日々是劇評

関東圏内で観劇した舞台について率直に感想を書いています。
自分用の備忘録みたいなもんなんで遠慮なく辛口な批評もしています。

<更新記録>

劇団SSP 「Up With Future 〜Synchronizer〜」  @日暮里 d-倉庫 2014/02/26
劇団PEOPLE PURPLE 「サヨナラの物語」  @新宿シアターモリエール 2014/01/26
MS2 「ダイヤモンドダスト・ドリーム」  @中野ザ・ポケット 2014/01/07
セブンスキャッスル 「人狼 ザ・ライブプレイングシアター #08:MISSION The Castle Job」  @上野ストアハウス 2013/12/30
9-States 「それなりにハッピー」  @下北沢 OFF・OFFシアター 2013/12/27
梅パン 「いなづま」  @池袋シアターグリーン BASE THEATER 2013/12/23
ネコ脱出 「人生快速」  @下北沢 「劇」小劇場 2013/12/22
メガロザ 「靴下にカミソリ」  @新宿タイニイアリス 2013/12/20

※本文中に激しくネタバレ含みます!
 上演中の公演についてこれから観劇予定の方は閲覧ご遠慮ください。


天才劇団バカバッカ vol.11
「タイム・アフター・タイム」

2013/08/05更新  ≪中野ザ・ポケット≫ ≪天才劇団バカバッカ≫ ≪2013/08

天才劇団バカバッカ vol.11 「タイム・アフター・タイム」

天才劇団バカバッカ vol.11 「タイム・アフター・タイム」

【作】
桐野翼

【脚本】
ゆるボーイゆるガール

【キャスト】
木村昴、野村龍一、池澤あやか(東宝芸能)、志村玲那(アミューズ)、
高木古都(SonyMusicArtists)、レノ聡、ZiNEZ(digress-lab)、KAIRI(fromFORK:LORE)、
鈴樹志保(ライズプロダクション)、津賀保乃、竹内拓也、松原大輔、熊野直哉、
村井みゆき、海口ゆみ、東慶光、田村将一、佐藤シャミーナ、
中丸楓雅(ライズプロダクション)、大泉一旗、栗田直輝、長谷川弘、
宮中はるか、矢崎初音、日比谷光子、小宮凜子、亀田理紗(劇団K−Show)、
明良まみこ(エレメンツ)、堤もえ、横内のぞみ

【日程】
2013年7月31日(水)〜4日(日)

【会場】
中野ザ・ポケット

【チケット料金】
前売  3,000円
当日  3,500円
学割  2,000円

平日マチネ割 200円引き

【公式HP】
http://t-bakabakka.com/

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「青少年負担軽減法」が可決した。
それは若者の税金負担を軽減すべく高齢者の医療負担料を上げ、
さらには国に選ばれた者は孤島に捨てられるという、
まさに現代版の「姥捨て山」法案であった。

不幸にも主人公の母親が姥捨ての対象として選出されてしまい、
彼はなくなく自分の母を孤島に置き去りにする。

その後、自分の職場である外国語学校で悲しみに暮れていたところに
なんと捨てたはずの母親が現れるのであった。
政府に母の存在がばれると問題になると騒ぐ職員。
しかし主人公はもう二度と母親を見捨てたくないという想いで
母親を学内にかくまうことにする。

しかしそのとき母親の体に異変が。
なんと彼女はゾンビ化していたのだった。
その影響で学内や街中はゾンビだらけになってしまう。

これは研究施設で開発されていたウイルスが原因で、
一部の人間が自分の利益のためにあえて流出させたのだった。

主人公たちはその陰謀を暴き、ウイルスのワクチンを入手、
全員がゾンビから人間に戻ることができた。

しかし死んでからウイルスに感染した母親はワクチンを使うことで元の姿、
つまり死んだ状態に戻ってしまうという。
「人として死にたい」という母の願いを聞き入れワクチンを使用する主人公。
そしてその場にいた全員が悲しみに口を閉ざす。

しかしそこで、息絶えたと思った母親が元気に起き上がった。
実はウイルスにかかったのは死ぬ前だったことが判明。
胸をなでおろし喜ぶ主人公達。

大団円。


いつもながらの大雑把あらすじで申し訳ないが、
まぁ大体こんな感じのストーリー。
上演時間は95分程度。

終演後のカーテンコールで「ブログ等でのネタバレご遠慮下さい」とあったけど
千秋楽終わったいまならもういいよね?(笑)


序盤から「青少年負担軽減法」という社会的なテーマを突っ込んできた。

未来のない・労働力にもならない高齢者たちを排除する。
強きを優遇し、弱きを排除する、いわゆる「間引き」政策であるが、
高齢化社会が進む現代でこれは間違いなく「国のため」だけを思うなら極めて有効な手段である。
自然界の生き物でもこれを行う種はたくさんいるし、
人間だって農作物に対しては当たり前のようにやっていること。

しかしこの政策、もちろん道徳・人道的観点で通るわけがない。
もしこんな政策を現実に掲げる政治家がいれば、一瞬のうちに国民から黙殺されるであろう。
非常に有効な手段でありながらも、それ以上にタブーな事柄なのだ。

このタブーを劇中に放り込んでくるのは別にいい。

ただし、こんな重たく厳しいテーマを取り上げるからには、
しっかりと問題を提示し、劇団として一つの答えを示したり、
お客に熟考を促すような示し方をしてほしかった。
風呂敷を広げたわりには掘り下げがほとんどなくて、
ただの「母親と離別するための設定」にしかなっていなかったのだ。

このテーマに触れるからには、とことん触れ尽くしてほしい。
自分は少なくともこのテーマはそうあるべきものだと思っている。


後半は雰囲気が一転してゾンビパニックコメディーへ。
こちらのほうがいつものこの劇団のドタバタ感が出ていて面白かった。
歌やダンスを交えたゾンビの襲撃の表現法はお祭り的に楽しくて、まさにここの持ち味。

個人的には「青少年負担軽減法」の話か、
「ゾンビパニック」かどちらかに絞ったほうが良かったのではないかと思う。
もちろん劇団の色としては後者のほうが得意ではあろうが、
前者をもっともっと深く掘り下げた話にも興味がある。


あ、話を絞ったほうがって事にも繋がるのだが、
出演者それぞれに出番を作るためなのか、エピソードが多過ぎたように思う。
親のために恋人を捨てて親衛隊に入る話、政府のために動く親衛隊、
メンタルケア業者とそこにいたスパイ、研究者たち、
真実を追う女子アナたち、学内の外国人教師たち、ネズミを追う人、政治的な癒着・陰謀など。

特に序盤はいろんなエピソードがバラバラに展開し過ぎていて、
「?」をいっぱい脳裏に浮かべながら観ていた。

こういったブツ切りエピソードを箇条書きしたような構成は
観ている側にとっては物語に入っていく際の大きな障害になる。
上演時間が90分程度しかないんだから、もっと主軸を絞って見せるべきでは。


あと、演劇で子役を使うって本当に難しいことだなと再確認した。
舞台だと子供の役があっても、実年齢の子役を用意することはほとんどなく、
20代、30代のいい年したオトナが子供になりきって演技をすることが多い。
お客もそれは理解していて、ちゃんと彼らを子供として観てくれる。
「年齢設定と見た目のウソをなくしてくれるフィルター」がお客の脳内で発動するのだ。
だから20代の役者が子供役をやろうが、老人役をやろうが、それで成立する。

しかし、子供の役に実年齢の子役をあてた時点でそのフィルターは崩壊する。
ウソで成立していた世界に不用意に一部だけ本物を入れてしまうと、
いままで成立していたウソが成立しなくなってしまうのだ。
リアル子供が演じる子供役を観たあとでは、
大人が演じる子供、若者が演じる老人は観ていられなくなる。

別に子役を使うことがいけないわけではないが、
うーん、その使い方って本当に難しいもんだなと思った。


また次に期待。


 

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