日々是劇評

関東圏内で観劇した舞台について率直に感想を書いています。
自分用の備忘録みたいなもんなんで遠慮なく辛口な批評もしています。

絞り込み 記事更新日=「2012/04」

空想組曲 vol.8 「深海のカンパネルラ」  @赤坂レッドシアター 2012/04/18
シノハラステージング #54-2 「バックステージ」  @シリウス・ビー 2012/04/05
劇団宇宙キャンパス 17th act 「さんせっとぶる〜っす!」  @Art Theater かもめ座 2012/04/01

※本文中に激しくネタバレ含みます!
 上演中の公演についてこれから観劇予定の方は閲覧ご遠慮ください。


空想組曲 vol.8
「深海のカンパネルラ」

2012/04/18更新  ≪赤坂レッドシアター≫ ≪空想組曲≫ ≪2012/04

空想組曲 vol.8 「深海のカンパネルラ」 空想組曲 vol.8 「深海のカンパネルラ」

空想組曲 vol.8 「深海のカンパネルラ」

【作・演出】
ほさかよう

【キャスト】
多田直人(演劇集団キャラメルボックス)、篤海、古川悦史、川田希、二瓶拓也(花組芝居)、
石黒圭一郎(ゲキバカ)、小玉久仁子(ホチキス)、牛水里美(黒色綺譚カナリア派)、
渡邊とかげ(クロムモリブデン)、鶴町憲、内山正則、上田理絵、中田顕史郎

【日程】
2012年
4月15日(日)〜4月22日(日)

【場所】
赤坂レッドシアター

【チケット】
前売 3500円
当日 3800円
平日昼割 3300円

【公式HP】
http://www.k-kumikyoku.com/

============================

銀河鉄道に乗って銀河を旅するジョバンニ(主人公)とカンパネルラ。
星空の輝きに感動を覚えながら時を過ごす彼らだが、途中から様子がおかしくなる。
ジョバンニの思い通りに事が進みだすのだ。
登場人物や銀河の状況、さらには話の巻き戻しまで自由自在。
実はこの世界はジョバンニを演じる、「りく」という現実の青年の妄想の世界だった。

高校時代に親友の死や、友達の裏切り、いじめなどを経験したりくは
大学に入ってからずっと死んだ親友をカンパネラに見立てて妄想にふけっていた。
いつの間にか妄想なのか現実なのかも判別できなくなるぐらいにどっぷりと。

それを見かねたりくの姉がりくを説得を試みる。
姉に呼ばれた高校時代の友人や親友の父親との会話や妄想のシーンを織り交ぜながら、
「人と人との関係」をテーマに話が進んでいく。

そんな感じのお話。


素晴らしかった。
もうその一言に尽きる。

役者陣の演技レベルは全員申し分なく、
自然かつ面白く、そして個性的に各々の役割を担っていた。
たしかこの公演はオーディションでキャストを集めていたはずだが、
良い人選だったと思う。

さらに目を引くのは演出全体のセンスの良さ。
とにかく「綺麗」なのだ。

舞台に配置されたやや斜めになった枠組み、左右のオブジェ。
それだけでもセンスの高さを十分に感じるのだが、
これらを巧く生かした照明効果と役者の配置センスが抜群に良い。
どのシーンも芸術とも言えそうな絵面でこちらの心を掴みにきていた。
音響面も選曲、タイミング、残響効果の使い方、どれも文句なし。

脚本・演出・演技のあらゆる面でレベルの高い、
とてもよく出来た作品だったと思う。


不満に思ったのは、中盤以降がやや冗長気味かなと思ったぐらいか。
実際2時間15分程度の上演時間だったのだが、
終わりそうで終わらない最後の30分には
「あれ?まだ続くの?あ、さらに?」みたいな雑念がよぎってしまった。
自分のまわりのお客さんも同じ気持ちだったようで、ソワソワ感がけっこう伝わってきた。
なんとか2時間で収められなかったものか。

それで今回考えてみたのだが、
実際に上演時間を前説で知らせる団体も多い、
しかし今回のように上演時間を事前に知らせない場合もある。
これはいったいどっちがいいものなんだろうか?

たとえば「上演時間は2時間30分です」ってお知らせした場合、
「けっこう長い芝居なんだ、よーし」と覚悟して腰を据えて見てもらえる反面、
「2時間30分ってことは・・・、あ、もうこれラストシーンだな」みたいな
ネタバレっぽい雑念を観劇中に与えることにもなる。
映画なんかは上映時間を明記しているが・・・うーん、どっちがいいんだろうか。

個人的には2時間越えるなら事前に教えてほしい派かなぁ。
みなさんはどうお考えです?


P.S.
あ、あとサンシャイン水族館にいる魚はちゃんと調べたほうが・・・
ミツクリザメなんてマニアックなサメはともかく、
ジンベエザメほどの大きな魚がサンシャインにいないのは周知の事実なのでは。
これだけこだわりの見える完成度の高い作品なのに、なぜそのへんのツメだけ甘いのか(汗)


 


シノハラステージング #54-2
「バックステージ」

2012/04/05更新  ≪シリウス・ビー≫ ≪シノハラステージング≫ ≪2012/04

シノハラステージング #54-2 「バックステージ」

シノハラステージング #54-2 「バックステージ」

【作・演出】
篠原明夫

【キャスト】
川島千加子、佐々木みち代、大場トシヒロ、たけうちまりの、渕井達也、牧野雄一郎、澤口陽子、
浅川芳恵、佐々木緑、穂積宏和、小嶋ひかる、安田莉麻、江村弥恵子

【日程】
2012年
3月30日(金)〜4月8日(日)

【場所】
シリウス・ビー

【チケット】
前売2,500円、当日3,000円

【公式HP】
http://home.interlink.or.jp/~staging/

============================

デパートの屋上で催される様々なイベント。
きぐるみショー、歌のお姉さん、ロックミュージシャンなどなど。
その出演者たちとイベント主催者、売店の人たちが楽屋で繰り広げるドタバタコメディ。

音響担当者の遅刻をごまかそうとして香盤表を変更したことをきっかけとして、
音響オペミスや、急遽用意したキャバ系司会者の場違いな司会進行、
着ぐるみ役者のダウンなどのトラブルが続出する。
しかし始まってしまっているイベントはもう止められない。
なんとかうまく収めようと、メンバーは空回りしながらも全員でがんばる。
そんな感じのお話。


ドタバタコメディとしてよくできた作品だった。
設定もストーリの進行も単純に面白い。
小ネタなんかの言葉のチョイスもセンスがあったと思う。

楽屋裏という狭いスペースで大人数の芝居なのだが、
人の出入りを無理なくこなしていて非常に見やすかった。
登場人物の個性も立っていて、見ていて飽きがこない。

とくに売れないロックミュージシャンの暴走っぷりはすがすがしく、
初登場から10分ぐらい自分のペースでしゃべり続けるシーンは秀逸だった。


個人的に惜しいなとおもったのは、フツーに面白い作品で終わってしまっていたこと。
笑いどころがたくさんあるので終始笑いは起きるのだが、大爆笑がないのだ。
ややウケの連続って感じ。

このへんは役者全体の技量によるものなのではないかと思う。
最高のネタを、最高の声量、最高のトーン、最高の間、最高の表情、最高の絵面で放つ。
この点において、やや甘さが目立った印象を受けた。
もうちょっとこうやれば面白いのにっていうのはけっこうたくさんあった。
これが客席のテンションを最高潮までもっていけなかった要因だと思う。
うーん、惜しい。


あと、ヘンゼルとグレーテルの着ぐるみ劇を楽屋のマイクで即興で演じるシーン。
これがこの芝居の中で一番盛り上がるべき部分のはずなのだが、
残念ながらいまいち面白くなくて失速してしまっていたのが残念。

即興でしゃべっている内容がネタとしていまひとつだったこと、
みんなが悩みつつたどたどしくしゃべるためにテンポが悪いこと、
このあたりから序盤では強かったそれぞれの役の個性が薄まってきたこと、
そのへんが原因かな?

また設定上、この即興に合わせてステージで着ぐるみ役者が演技をしていることになるのだが、
シーンを見ていてもいまいちその絵がイメージで出てこなかったこと。
ムチャクチャな即興のマイク音声に対してのステージ上の反応、お客の反応それぞれが
もう少し描写されているともっと面白くなったのではないかと思う。


面白い作品だったのは間違いない。
でもせっかくなので、より上のレベルの大爆笑オンパレードの最強コメディを目指してもらいたい。
今後に期待。


P.S.
チケットがピラッピラのコピー用紙ってのはちょっと。。。
チケットのクオリティの高い低いは、もちろん芝居の出来とは関係ないものだが。

個人的にはチケットは素敵な空間に入るため、素敵な役者に会うための引換券、
つまり特別な価値のある物だと思ってる。
ただの受付で使う便宜上の紙切れでは決してない。
だからこそ半券を観劇の思い出にとっておく人がいるのだ。

お客さんにエンターテイメントを提供する団体ならば
そのへんは考えてほしかったなと思った。


 


劇団宇宙キャンパス 17th act
「さんせっとぶる〜っす!」

2012/04/01更新  ≪Art Theater かもめ座≫ ≪劇団宇宙キャンパス≫ ≪2012/04

劇団宇宙キャンパス 17th act 「さんせっとぶる〜っす!」

劇団宇宙キャンパス 17th act 「さんせっとぶる〜っす!」

【作・演出】
小林ともゆき

【キャスト】
◆AB共通
小林勝弥(薫風武隊)、石戸サダヨシ

◆A
小林真弥、柳瀬翼、菊田健吾、弦巻秀人、脇本昌彦、佐藤祐治、原田絵理(劇団DarkMoon)、
山本ともだち(D→Style)、高橋千夏、弥浦ちえ(Buddy System)

◆B
キムラシゲオ、芳賀信吉、上岡一路、福澄亜紀子、小林ともゆき、児玉尚幸、
玉渕正紀、和田元気、田代ナオ(帝京大学演劇部ヴィクセンズシアター)、安達あいら

【日程】
2012年
3月28日(水)〜4月1日(日)

【場所】
Art Theater かもめ座 

【チケット】
前売2,800円、当日3,000円

【公式HP】
http://uchucan.web.fc2.com/

============================

場所はとある車メーカー工場の独身社員寮の売店スペース。
真面目で口うるさい寮長、腕っ節の強いベテラン、見栄っ張り、風俗好き、
ヤンキー新入社員(実はフリ)、努力しないミュージャン志望、
ノーテンキな中国人、などの個性的な社員たちと、
売店の姉ちゃん、本社社員、BL好き女子高生が繰り広げる日常の物語。
寮長が退職したり、ミュージシャン志望の社員が事故で指を失ってしまったり、
いろんな出来事を経て、それぞれが自分の人生を模索していく。
そんな感じのお話。

何かに対して夢を持って取り組んでいるか、
夢持たないまま楽しむのはダメなのか、
そんなテーマを登場人物たちの会話の中に盛り込んでいる。

だがそのテーマも押し付けがましい感じはなく、
ナチュラルにこそっとこちらに染み込むように伝わってきてくれて好感が持てた。
芝居のメッセージ性って、これぐらいのレベルにしてくれたほうが見てて気持ちいいね。

シチュエーションも話の展開も素直に作られていて
見終わった後はほっこりできる感覚があって楽しめた。
そのへんはさすが10年以上やってる劇団だなってところ。


ひとつ気になったのは騒がしさ。

小屋のサイズに対して役者の声量のレベルがとても大きかったので、
日常会話シーンがものすごく不自然に見えてしまっていた。
冒頭からずっとそんな調子で、話に入り込む上では大きな障害に感じた。

さらには大人数で騒ぐシーンになると自分の声をかき消されまいと力が入るのか、
その役者たちの声のボリュームはさらにUP。
セリフを被せまくっている構成になっていたのもあって、すごく見辛く聞き辛い。
大学生が居酒屋でギャーギャー騒いでいるような、見るに耐えない絵面になってしまっていた。
しかも劇中そんなシーンが非常に多いのだ。
うーん、もうちょっと整えて「魅せれる騒がしさ」にしてほしかった。


劇団の目指しているカラーとは違うかもしれないが、
個人的にはもうちょっと写実的に作ってみたら面白いかもと思った。
セリフをポンポン速いペースで投げ合っての1時間45分の芝居だったが、
もうちょっと間を大事にした2時間の芝居にしてもいいと思う。
実際、なんでその会話を早口でリズミカルに投げ合っちゃうの、みたいなシーンは多かった。

脚本的には会話劇だけで十分に見せれるようなお話だったし、
笑いもエンタメエンタメしているより、会話の妙で笑わせても良かったのでは、と。
そういう演出バージョンも見てみたい。


・・・あとこれまた個人的な意見なのだが、
もし「誰もが憧れるアイドル系美少女」の役を演じる女優がブサイクだったとき、
自分は光の速さで冷める人である。
(松尾スズキもそんなようなことをコラムで書いていた)

なんと今回は珍しく逆パターンで、
「女として頭数に入れようもない、口うるさい乱暴なババア呼ばわりされる女性」を
普通に綺麗な女性が演じていたのだ。
(自分はAキャスト版をみたが、Bキャスト版のほうをネットでチェックしてみるとこちらも綺麗な人)

まぁ、「美人役をブサイクな女優が演じる」に比べるとダメージははるかに少ないのだが、
登場人物たちにこれでもかというぐらい女扱いされないシーンがあったため、
やはり劇中での違和感はかなり大きかった。

個人的にはこのへんの違和感もなんとか排除してほしい派です。
このあたりのことツッコむといろんな物議を醸しそうでアレだけどもね(笑)
あ、ホントあくまで個人的意見なんで、失礼に感じた人いたらスイマセン。


 

◎日々是劇評

劇場

APOCシアター
Art Theater かもめ座
KAAT 神奈川芸術劇場 ホール
KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ
pit北/区域
RAFT @東中野
アサヒ・アートスクエア
アトリエだるま座
ザムザ阿佐ヶ谷
シアターコクーン
シアター風姿花伝
シリウス・ビー
すみだパークスタジオ
ラゾーナ川崎プラザソル
王子小劇場
下北沢 「劇」小劇場
下北沢 OFF・OFFシアター
下北沢 シアター711
下北沢駅前劇場
絵空箱
吉祥寺シアター
高円寺明石スタジオ
座・高円寺1
笹塚ファクトリー
参宮橋トランスミッション
上野ストアハウス
上野小劇場
新宿 スペース雑遊
新宿 紀伊国屋ホール
新宿サンモールスタジオ
新宿シアターサンモール
新宿シアターブラッツ
新宿シアターモリエール
新宿タイニイアリス
神奈川県立青少年センター ホール
神奈川県立青少年センター 多目的プラザ
赤坂レッドシアター
川崎H&Bシアター
浅草橋アドリブ小劇場
相鉄本多劇場
大倉山記念館 第四集会室
大和田伝承ホール
池袋 シアターKASSAI
池袋シアターグリーン BASE THEATER
池袋シアターグリーン BOX in BOX
中野HOPE
中野MOMO
中野ウエストエンド
中野ザ・ポケット
中野テアトルBONBON
東京芸術劇場 池袋シアターウエスト
東松原ブローダーハウス
日暮里 d-倉庫
八幡山ワーサルシアター
文京シビック小ホール
北池袋 新生館シアター
本願寺ブディストホール
夢の島公園 テント劇場
六行会ホール
和光大学ポプリホール
 →劇場毎一覧

団体

(企)劇団思い出づくり
47ENGINE
613
8割世界
9-States
A・M・D企画
aji
Broadway musical
CAP企画
COTA-rs
CP Project
DULL-COLORED POP
HIME企画
Human Art Theater
IQ5000
Kanikuso
LiveUpCapsules
MS2
Office Months
Oi-SCALE
OUT of WIT
Platform
Re:Play
SORAism company
Studio D2
STUDIO HeadZ
The Dusty Walls
アトリエ・ダンカン
いと、まほろば
ヴォードヴィルの会
オールアクトカンパニー
カプセル兵団
からふる
シノハラステージング
セブンスキャッスル
ソラリネ。
ナイロン100℃
ネコ脱出
メガロザ
らちゃかん
リトルプラネット
開幕ペナントレース
企画ユニットあいてむぼっくす
空想組曲
空想天象儀
芸術集団れんこんきすた
劇団IQ5000
劇団PEOPLE PURPLE
劇団SSP
劇団お座敷コブラ
劇団くりびつてんぎょう
劇団ニコルソンズ
劇団マチダックス
劇団メリーゴーランド
劇団宇宙キャンパス
劇団喫茶なごみ
劇団東京晴々
劇団熱血天使
劇団扉座
劇団離風霊船
座・あおきぐみ
子供脳みそ
神奈川県演劇連盟
人衣企画
青少年のための芝居塾
川崎インキュベーター
相模舞台同盟
張ち切れパンダ
天才劇団バカバッカ
東京都カリスマイル
虹の素
梅パン
風雲かぼちゃの馬車
平熱43度
野戦之月海筆子
立体再生ロロネッツ
立体親切
流星揚羽
緑慎一郎とミユキーズ
零’sRecord企画
 →団体毎一覧

記事更新日

2014
02 01
2013
12 11 10 09 08 07
06 05 04 03 02 01
2012
12 11 10 09 08 07
06 05 04 03 02
 →記事更新日毎一覧

外部リンク

演劇感想文リンク
こりっち舞台美術!