これからにも期待したい。


 


カプセル兵団
「DUST SHOOTERS 〜ダストシューターズ〜」

2013/03/03更新  ≪笹塚ファクトリー≫ ≪カプセル兵団≫ ≪2013/03

カプセル兵団 「DUST SHOOTERS 〜ダストシューターズ〜」

カプセル兵団 「DUST SHOOTERS 〜ダストシューターズ〜」

【作・演出】
吉久直志

【キャスト】
吉久直志、長沢美樹(劇団ヘロヘロQカムパニー/アトミックモンキー)、周晴奈、
北出浩二(teamSPITFIRE)、こぶしのぶゆき(賢プロダクション)、青木清四郎、
遠藤公太朗、林智子(劇団ヘロヘロQカムパニー)、石神まゆみ、片山健(aflowtroupe〜空〜)、
林潔、瀬谷和弘、工藤沙緒梨、庄章子、小林美穂、中山泰香、矢島慎之介、
森澤碧音(DancecompanyMKMDC)、松岡美那、水野菜月、松本一平(ツラヌキ怪賊団)、
神里まつり、鶴家一仁、浦濱里奈、蓮岡沙羅

【日程】
2013年2月28日(木)〜3月3日(日)

【会場】
笹塚ファクトリー

【チケット料金】
前売 3500円
当日 3,800円
※平日マチネは500円引き
※学生は1,000円引き

【公式HP】
http://www.kapselheidan.com/

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宇宙を駆ける賞金稼ぎダストシューター3人組。

政府の軍艦からの救援信号を受けてその救助にいってみるが、
船内で現れたのは銀色のスライムのような化け物だった。
銃が効かない不死身の化け物の前に絶体絶命の彼らだったが、
そこに500年前に伝説になった賞金稼ぎレイラが現れ一緒に脱出することに。

化け物の正体は細胞実験事故により変異してしまったレイラの元恋人だった。
レイラはその責任を取って自らにも不死身の細胞を植えて戦っていた。

化け物を軍事力として利用しようとする政府軍、
レイラの味方のふりをして全てを手に入れようとする植物系宇宙人。
様々な思惑の中でレイラは化け物となった恋人と一体化して
永遠に一緒になるという選択肢を選ぶ。

ダストシューターたちはレイラの気持ちを汲み取り、
人工的にブラックホールを作り出してその中に化け物を閉じ込めることに成功、
そしてまた新たな宇宙を目指して旅に出る。


ストーリー的にはだいたいこんな感じ。

カプセル兵団が得意とする「ビジュアルイマジネーション演出」は、
舞台上で役者達が自身の肉体で全てのセットやその状況を
スピーディーかつパワフルに表現するもの。

冒頭から巨大戦艦を組体操のような人間の塊で作り上げ、
漂流船の回収や、そこに突っ込んでいく小型船など、全て人間の体によって表現している。
ここの芝居を初めて観るお客にとっては衝撃的な演出であろう。
鮮やかな芸術性を持ちながらもどこかギャグチックな、非常に独特な演出。
自分はここの芝居を何度か観ているが、いつ観ても面白い表現方法だと思う。


しかし今回の作品の出来には苦言を呈さずにはいられない。


まず脚本についてだが、一言でいうと面白くない。
アクション主体のSFモノを描くにあたって、おそらくあえてシンプルな話にしているのだろうが、
それにしてもひねりがなさ過ぎて、展開がほぼ予測できてしまう。
レイラと化け物の関係も、植物系宇宙人が裏切ることも、化け物の倒し方も、
ストーリーの肝部分があまりに予想できるベタ展開すぎて、
「話の先を知りたい!」というワクワクした気持ちがほとんど生まれなかった。
試合結果知ってるサッカー放送観てるような、そんな感覚。

緊迫した展開になって盛り上がってきたと思ったら、息抜きみたいなシーンが入るのもマイナス。
盛り上がりっぱなしだと観ている方も疲れるという意見をよく聞くが、
こういったジャンルの2時間芝居なら、息抜きなしで突っ走ったほうがいいように自分は思う。
緊迫と息抜きを繰り返されるほうがかえって疲れてしまう。


次に魅力的な役者の不在。
ダストシューターの男2人、救出された整備兵、植物系宇宙人あたりは
それぞれ個性が強くセンスも良くて面白いのだが、
そのほか、特に女性陣の層の薄さが目立った。
引っ張る人間が不在のシーンが多くて、
観ていて気持ちが切れてしまう時間がけっこうあった。

レイラも悪くはないのだが、いま一歩魅力的には映らなかったため共感できず、
感動するはずのラストシーンではあまり心が揺さぶられなかった。


あとミスの多さ。
役者がとにかくセリフをトチる。
SEとセリフがかぶる。

これだけ密度が濃くてきっかけも多い芝居だから
小屋入りしてから本番までそれはそれは忙しいであろう。
しかしそれは観るお客にとっては関係がない話。
芝居はナマモノであるから多少のミスはあるものと思っているが、
今回のミスの多さはさすがに許容範囲外であった。
ミスが出るたびに客席の温度が1度下がる。


最後にこれは個人的に気にかかった点なのだが、
ダンスパフォーマーの森澤碧音が目立ち過ぎている気がした。
表現が個として見事過ぎて、フォーカスを奪うのだ。

全体をぼやっと眺めてシーンを眺めていると、必ず目線が彼女にいく。
それは彼女の実力がズバ抜けて高い故のことなのだが、
重要なセリフを吐いている役者よりもその横で踊っている彼女に目がいってしまうのは
芝居全体として観た時にはやはりマイナスであろう。
もちろん彼女が悪いわけではなく、周りに問題があるのだが。


うーん、

なんだかマイナスな点を挙げ始めるとずらずら書いてしまうが、
このカプセル兵団は個人的には好きな団体であるし、
今回の作品もそのへんの劇団の作品に比べればよっぽどおもしろいのだ。

しかし、過去にカプセル兵団はもっともっと面白いものを自分に観せてくれている。
自分が好きなモノには右下がりになってほしくない。

映画が3DになりフルCGも当たり前になっていく時代で、
演劇の進化も必須と考えてそれを目指している集団。
是非とも右上がりに進化して、最高の作品を作り上げてくれることを期待したい。

P.S.
悪い点ばっかり書いてしまった気がするので好きだった点も書いとく(笑)
ラストの巨大戦艦内部に小型機で突っ込んでエンジンを破壊するシーンは、
まるでスターウォーズのデススター戦のようで本当に圧巻だった。
ゾクゾクして鳥肌モノ。
2時間通してこのクオリティのシーンが続けば良かったなぁ。


 

◎日々是劇評

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