日々是劇評

関東圏内で観劇した舞台について率直に感想を書いています。
自分用の備忘録みたいなもんなんで遠慮なく辛口な批評もしています。

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Human Art Theater 「手塚治虫ドラマシアターW」  @笹塚ファクトリー 2013/08/09

※本文中に激しくネタバレ含みます!
 上演中の公演についてこれから観劇予定の方は閲覧ご遠慮ください。


Human Art Theater
「手塚治虫ドラマシアターW」

2013/08/09更新  ≪笹塚ファクトリー≫ ≪Human Art Theater≫ ≪2013/08

Human Art Theater 「手塚治虫ドラマシアターW」

Human Art Theater 「手塚治虫ドラマシアターW」

【原作】
手塚治虫

【脚本】
神谷崇、工藤龍生、宮沢仙吉

【総合演出】
工藤龍生

【キャスト】
第一部「紐」:
鎌田義之、仁木紘、保住和、田中裕二、宇野智明、本間翔、
松浦未唯、荒牧佳鈴、畠山葵、中村友香

第二部「カノン」:
山田洋嗣、橋宏行、岡優里、梨木まい、宇野智明、香月柊人、本間翔、
松浦未唯、間中美妃、小松拓聖、野銀士、橋和音、重野優介、
田中艶月、中川李奈、大場啓博

第三部「鯨にのまれた男(ブラックジャックより)」:
深川圭、荒木香捺、小松樹知、香月柊人、樋山右京、清水恭子 
後藤啓吾、夢守河村、小林和輝、仁木紘

【日程】
2013年8月7日(水)〜11日(日)

【会場】
笹塚ファクトリー

【チケット料金】
前売  4,500円
当日  4,800円

学割  各1,000円引き

【公式HP】
http://www.human-art-theater.jp/

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手塚治虫作品の舞台化オムニバス3本立て。

最一部「紐」:
汚れきった下界を綺麗にする装置を作った御釈迦様。
罪がある人間の前には紐がぶらさがるようになり、
それを巡ったいろんな人間のその人間模様を描く。

第二部「カノン」:
廃校になり、もう誰もいないはずの母校を同窓会で訪れた主人公カノン。
そこには30年前の今は亡き同級生たちが子供の姿のままで彼を待っていた。
そこで振り返る彼らとの幼少の頃の思い出・・・。

第三部「鯨にのまれた男(ブラックジャックより)」:
海難事故で鯨に丸呑みにされてしまった学生たち。
その唯一の生き残りである正一は、鯨の胃液の影響で記憶を無くし、
見た目も全く違う、まるで別人になってしまっていた。
記憶を失った息子とその母のぎこちない共同生活。
記憶を取り戻すために四苦八苦する親子のヒューマンドラマ。


以上、三部構成のオムニバスで、
ストーリーはおおまかこんな感じ。
上演時間は合計2時間だった。



えーと、どうしようかな。


なんて書いていいのか言葉に迷う。
どうしたらいいんだろうか、
そう思うぐらいにひどかった。


まず脚本に関して。

自分は手塚治虫作品を熟読しているわけではないので
原作と今作品との細かな違いなどはわからない。
なので脚本に関しては自分がとやかく言う立場ではない。
特におかしなところも感じなかった。


次に役者面。

毎回オーディションで集めているらしいが、
演劇的訓練をされているであろう人間が2、3人だけ。
あとは初舞台と言ってもおかしくないレベルの烏合の衆だった。

誰も彼もがセリフ回しは驚くぐらいに棒読みだし、
毎回句読点のたびにブレス入れないとしゃべれない人なんかも。
相手のセリフを聞けていないから会話テンポも違和感だらけ。
シーンのフォーカスを理解してなくて、人が大事なセリフをしゃべっているときに
脇で遊んで悪目立ちするパターンが多数。

はっきり言って4,500円の舞台に立ってはいけない人ばかりだった。
企画側はいったい何を考えてキャスティングしているのか。


そして演出面。
これが何より一番ひどい。

要所要所で背景にプロジェクターで映像を出しているのだが、
その映像の枠が小さすぎて迫力は全然ないし、ピントも合ってない。
表示される文字は細かすぎて全く読めないし(私視力1.5ですが)、
頑張って読もうと目を凝らした矢先に消えてしまうという超短い表示時間。
・・・もうアホなの?

そもそも「舞台装置ゼロの素舞台で風景描写を全て映像に頼る」ってこと自体が
演劇としては超が100回付いても足りないぐらいの悪手。
映像に頼り切って表現するなら何のために舞台化したの?
最初から映画化・アニメ化でいいじゃん。


また、舞台装置は前述したとおりパネルさえ用意されていない素舞台なので
玄関の扉や、箪笥、戸棚、洗面台などの表現は全てマイムで行われていた。
このマイムの動きがこれまたあざといのだ。
自然にやればいいのに、路上パフォーマンスで大道芸人がやるような、
キメを作った流線的な動きで箪笥やその引き出しの開け閉めを表現する。
普通の芝居の中でこれをされると気持ち悪くて仕方がない。

無声パントマイムで引き出しや戸棚を開け閉めするだけのシーンが
劇中で3分間ぐらいあったのだが、一体なんだったんだろうかあの時間は。
演出の工藤氏に過去にパントマイムを学んだ経験があるらしいが、
もう、ただその技術をお披露目するだけの時間にしか思えなかった。
作品の中では邪魔以外の何物でもない。


小道具もほとんどマイムで表現しているのだが、
たまに実物を出している物があったりして、演出の方向性がまったく不明。
絶対に必要なキーアイテムだけ実物を出すっていうならまだともかく、
「これは用意するのに、これはマイムなの?」みたいなのが多数あった。
なんだろう、小道具として用意できたものだけ実物出して、
揃わなかったものはマイムにしちゃえー的なものなんだろうか?(笑)


そんな中ちょっと笑ってしまったのは、靴。
舞台上に装置も小道具もほぼ何もないのに
玄関とおぼしき場所では律儀にみんな外履を脱ぐ。
素舞台にぽつんと放置されている靴、その横でマイムを駆使して演技している役者。
シュールすぎて、ある意味芸術的だよ(笑)


もう勘弁してー。



今回の芝居、上演許可を出している手塚プロダクションは
いったいどういうふうに見ているのだろうか?

はっきりいって、自分はこの作品は、
手塚治虫にも失礼だし、舞台好きにも失礼だと思う。

手塚治虫をよく知らない人が観たら
「手塚治虫って別に面白くもなんともないんだな」と思うだろうし、
手塚治虫ファンが観たら
「舞台ってつまんないんだな」と思うだろう。

そういうクオリティの作品。
4,500円とってよい作品からは程遠い。
高校の文化祭でみかける出し物のレベルよりひどいと断言する。
「4,500円のもの注文したら500円ぐらいのものが出てきた」と
消費者庁に問い合わせできないものかと考えてしまったぐらいだ。


この企画、今回が4回目で次の5回目も予定があるらしいが、
正直言ってもうやめてほしいと思った。
手塚治虫作品の評価を下げ、観劇客を不快にし、
観劇人口を減少させるだけの誰も得をしない企画。


ほとんど用意されていない舞台装置と小道具、
役者の持ち寄りで間に合うであろう衣装、
種類の少ない地味な照明、
チープで低予算そうな映像、
そしてバカ高いチケット代 4,500円。

いったい誰の懐が温まってるんだろうね?(笑)
収支報告書とか覗いてみたいもんだ。


 

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