日々是劇評

関東圏内で観劇した舞台について率直に感想を書いています。
自分用の備忘録みたいなもんなんで遠慮なく辛口な批評もしています。

絞り込み 記事更新日=「2013/10」

Oi-SCALE本公演 「武器と羽」  @下北沢駅前劇場 2013/10/28
企画ユニットあいてむぼっくす 「踊れ☆酪農家族」  @上野ストアハウス 2013/10/27
劇団扉座第54回公演 ミュージカル 「バイトショウ」  @座・高円寺1 2013/10/25
劇団喫茶なごみ二人芝居 「梅子」  @大倉山記念館 第四集会室 2013/10/20
立体親切 「奇妙なコドク」  @上野小劇場 2013/10/11
DULL-COLORED POP プロデュース 「最後の精神分析-フロイトvsルイス-」  @日暮里 d-倉庫 2013/10/06

※本文中に激しくネタバレ含みます!
 上演中の公演についてこれから観劇予定の方は閲覧ご遠慮ください。


Oi-SCALE本公演
「武器と羽」

2013/10/28更新  ≪下北沢駅前劇場≫ ≪Oi-SCALE≫ ≪2013/10

Oi-SCALE本公演 「武器と羽」

Oi-SCALE本公演 「武器と羽」

【作・演出】
林灰二

【キャスト】
山下純、政井卓実、中尾至雄、油井原成美、肥後あかね、都築衣織、大林小夏、
浅賀誠大、澤井裕太、片倉裕介、横尾宏美、大谷由梨佳、近松くるみ、中村太陽、
川元文太(ダブルブッキング)、池上幸平、林灰二

【日程】
2013年10月23日(水)〜28日(月)

【会場】
下北沢駅前劇場

【チケット料金】
前売  3,500円
当日  3,800円
平日マチネ割 3,200円

【公式HP】
http://www.oi-scale.com/

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どこにでもある普通の公園。
その公園の茂みの中で腐乱死体が見つかったところから話が始まる。

ただの腐乱死体であれば事件性も低いのだが、
不可解なことに、その死体のすぐ側には掘りかけの穴があった。
首をかしげる警官達。

それから程なくして2件の通り魔事件がおきる。
被害にあったサラリーマンと人妻の証言に出てくる犯人像は一致しており、
すぐに近くのコンビニに勤務していた男・多摩山が捕まる。
しかし多摩山は罪を認めているのに肝心の物証が出てこない。
それどころか物証は多摩山が犯人でないことを如実に示していた。

実は2件の通り魔事件は被害者たちの狂言だった。

時は遡り数日前、1人のホームレスの男・利根矢がいた。
彼は11年前に亡くした姪を宝物と称し、それをいまでも探し続けていた。
もちろん見つからないことはわかっていながら。

そんな利根矢を多摩山は神と崇め、
「自分を殺してくれ」と言う利根矢の言葉に従い、彼を殺害する。
彼はその死体を茂みに運び、高尚な存在として見守り続ける。
つまり序盤に出てきた腐乱死体は利根矢。

多摩山は公園の中で絶望していたサラリーマンと人妻を誘い、
死体を見守るという救いの場を与える。
そしてその死体がいよいよ警察に見つかりそうになったとき、
多摩山はカッターナイフを2人に渡して、
「これで悪を退治しなければいけない」と告げてその場を去る。

そして2人は自分の中にある悪を目がけて
自らの体を傷付けた。
これが通り魔事件の真相であった。

事件性を面倒に思った警官たちが
腐乱死体を自らの手で埋めて隠蔽してしまうところで幕。


あらすじ的にはだいたいこんな感じ。
ずらずらと書いたが、話の密度が濃厚すぎて全然書き切れてないぐらいだ。


舞台は駅前劇場の入り口から真っ直ぐ下手斜め奥に通路を引いた、
一風変わった配置で構成されていた。
客入れの時間帯から異様なまでに暗い劇場内、
そしてその中でぼんやりと光るカラーコーンが印象的。
こういうセンスの良い仕掛けをみると、
芝居が始まる前から期待が高まってきて良いなぁ。


開演は主催の林灰二のゆるい前説から始まる。
最初はどうでもいい内容の雑談話なのだが、
輪廻転生の話題に入ってから、ぬるりとミステリアスな空気を醸し、
そのまま滑り込むように本編に突入する。


そこからの2時間10分は濃密で、
長かったようで短かったような、
本当に見ているほうに集中を強いる芝居であった。
もちろん良い意味で。

様々な人間の心の奥にある感情が絡み合い、
通り魔事件というひとつの共通項に対して
複雑に伏線が張られていく。
とてつもなく計算高く作られた脚本だ。


「この物語の登場人物は全員嘘をついている」
という前置きのメッセージのとおり、
登場人物は全員何かしら嘘をついている。

痴漢の冤罪を主張していたサラリーマンの男は
実はしっかりと女性のカラダを触っていたし、
人妻は旦那に内緒で娼婦じみたことを行っているし。
公園の猫を世話しているという女性は実は猫を毒餌で殺しており、
警察官達は面倒な事件を隠蔽しようとする。
その程度に違いこそあるが、本当に嘘だらけの世界。

しかし恥ずかしながら、自分は全ての登場人物の嘘が何なのかが
把握できないままに終演時間を迎えてしまった。
ちょっと悔しいね、こういうの。

岩木が刺される妄想のシーンと、
なぜ3件目の通り魔事件が起きたのかという部分、
(カッターナイフを渡されていたのでこれも自傷事件だとは思うが)
そのあたりも自分の中で理解しきれないままだった。
むむむ。


見終わってからすぐに
もう一度観てみたいという気持ちになった作品は久しぶり。
残念ながら、自分のスケジュールの都合上それはかなわなかったのだが。

もっともっと深く理解しようとしてみたい、
素直にそう思える作品はやはり名作なのだと思う。

拍手。


 


企画ユニットあいてむぼっくす
「踊れ☆酪農家族」

2013/10/27更新  ≪上野ストアハウス≫ ≪企画ユニットあいてむぼっくす≫ ≪2013/10

企画ユニットあいてむぼっくす 「踊れ☆酪農家族」

【作・演出】
進藤雄太

【キャスト】
筑田大介、森アサヒ、鳥羽優好、桜井真紀、村尾祥平、中城聖、日向彩乃、
稲垣圭子、飯田恭子、福岡幹之、柳原光貴、みっきぃ、東山優希、石川航、
kotoki、大谷結香理、望月信行、進藤雄太、伽月里衣、藤枝みのり

【日程】
2013年10月24日(木)〜27日(日)

【会場】
上野ストアハウス

【チケット料金】
前売  3,000円
当日  3,300円
平日マチネ割 2,800円

【公式HP】
http://itembox.aikotoba.jp/rakunou.html

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酪農場を経営する壇郷一家。
そこに新人女性ヘルパーがやってくるところから物語が始まる。

牛乳にこだわり続ける寡黙な性格のオヤジさん、
実地研修生から跡継ぎ婿を探すのに熱心なお母さん達、
みるくという名前をつけられて、牧場の仕事にも嫌気がさしている娘。

そんな頃、別の乳業会社で大きな契約の話が動いている。
しかしその契約の最終段階にきて、社長は行方をくらましてしまう。
それには契約相手もカンカン。

社長の行方を必死に追う社員たち、
実地研究生たちの恋の三角関係、
そんなドタバタを酪農農場を舞台にして描いた、
コメディタッチのお話。


ざっくり書くとだいたいこんな感じのお話。


うーん、若い。

脚本も演出も役者もダンスも若い。
それはもう、物販や当パンの挨拶文まで。
もう何から何まで若過ぎる。

全てが若い。
トゲのある言い方に変えると、全てが青いのだ。


それはもう、オープニングダンスから。

チープな振り付けで、誉められたレベルでもないダンスを
地明かりと大差ない地味な照明の中で踊っているのだ。
何をどう見てもお遊戯会的な空気。
もうこの時点で沸々とイヤーな予感が。。。


なんだろうなぁ。


まず、テーマがよくわかんないことになってる。

「酪農」「家族」「命」「絆」をテーマにしていると当パンにあったが、
「酪農」については、劇中で説明台詞として語ってるだけだし、
「家族」については、ほとんどそれは展開されず完全におざなり。
「命」についても、贔屓の雌牛が処分されてしまったことを
後日談で触れてるだけでテーマとは言い難い。
テーマとして成り立っていると思えたのは「絆」ぐらいだった。

今回のストーリーの主軸は、
悪徳企業の契約から逃げる社長とそれを追う社員のドタバタ、
学生達の甘酸っぱい恋愛・友情のもつれ、
ほぼこの2つだけであったように思う。

この2つの事象が「たまたま酪農場で起きた」だけであって、
酪農そのものとほとんど絡んでいないのだ。
これでは酪農について語っている説明ゼリフさえ変更してしまえば、
設定は町工場だろうが、商店街だろうが成立してしまう。

これは酪農が「テーマ」ではなく、
「設定」でしかなかったことに他ならない。
タイトルに「酪農家族」とつけているのだから、
やはりきっちり「テーマ」として仕上げてほしかった。


役者陣は全体的に経験が浅そうな人が多く、
やはり演技力不足はいなめない。
まぁ、まだこれからという団体だと思うのでそこは厳しくは見ないが。
あ、でも副社長・秘書・部下2人のそれぞれのやりとりは
キャラがしっかり立っていて面白かった。


ダンスは・・・総合的にみて、いらなかったんじゃないだろうか。
まぁ、個人的な趣味の差もあるだろうが。
序盤の親父さんダンスのような、ネタとしての使い方は好きだけども(笑)


あと照明のメリハリがほとんどないなぁと感じた。
オープニングのようにもっと派手になればいいのにと思う部分もあれば、
心情的なシーンでもっと絞っていいんじゃないかと思う部分も多数。
灯体自体も少なく感じたがこのあたりは金銭的な問題?


最初に「若い」「青い」と書いたが、
あらゆるフェーズで未熟感を感じたというのが総評。

それも下手とか努力不足とかいうよりは、まだまだ世界観が狭いんだと思う。
一生懸命頑張ってはいるんだろうけど、
狭い枠の中で足掻いていて成果に結びついていない感じ。

今回の演出や役者陣には、
とにかく舞台でも映画でも、がむしゃらに作品を見漁ってみてほしい。
何が面白くて、何が人の心を動かすか、それを意識しながら。
いらない枠を取っ払うキッカケが必ず見つかるはずだ。


枠が外れて進化した姿を見れることを願って
次回に期待。


 


劇団扉座第54回公演 ミュージカル
「バイトショウ」

2013/10/25更新  ≪座・高円寺1≫ ≪劇団扉座≫ ≪2013/10

劇団扉座第54回公演 ミュージカル 「バイトショウ」 劇団扉座第54回公演 ミュージカル 「バイトショウ」

劇団扉座第54回公演 ミュージカル「バイトショウ」

【作・演出】
横内謙介

【キャスト】
柳瀬大輔、五十嵐可絵、中原三千代、有馬自由、犬飼淳治、高橋麻理、鈴木利典、
岩本達郎、鈴木里沙、上原健太、川西佑佳、新原武、江原由夏、鈴木崇乃、
松本亮、松原海児、比嘉奈津子、早川佳祐、塩屋愛実、瀧川駿

【日程】
2013年10月16日(水)〜27日(日)

【会場】
座・高円寺1

【チケット料金】
一般  4,500円
学割  3,000円

【公式HP】
http://www.tobiraza.co.jp/kouen/kouen2013/beitshow_201310.html

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中学時代にたまたま叔父さんに連れられていった
ミュージカル「美女とケダモノ」を観て
舞台女優に憧れるようになった久保園チエの半生記。

チエは、高校では演劇部に入るが役者をやりたいと言い出せずに
ずっと3年間裏方に徹したままで活動を終える。

その後、東京の声優の養成所に入るが、
そこに講師としてやってきた劇団「唯我独尊」の天下一業平の指導に惚れ込み、
養成所をやめて「唯我独尊」に所属することになる。
そして天下一と同棲をしながら公演活動を続けていく。

しかし女と金に汚い天下一。
自堕落な生活を繰り返して、ついには劇団の金を持ってバックレてしまい、
そのせいで劇団は解散、チエは孤独に追い込まれる。

お金に困ったチエは、ダンサーとして成功を収めた友人カナを頼る。
チエは同郷出身で、なおかつ自分の生き方を誉めてくれるカナに惹かれていく。
しかし母親がストリッパーであることにコンプレックスを持つカナの生活は
次第に乱れていき、男や薬に手を出してどんどん堕落していく。
金を借りている立場のチエはそんなカナを引き留めることができず、
彼女から距離をおくようになる。

とにかく前を向いて進むことを決めたチエは売り込み営業の際に、
ライブハウスDOORSとその常連客達と出会うことになる。
売れない女優としての自分を温かく迎えてくれる常連客たち。

そこに居場所を見つけたチエは、いろんなオーディションを受けながら励み、
最後には、大物歌手のバックコーラス・バックダンサーに合格。
ライブハウスDOORSでの生活を卒業して、自分の道を歩いてく。


以上、だいたいこんな感じのストーリー。
約2時間の歌ありダンスありのミュージカル。


脚本の構成は、五十嵐可絵が演じる大人の久保園チエが
主にストーリーテラーとなっ過去を語っていき、
その回想シーンを順に描いていくスタイル。
若かりし頃のチエは、五十嵐可絵ではなく高橋麻理が演じていた。


その濃密なストーリーの中には
舞台俳優を目指す人にとっての「あるある」が盛りだくさん。

声優の養成所から講師に引っ張られて劇団に入るところや、
劇団内での激しい恋愛の家系図、
商業の現場でぞんざいな扱いを受ける小劇場役者たち、
金を持ってバックれる主催。

若干コミカルにデフォルメされてはいるが、
こういう世界をちょっとでも知っている人間にとっては
面白いけども笑うに笑えない現実。
自分も思わず苦笑いしてしまった(笑)


特に印象に残ったのは商業演劇の演出家の言葉。
 『ゴミさらいのバイトで収入があって、舞台のギャラがゼロ。
  それならてめえらの職業はゴミさらいだ!』

世の舞台役者の99%が舞台だけで食えていない現実。
その中で生きる人間にとっては、急所に突き刺さるような強烈な一言である。
しかもセリフだけでも十分にインパクトがあるのにそれを歌にして、
「小劇場役者を蔑む演出家 VS それに抗う若者たちの叫び」のような構図で
激しく対峙しているシーンはおもしろかった。


またピアノ演奏者として舞台に立っていた深沢桂子の使い方も良かった。
彼女は本来役者ではないので、当然ながら役者としての技量はないのだが、
それをちゃんと成立させてお客を味方につけさせるような演出がされていた。
こういうあたりうまいと思う。


ただ、岡森諦、六角精児、伴美奈子といったお馴染みの主力メンバーが不在で
役者全体の濃度が物足りなく感じてしまった点、
ライブハウスDOORSのあたりからの盛り上がりがいまひとつで
ラストに向かって失速感があった点、
それらの点だけはちょっと残念に思った。


劇中の会話でもあったが、
日本のミュージカルが海外の既成台本ばかり上演していて、
手足が短く、目は真っ黒で鼻も低い、生粋の和顔くん達が
頑張ってトロイ・ボルトンやマーク・コーエンを演じている。
こういう状況は自分も正直好きではない。

今作のような出来の良い、和製のオリジナルミュージカルがもっともっと
日本で生産されていく風潮になっていったらいいなぁと思った。


 


劇団喫茶なごみ二人芝居
「梅子」

2013/10/20更新  ≪大倉山記念館 第四集会室≫ ≪劇団喫茶なごみ≫ ≪2013/10

劇団喫茶なごみ二人芝居 「梅子」 劇団喫茶なごみ二人芝居 「梅子」

劇団喫茶なごみ 二人芝居 「梅子」

【作】
宮井浩行

【演出】
劇団喫茶なごみ

【キャスト】
村井彩子、伊藤あすか

【日程】
2013年10月18日(金)〜20日(日)

【会場】
大倉山記念館 第四集会室

【チケット料金】
前売  1,500円
当日  1,800円

【公式HP】
http://ameblo.jp/gekidankissanagomi/

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明治大正時代、一人の女がいた。
その名は、梅子

う んめいにほんろうされる梅子
め んどうくさいことすぐ引き受けちゃう梅子
子 どもが欲しい梅子


以上、公式から引用。


梅子の半生を巡っていく女2人だけの1時間のお芝居。
とくに物語自体に大きな起承転結はなく、
オムニバス的に淡々と話が進んでいく。

内容的には言葉の妙を突いた会話劇。
強引にジャンル分けするならばシュールコントに入るかもしれない。


役者は笑いを狙い過ぎず、全編とにかく真面目に淡々とやり取りを続けていく。
それがシーンによってハマって活きている部分と、そうでない部分があって、
後者についてはやはりもったいないなと思った。
淡々もいいが、ガッツリと前のめりに演じたほうが面白いシーンもあるはずだ。

せっかくそれぞれがいろんな役を演じわけているので、
シーンによってそういったスタンスも器用に変えていけたら良かったなと思う。


とはいえ、全体的な空気の作り方は抜群。
レトロな集会室の中に作ったテント的なセットに、
リコーダーとピアニカで迎えるゆるーい客入れ、
力の抜けたテンションで進む会話のやりとり、
味のあってなんだかほんわかする、楽しい作品であったと思う。


今回は高校時代の演劇仲間が組んで行った公演らしいが、
演技からもメンバーの仲の良さがなんとなく伝わってきて好感が持てる。

今後に期待。


 


立体親切
「奇妙なコドク」

2013/10/11更新  ≪上野小劇場≫ ≪立体親切≫ ≪2013/10

立体親切 「奇妙なコドク」

【作・演出】
新内浩之

【キャスト】
松尾藍、穂積宏和、藤井彩葉、新内浩之

【日程】
2013年10月11日(金)〜13日(日)

【会場】
上野小劇場

【チケット料金】
当日・前売  2,000円

【公式HP】
http://rittaishinsetsu3.blog.fc2.com/

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偉大な作家を父に持つ七光(にじ)という青年。
いままでずっと父に敷かれたレールに沿って生きてきたが、
あるときその父は倒れて危篤状態になってしまう。
七光は急に自分の進むべき道を見失ってしまい、
部屋に引き篭もって心を閉ざしてしまう。

ちょうどそんなとき、父の弟子である牛(うし)は、
自分の次の作品の題材に織田信長の息子・信忠を選んでいた。

今と戦国で時代こそ大きく違えども、
偉大な親の道標を突然失うという共通点がある七光と信忠。
信忠が実際にどういった考えを持って生きたのかを言及しながら、
親へのコンプレックスと向き合っていく七光の姿を描く。


まぁ、ざっくり書くとこんな感じのお話。


織田信忠の人生を掘り下げていくことで、
七光の深層心理などを同時に描写していくという手法は面白い。
そのおかげで七光のシーンに余計な言葉を詰める必要がなくなり、
妄想の少女・鈴との会話がより活きるようになっていた。


舞台は客席に向けて開くように長机がコの字に配置されており、
4人の役者は出番がないときはその席について待機していた。

小屋の構造上、役者をハケさせずに舞台上に待機させるのは良いと思う。
そのほうがめまぐるしくシーンを展開することができるし。
ただ、待機している役者に素で座らせている意図がわからなかった。
席には役者本人のネームプレートがあり、待機中は飲み物なども自由に飲んでいたが、
これらの演出的な意味はいったい?
コロスとして無で待機させなかった理由がわからず、ちょっとモヤモヤ


プレイしているテレビゲームの映像を後にスクリーンで投影していたが、
ちょっと主張が強すぎてフォーカス泥棒になっていた感があった。
プレイキャラが次々死んでいくシーンを映すのは面白いと思うので、
使い方にもうちょっと工夫があったらなと思う。


あと編集担当の女性の私生活の独白シーンの浮きっぷりは謎。
本編からあまりにも独立し過ぎていて蛇足感が大きかった。
削るか、本編にもっと絡むようにするか、
どっちかにしたほうが良かったように思う。


牛役の人のセリフ全般の「てにおは」の独特のイントネーション、
指をくるくる回す映像のあまりのチープさ、
ほかにもいろいろと集中を削ぐマイナス要素が多かったのが残念。
作品のベクトル、その手法などは良いと思うだけになおさら惜しい。


いろんなチャレンジが見える意欲作に思えたので
次にまた期待したい。


 


DULL-COLORED POP プロデュース
「最後の精神分析-フロイトvsルイス-」

2013/10/06更新  ≪日暮里 d-倉庫≫ ≪DULL-COLORED POP≫ ≪2013/10

DULL-COLORED POP プロデュース 「最後の精神分析-フロイトvsルイス-」 DULL-COLORED POP プロデュース 「最後の精神分析-フロイトvsルイス-」

DULL-COLORED POP プロデュース 「最後の精神分析-フロイトvsルイス-」

【脚本】
マーク・セント・ジャーメイン

【翻訳・演出】
谷賢一

【キャスト】
石丸幹二、木場勝己

【日程】
2013年10月4日(金)〜13日(日)

【会場】
日暮里 d-倉庫

【チケット料金】
一般  5,000円
学生  2,500円

【公式ブログ】
http://www.dcpop.org/

==========================================

精神分析の祖ジークムント・フロイト、
ファンタジー作家C・S・ルイス。

もしこの2人が実際に出会い、
神の存在の有無について大激論したとしたら?

第二次世界大戦中でいつ空爆が来るかも分からないという状況で、
一つの部屋の中で繰り広げられる重厚で聡明な論戦。
たった2人だけで行われる90分の会話劇。


ざっくり書くとこんな感じのお話。


まず役者が素晴らしかった。
木場勝己の偏屈で頑固な、でもどこかお茶目なフロイト、
石丸幹二の知的でユーモラスで勝気だけど、どこか繊細なルイス。
たった2人の人間がひたすらしゃべっているだけの芝居で
ここまで引き込まれるのは、まず彼ら役者の力があってこそだ。

登場から遅刻への皮肉と責任転嫁の応酬をするような、
まさに水と油のような対照的な性格の2人。
彼らは、聡明で知的な論争を繰り広げながらも、
ただの言葉の揚げ足とりのような子供っぽいを見せたりして笑いを誘う。
彼らの会話ならば、2時間でも3時間でも見ていられるなと思った。


終盤、口蓋の癌で先がなく自殺を考えているフロイトの考えに、
一旦は2人の戦いは収束するような気配を見せつつも、
最後まで議論に決着は付かず。

「長い歴史の中でいまだに解明されていない事実を、
 この小さな部屋で1日考えて結論づけようとすることは狂っている」
と言うルイス。

それに対してフロイトが
「考えることをやめてしまうことのほうが狂っている」
とゆっくり返す部分がとても印象に残った。

あれだけ皮肉や罵倒の飛び交う議論をし、
最後まで全く歩み寄りを見せなかった二人だが、
このやりとりの後にゆっくりと握手を交わす。
言葉では言い表せない複雑な感情が充満した空間に、目頭が熱くなった。
彼らはこの瞬間に「最高の友人」になったのではないだろうか。


作品としてお客に提示するテーマなどは全くなく、
ただひたすら議論している90分。
それも決着しようもない不毛な議論。
それなのに、観劇後に確実に何かをずしりと心の奥に刻んでくる作品だった。

拍手。


 

◎日々是劇評

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