日々是劇評

関東圏内で観劇した舞台について率直に感想を書いています。
自分用の備忘録みたいなもんなんで遠慮なく辛口な批評もしています。

絞り込み 記事更新日=「2012/11」

47ENGINE 2012冬公演 「Same Time Next Year」  @新宿タイニイアリス 2012/11/26
カプセル兵団 「からくりサーカス 〜サーカス編〜」  @笹塚ファクトリー 2012/11/19
aji 「“椿姫”」  @APOCシアター 2012/11/13

※本文中に激しくネタバレ含みます!
 上演中の公演についてこれから観劇予定の方は閲覧ご遠慮ください。


47ENGINE 2012冬公演
「Same Time Next Year」

2012/11/26更新  ≪新宿タイニイアリス≫ ≪47ENGINE≫ ≪2012/11

47ENGINE 2012冬公演 「Same Time Next Year」

47ENGINE 2012冬公演 「Same Time Next Year〜セイムタイム・ネクストイヤー〜」

【作】
バーナード・スレイド

【訳】
青井 陽治

【演出】
笹浦 暢大(うなぎ計画)

【キャスト】
鈴木 利典(扉座)、三浦 麻理恵(47ENGINE)

【日程】
2012年11月21日(木) 〜 25日(日)

【場所】
新宿タイニイアリス

【チケット】
前売・当日 3,000円
全席自由席

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バーナード・スレイドの名作。
1975年にニューヨークで上演され人気を博し、
日本でも加藤健一事務所などが何度か再演している2人芝居。

1951年、ひょんな偶然から出会ってしまったジョージとドリス。
舞台は2人とも家庭を持つ身でありながら初めての不倫をしてしまったその翌朝から。
最初は相手を探りながらのたどたどしい会話をしていた2人だが
お互いの家庭のことを話していくうちに意気投合、
これから毎年同じ日に同じ場所で会おうという約束をする。
そしてその約束は守られ、25年間毎年同じホテルで密会を続けていくことに。

この作品ではシーンを6場に分けて、出会い、5年後、10年後、・・・25年後、と
5年ずつ時間の経過をさせている。

以上がざっくりとした概要。


途中に休憩を挟む2時間半の公演だったが、
率直に面白かったと思う。

ジョージはどこか頼りなくて、最初はドリスを警戒して嘘をいっぱいついていたり、
子供からの歯が抜けたという電話に罪悪感を覚えて焦ったりしている。
しかし性的不能者になってしまったり、最愛の息子が戦争で死んだり、
様々な問題に直面し向き合うことで最終的にはこれ以上ないぐらいに
立派な一人の男性として成長していく。

一方ドリスも最初はちゃらんぽらんな雰囲気を持っているが、
3人の子供を抱えながらも大学に進学し、会社を起業。
経済的にも精神的にも自立した立派な女性に成長していく。

やはり登場人物が成長していく脚本はおもしろい。
2人の25年間の姿を見せるという構成もあってか
特にこの脚本はその成長の様が顕著なために、
登場人物への感情移入が非常にしやすいのだ。

2人の25年間の姿を2時間半かけて見せられた後の
プロポーズシーンは否が応でも応援したくなる。
プロポーズ自体は残念ながら失敗に終わるが、
結果的に2人にとって最良の結果でハッピーエンドになるラストには
誰もがほっこりと温かい気持ちになるであろう。

あ、残念な点が一箇所だけあった。
脚本的にはジョージとドリスが対等の2人芝居のハズなのだが、
終始ジョージがシーンを引っ張っていた感が強かったこと。
「ジョージとドリスの物語」ではなく、
「ジョージ物語」に近寄ってしまっていたのはもったいなかったかな。
惜しい。


「セイムタイム・ネクストイヤー」で検索をかけると
やはり毎年毎年どこかでこの脚本の公演が行われている。
これからも色んなジョージとドリスを観てみたいものだ。


 


カプセル兵団
「からくりサーカス 〜サーカス編〜」

2012/11/19更新  ≪笹塚ファクトリー≫ ≪カプセル兵団≫ ≪2012/11

カプセル兵団 「からくりサーカス 〜サーカス編〜」

カプセル兵団 「からくりサーカス 〜サーカス編〜」

【原作】
藤田和日郎

【脚本・構成・演出】
吉久直志

【キャスト】
林智子(劇団ヘロヘロQカムパニー)・森澤碧音(DanceCompanyMKMDC)・岩田栄慶(キャスタッフ)・吉久直志・大島紘子(ジョイント・アクション・クラブ)・林潔・岡田勇輔・安藤洋介(アトリエ凹アルコーブ)・中山泰香・庄章子・金澤洋之(劇団熱血天使)・遠藤公太朗・永峰あや・青木清四郎・石神まゆみ・小川輝晃(狼煙工房/プロダクションエース)・西沢智治・工藤沙緒梨・中澤まさとも(有限会社トリトリオフィス)・船戸慎士(studio Life)・谷口洋行・周晴奈・小林美穂・瀬谷和弘・神里まつり・北出浩二(team SPITFIRE)・下尾浩章(劇団BRATS)・桜井悠子・塩路牧子(裏庭巣箱)・五十嵐勝平(チーム俺太刀)・矢島慎之介・山崎涼子・Ayano(リブロック)・松田鼓童・松岡美那・水野奈月・吉野菜々子・大塚陽・境秀人(株式会社 碗)・堀内寛嗣(株式会社 碗)/白鳥晴奈(株式会社 碗)

【日程】
2012年11月15日(木) 〜 18日(日)

【場所】
笹塚ファクトリー

【チケット】
前売 3,500円
当日 3,800円
平日マチネは500円引き

【公式HP】
カプセル兵団 公式HP

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言わずと知れたサンデーの名作漫画「からくりサーカス」、
それをカプセル兵団が舞台化したものだ。
半年前に「からくり編」と称して前編にあたるお話を上演しており、
今回は後編に位置づけされる「サーカス編」。

ストーリーは漫画でいうと真夜中のサーカス戦を終えたところまでが前回分、
今回は過去の回想の江戸時代後期、燃える遊郭のシーンから。
そこからヴァルマの襲撃、ギイとアンジェリーナの出会いの話へと進んでいく。
そして最終エピソードまで。

これは漫画でいうとコミックス20冊分に相当する。
15分休憩を含んだ上演時間3時間半の超フルボリューム作品だ。

正直言って序盤のシーンは見るに耐えなかった。
演出上どうしてもBGMの大きさが下げられないシーンがあるのは理解できるのだが、
どうにもこうにも、早口でまくしたてる役者の台詞が聞き取れない。
客席が3面あってこちらに背を向けた状態で役者がしゃべることも多いためなおさらだ。

アンジェリーナを助けに飛び込んできた正二郎の第一声が全く聞き取れなかった時点で、
「こんな調子の芝居をあと3時間以上も観るのか・・・」とテンションがガタ落ちしてしまった。
まわりの客席を見渡すと、やはり自分と同様の心情の空気を漂わせていたように思う。

しかし、マサルやナルミ、ギイ、などの魅せれる役者が出てくると空気は一転。
そこからは長い説明タイムが終わってストーリーが前に展開していくことも手伝ってか
一気にお客を引き込んでいった。

終わってみれば3時間半を長く感じない、
心を何度もドキドキワクワクさせられた面白い作品に感じられた。

とにかくテンポ命で、めまぐるしく場面を展開し、
やりすぎともとれるベクトルの小ネタを放り込んでも瞬時にシリアスに戻す、
いつものカプセル兵団の良さが出ていた作品だと思う。


やはり序盤が本当にもったいなかったなぁと思う。
最初の5分で一気にお客を引き込むような演出を入れてくれてたら、
3時間半はもっともっと短く感じることができたであろう。
演じる役者も物語後半に巧い人を固めた感があったが、
序盤にももう少し配分して冒頭から引っ張ってくれてたらなと思った。

あと地味な部分だが、客席のイスに備えられていたエアクッション。
これがびっくりするぐらいに快適で驚かされた。
3時間半座ってお尻がノーダメージってすごいわ。
お客の集中力を逃がさない影の立役者は実はこのエアクッションかもしれない。

コレ、どの劇場でも標準配備にならないものかね?
長い尺の作品やる予定の劇団様、是非ご検討下さい(笑)


 


aji
「“椿姫”」

2012/11/13更新  ≪APOCシアター≫ ≪aji≫ ≪2012/11

aji 「“椿姫”」 aji 「“椿姫”」

aji 「“椿姫”」

【演出・構成】
島貴之

【脚本】
金本久美

【キャスト】
島玲、金子久美、石田佳名子、菊原真結(第七劇場)、米谷よう子(第七劇場)、
瀬尾卓也(富良野GROUP)、高橋智哉、深川奈緒美、藤本強、三本美里

【日程】
2012年11月8日(木)〜11月13日(火)

【会場】
APOCシアター

【チケット】
前売 2,800円
当日 3,000円
平日割 2,500円
プレビュー割 2,500円

【公式HP】
aji 公式HP

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古典「椿姫」の登場人物であるマルグリット・ゴーティエ。
小説に登場する彼女、戯曲に登場する彼女、オペラの中に登場する彼女。
彼女はどれも時代とお国柄に合わせて違った姿で描かれている。
彼女の生活を辿りながら彼女の本当の姿を探していく。

うーん、あらすじを書きようがない。
かなり前衛的でアングラチックなお芝居だった。

早い台詞の掛け合いを繰り広げたと思えば
次の瞬間にはその人々はコロスに変化し、いきなり舞踊を踊り出したりする。
怒鳴りあったと思えば急に沈黙が訪れ、無感情な群唱が始まったり、
急に元気なストーリーテラーの女の子が現れたり。
突発的かつ抽象的で、さらに展開スピードが半端ない。

最近こういったお芝居は少なくなっている。
こういう演出に初めて出会った人も多かったであろう。
他のお客さんからきょとんとしている雰囲気が伝わってきた(笑)

確かにストーリー自体は椿姫を追いかけているものの、
わかりづらくて、自分も疑問符をたくさん浮かべながらの観劇になった。
どういった意図で演出をつけたんだろう?
抽象的というよりは、ただ妙な動きをやっているだけ?っていう印象を受ける部分も多くて、
常に疑問符が頭の中で踊って芝居に集中する邪魔をしていた。

ただしそれを補っていたのは役者陣の巧さだと思う。
感情のオンオフの使い分け、無表情の中での目線だけの演技など、
目を見張る役者がたくさんいてお客をちゃんと引き込んでいってくれている。
特に男性陣はなんとも表現し難い不思議な魅力を常に醸していた。
オーディションで集めたらしいが、良い素材を起用しているなと思った。


まぁ、そんな感じの感想かな。
こういった演出の芝居だと、感想を文章にするのって本当に難しいね。
考えるより感じろ的な部分が多いのでどうしても論理立てて文章を書きづらい。

このajiという団体、他の作品もなんだか気になるなぁ。
今回の「椿姫」を手放しに絶賛面白いと思ったわけではないのだが、
何かが尾を引く、不思議な作品をやる団体だなと思った。

これは演出の術中にハマッちゃってるってことなのかな?(笑)


 

◎日々是劇評

劇場

APOCシアター
Art Theater かもめ座
KAAT 神奈川芸術劇場 ホール
KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ
pit北/区域
RAFT @東中野
アサヒ・アートスクエア
アトリエだるま座
ザムザ阿佐ヶ谷
シアターコクーン
シアター風姿花伝
シリウス・ビー
すみだパークスタジオ
ラゾーナ川崎プラザソル
王子小劇場
下北沢 「劇」小劇場
下北沢 OFF・OFFシアター
下北沢 シアター711
下北沢駅前劇場
絵空箱
吉祥寺シアター
高円寺明石スタジオ
座・高円寺1
笹塚ファクトリー
参宮橋トランスミッション
上野ストアハウス
上野小劇場
新宿 スペース雑遊
新宿 紀伊国屋ホール
新宿サンモールスタジオ
新宿シアターサンモール
新宿シアターブラッツ
新宿シアターモリエール
新宿タイニイアリス
神奈川県立青少年センター ホール
神奈川県立青少年センター 多目的プラザ
赤坂レッドシアター
川崎H&Bシアター
浅草橋アドリブ小劇場
相鉄本多劇場
大倉山記念館 第四集会室
大和田伝承ホール
池袋 シアターKASSAI
池袋シアターグリーン BASE THEATER
池袋シアターグリーン BOX in BOX
中野HOPE
中野MOMO
中野ウエストエンド
中野ザ・ポケット
中野テアトルBONBON
東京芸術劇場 池袋シアターウエスト
東松原ブローダーハウス
日暮里 d-倉庫
八幡山ワーサルシアター
文京シビック小ホール
北池袋 新生館シアター
本願寺ブディストホール
夢の島公園 テント劇場
六行会ホール
和光大学ポプリホール
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団体

(企)劇団思い出づくり
47ENGINE
613
8割世界
9-States
A・M・D企画
aji
Broadway musical
CAP企画
COTA-rs
CP Project
DULL-COLORED POP
HIME企画
Human Art Theater
IQ5000
Kanikuso
LiveUpCapsules
MS2
Office Months
Oi-SCALE
OUT of WIT
Platform
Re:Play
SORAism company
Studio D2
STUDIO HeadZ
The Dusty Walls
アトリエ・ダンカン
いと、まほろば
ヴォードヴィルの会
オールアクトカンパニー
カプセル兵団
からふる
シノハラステージング
セブンスキャッスル
ソラリネ。
ナイロン100℃
ネコ脱出
メガロザ
らちゃかん
リトルプラネット
開幕ペナントレース
企画ユニットあいてむぼっくす
空想組曲
空想天象儀
芸術集団れんこんきすた
劇団IQ5000
劇団PEOPLE PURPLE
劇団SSP
劇団お座敷コブラ
劇団くりびつてんぎょう
劇団ニコルソンズ
劇団マチダックス
劇団メリーゴーランド
劇団宇宙キャンパス
劇団喫茶なごみ
劇団東京晴々
劇団熱血天使
劇団扉座
劇団離風霊船
座・あおきぐみ
子供脳みそ
神奈川県演劇連盟
人衣企画
青少年のための芝居塾
川崎インキュベーター
相模舞台同盟
張ち切れパンダ
天才劇団バカバッカ
東京都カリスマイル
虹の素
梅パン
風雲かぼちゃの馬車
平熱43度
野戦之月海筆子
立体再生ロロネッツ
立体親切
流星揚羽
緑慎一郎とミユキーズ
零’sRecord企画
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外部リンク

演劇感想文リンク
こりっち舞台美術!