日々是劇評

関東圏内で観劇した舞台について率直に感想を書いています。
自分用の備忘録みたいなもんなんで遠慮なく辛口な批評もしています。

絞り込み 劇場=「八幡山ワーサルシアター」

平熱43度 番外公演微熱43度 「アシュラ」  @八幡山ワーサルシアター 2013/12/16
カプセル兵団 「SPACE一休」  @八幡山ワーサルシアター 2013/11/24
カプセル兵団超外伝 吉久直志プロデュース公演 「アベンジャーズ」  @八幡山ワーサルシアター 2013/04/30
劇団熱血天使 第7回公演 「一筆入魂 締切追うもの、追われるもの」  @八幡山ワーサルシアター 2013/04/21
カプセル兵団 番外公演 「ゾンビ×幽霊×宇宙人 オール恐怖大行進」  @八幡山ワーサルシアター 2012/07/23
東京都カリスマイル 「トラウマニア」  @八幡山ワーサルシアター 2012/03/19

※本文中に激しくネタバレ含みます!
 上演中の公演についてこれから観劇予定の方は閲覧ご遠慮ください。


平熱43度 番外公演微熱43度
「アシュラ」

2013/12/16更新  ≪八幡山ワーサルシアター≫ ≪平熱43度≫ ≪2013/12

平熱43度 番外公演微熱43度 「アシュラ」

平熱43度 番外公演微熱43度 「アシュラ」

【作】
小池利明

【脚色・演出】
桃原秀寿

【キャスト】
〈阿形〉
宝栄恵美(平熱43度)、内山正則(時空動画)、片山耀将(シアターキューブリック)、
クシダ杏沙(ASSH)、四宮勘一(candid)、高橋優都子、塚本健一(マグネシウムリボン)、
柳瀬翼(劇団宇宙キャンパス)

〈吽形〉
籠谷和樹(平熱43度)、松本祐一(平熱43度)、秋山慎治(うぃなぁエンタテイメント)、
石川毅、原田明希子(スーパーグラップラー/銀色金魚)、松山由紀子(ELEGYKING STORE)、
宮内利士郎(原色mixer)、吉留明日香

【スタッフ】
舞台監督: 丸山賢一
照明: 朝日一真
音響: 土屋由紀
スチール: 鏡田伸幸
宣伝美術: ツチヤコウヘイ(Notes)
ダンス振付: ME☆GU
制作協力: 石井恵利華(エムキチビート)
企画・製作: 平熱43度

【日程】
2013年12月11日(水)〜12月15日(日)

【会場】
八幡山ワーサルシアター

【チケット料金】
前売  3,000円
当日  3,500円
高校生以下  1,500円
通し券  5,000円

【公式ブログ】
http://43deg.com/

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軍事開発として極秘裏に研究されていたウイルス。
これが事故により漏れてしまった。

このウイルスは、人間に感染すると風邪にも似た初期症状を発症するが、
後にその体に変異を起こし、人によってはエスパーのような特殊な力を持つようになる。
人々は感染者を忌み嫌い、迫害・隔離の対象にしていた。

そんなとき、感染者によるアシュラと呼ばれる反政府組織が発足。
防衛長官をもその特殊な力で暗殺するその行動に、
政府は本腰を入れて彼らの完全抹殺に乗り出してくる。

主人公・秋生は政府の特殊部隊に所属していた。
ウイルスの感染者はほとんどが子供。
彼らを抹殺する任務に自問自答する彼だが、
なんとそのとき恋人の紗来も感染者だったことを知る。

秋生は紗来を逃がし、感染者抹殺の任務に向かう。
戦争を止めたい紗来は感染者達と自分達の人権を訴えるデモを起こそうと考えて、
感染者の子供たちの協力を得て施設に向かう。

対峙してしまう秋生の部隊と紗来たち。
彼らは殺し合い、その中で秋生も命を落としてしまう。
不幸な巡り合わせに泣き悲しむ紗来。
泣き止んで立ち上がったときの彼女の顔は、
すでに全面戦争に臨む反政府組織のリーダーとなる顔であった。

幕。


大体おおまかにはこんな感じのお話。
上演時間は1時間50分。


出演する役者は8人だけなのだが、彼らには全員役が2つ与えられており、
政府側と反政府側でそれぞれ1役ずつ。
「ゼロ転換」と呼ばれる一瞬でシーンを切り替える手法でめまぐるしくシーンを展開し、
政府サイドと反政府サイドのストーリーを同時進行で描いていた。

16役を8人でやるという発想がおもしろい。
一瞬で政府サイドと反政府サイドの場面が切り替わるため、
役者の物理的移動時間が排除され、お客がダレる瞬間が全くない。
観ていて脳みそが熱くなるぐらいに疲れるが、こういう種の観劇疲れは心地よいものだ。
(年配の方にとってはゆっくり観れなくてしんどいかもしれないが 笑)

特に子供たちが壁の隙間に追い込まれているシーンの展開は見事。
演劇であの臨場感はなかなか他で観ることはない。


全体の演出としては、ほぼ素舞台の中で役者が自分の体のみを駆使して表現する手法。
展開のスピード感などは、かつて惑星ピスタチオでやっていたそれに近いものがある。
「ゼロ転換」ってやり方もそうだし。

こういった演出法も最近は決して珍しいわけではないが、
この団体のそれはとにかくキレがものすごい。
役が入れ替わるその瞬間が、しっかりとその場の役者全員で共有されていて乱れがない。
それでいて一人一人の切り替えのメリハリも素晴らしい。
相当な量の稽古があったのではないか。


脚本に若干ムチャがあった感はある。
テレポーテーション能力がある時点で暗殺は簡単なわけだし、
ほかの能力も「もっとこう使ったらうまくいくじゃん」みたいなものがあったので、
そのあたりは若干ご都合主義部分があったかなと。

しかし、ラストの殺し合い→ヒロインの号泣→立ち上がって歩き出す、の流れは
本当にセンスの良い演出がされている。
鮮やかで、切なくて、悲しくて、そして力強い。
観ているこちらの心をガンガンに揺さぶってきていた。


ちょっと声量のバランスの悪さが気になったが、
(ワーサルでそんなに大声でがならなくても、って部分が序盤から非常に多い)
全体的に観て本当に練って作られた作品だと思う。

拍手。


 


カプセル兵団
「SPACE一休」

2013/11/24更新  ≪八幡山ワーサルシアター≫ ≪カプセル兵団≫ ≪2013/11

カプセル兵団 「SPACE一休」 カプセル兵団 「SPACE一休」

カプセル兵団 「SPACE一休」

【作・演出】
吉久直志

【キャスト】
吉久直志、青木清四郎、周晴奈、岡田勇輔、瀬谷和弘、矢島慎之介、
中山泰香、工藤沙緒梨、菊地良明、北啓志、森澤碧音、浦濱里奈

【スタッフ】
舞台監督: 笹浦暢大(うなぎ計画)
照明: 小坂章人
音響: 田島誠治、澤木正幸、小野谷大和
振付: 森澤碧音
アクションコーディネイト: 吉久直志
写真: 渡邊純子
衣装: 周晴奈
小道具: 青木清四郎
ウェブデザイン: 庄章子
制作: 山下那津子、矢澤正英、麻耶さとき
企画・製作: カプセル兵団

【日程】
2013年11月20日(水)〜11月24日(日)

【会場】
八幡山ワーサルシアター

【チケット料金】
前売  3,300円
当日  3,800円
平日マチネ割 3,000円
学割  2,500円

【公式HP】
http://kapselheidan.com/

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近未来を舞台にした宇宙SF。

戦闘マシーン・バイオロイドとして開発された一休と義満。
彼らの戦いにより魔光エネルギーが全宇宙に拡散してしまった。
魔光は触れた者の心身に異常をもたらし、ときには魔物化までさせてしまう。
魔光を浴びてしまった人は忌み嫌われ、強い迫害を受けていた。

50年後、バイオロイドによる世界征服を目論む帝国軍を築き上げた義満。
一方、一休はあてもなく宇宙を彷徨う旅を続けていた。
魔光を浴びてしまった人々を救う方法を探すため、
ときには魔物化して暴走してしまった人々を自分の手で供養するため。

そんなときに一休は過去に滅んだ惑星ミラールの女王・サヨに出会う。
彼女と彼女の持つ青い勾玉には大きな力があり、
それを狙う義満から一休は彼女を守ることになる。

そして反乱軍や流れ者のシンエモン、退魔師のチンネンなどを仲間に加え、
帝国軍との決戦に臨む。

多くの仲間を失いながらも義満の野望を打ち砕いた一休。
また孤独になったかに見えた彼だったが、
そこに生還したチンネンがひょっこりと姿を見せる。
2人は共に旅立つ。

幕。


だいたいこんな感じのお話。
上演時間は2時間と5分ぐらいあったかな。


格闘アクション満載、パワーマイム満載、ギャグ満載の
いつもながらのカプセル兵団って感じの作品だった。
熱血ヒーローもの的な王道を展開しながら、型破りなギャグでお客を腰砕けにする。
お客を選ばない、誰でも肩の力を抜いて気楽に楽しめる作品。


今回の作品は、あえて客演を呼ばずに劇団員のみでのメンバー構成にしたとのこと。
この劇団は、普段は実力派の客演を集めてそれをメインにして公演を打っていて、
比較的若手の劇団員たちはそれほどピックアップのない端役で起用されていることが多い。
観劇前にそういう部分で、正直クオリティに心配なところはあった。

しかし、そんな心配も杞憂。
たしかに役者自身の個性という点では普段より物足りない部分はあったが、
クオリティとして普段より劣化しているかといわれると、特別そんな印象は受けなかった。
劇団としても、劇団のファンとしても安心できる作品の提示ができたのではないだろうか。


オープニングシーンは残念だなと思った。
大音量の中でめまぐるしくフォーメーションチェンジしながらしゃべりまくるのだが、
群唱部分などは全くセリフが聞き取れなかったため、
状況をほとんど理解できず芝居の中に入っていけなかった。
物語の導入にあれはもったいない。

中盤以降は役者の喉が温まったのか、
音響オペがボリュームを絞り出したのか、
それとも観客の耳が慣れたのか、
特に問題には感じなかったのだが。

ただでさえ情報量の多いオープニング。
物語そのものの状況説明はもちろんのことだが、
この劇団の場合は、あの独特な演出手法をお客にきっちり提示する必要がある。
自分の肉体のみで、宇宙船や、化け物、壁、全てを表現しながらも、
一瞬で役者が演じている役がまったく別のものにスイッチする。
(主役を演じていた人が、次の瞬間いきなりザコ雑兵になったりする)

その提示すべきオープニングが、パワー押しのグジャグジャしたものになってしまうと、
お客の脳は理解不能のものに対してオーバーフローしてポカーンとなってしまう。
これでもかというぐらいに洗練された(もちろんパワーも保ったまま)クオリティのものを
オープニングで展開して、お客を引き込めていればより良かったなと思う。


中盤はちょっと中だるみ?
アクションやギャグのない会話だけのシーンになるとちょっとダレる空気が。


惑星グリーフの話は非常に良かった。
ここに限らずだが、これだけ多い登場人物の内面を
短時間でしっかりと描写しているのは素晴らしいと思う。

登場人物それぞれに自分の道を生きる理由がある。
そういう人間が己の信じるもののためにぶつかりあうから、観ていて心が動く。
そんな彼らが悲しい音楽の中で戦うシーンはホロホロしてしまう。


今回の作品の観劇を通じて、
団体のより良いものを目指す姿勢が感じられたことも良かった。
また次に期待。


 


カプセル兵団超外伝 吉久直志プロデュース公演
「アベンジャーズ」

2013/04/30更新  ≪八幡山ワーサルシアター≫ ≪カプセル兵団≫ ≪2013/04

カプセル兵団超外伝 吉久直志プロデュース公演 「アベンジャーズ」

カプセル兵団超外伝 吉久直志プロデュース公演 「アベンジャーズ」

【脚本・演出】
吉久直志

【キャスト】
吉久直志、北出浩二(teamSPITFIRE)、西村太一(ジャングルベル・シアター)、
遠藤公太朗、千田剛士(シアターキューブリック)、青木清四郎

日替わりゲスト:
小川輝晃、関智一、IKKAN、津久井教生、トクナガヒデカツ

【日程】
2013年4月25日(木)〜29日(月・祝)

【会場】
八幡山ワーサルシアター

【チケット】
前売り 3,500円
当日券 3,800円

【公式HP】
http://www.kapselheidan.com/

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先輩ヒーローの葬式に集まった男6人の物語。
彼らもみなヒーロー。
そのヒーロー達はみな年代はバラバラで、
ジャンルも改造人間型、強化服型、宇宙人型、獣人変化型と様々。
思い出話やヒーローあるあるなどをひたすら話し、
最後にはヒーローとしての自分の存在意義にまでテーマが移る。


非常に面白かった。

SFアクション活劇がお決まりのカプセル兵団だが、
今回はまさかの男6人ワンシチュエーション会話劇。
ヒーローの存在意義と進退を考えるという最終的なテーマはあるが、
基本的には、ただひたすらヒーローあるある的なおしゃべりをしていた。

それだけといっちゃあ、それだけなのだが、
話している内容がとにかくおもしろい。
かのヒーロー大戦のときは声をかけてもらえなくて悲しかったとか、
性能的に後輩ヒーローに劣るのに気を遣われて前のほうに配置されたとか、
ヒーローが実在していたならそういうのあるよなぁというような
おもしろいエピソードが満載だった。

けっこうマニアックなネタをしゃべっているときもあったが、
その作品を知らなくても十分理解できることが多く、
ヒーロー特撮に知識がない自分でもちゃんと楽しめた。
(知っていればもちろん楽しさ倍増だったのであろうが)

ヒーロー特撮の今と昔の話を話しているので
自分の世代のヒーローの名前が出てくると共感できて嬉しいし。

あと終わり方もスッキリしていて良い。
引退を考えていた中年ヒーローが、現れた巨大怪獣と戦っている後輩たちの姿をみて、
気持ちの奥底にあるヒーロー魂を再燃させて向かっていく。
ヒーローを題材にした作品としては「そうこなくっちゃ」と思わせる、
最高の終わり方だったように思う。


そして役者6人の地力がしっかりしているのが大きい。
ナチュラルにしゃべる会話劇だと役者の地力がモロに出るものだが、
穴になっている役者が誰もいなかったので
終始グイグイと引き込まれていった。

ゲストタイムの暴れっぷりもあそこまでいくとスガスガしい(笑)
こういう遊び心を忘れないのもこの団体の魅力であろう。


唯一残念だったのは立ち位置かな。
チラシにあっただろうか、宣伝文句として
「稽古で立ち位置などを全く決めない、その日によって構図が全く違う芝居」
というのがあったのだが、
役者が被ってしまっていたり、一列に並んで構図が汚かったりというシーンが
全体でけっこう目に付いていた。
正直見ているこっちとしてはあまり嬉しい試みではなかったように思った。


今回の公演は「カプセル兵団超外伝」と銘打っていたが、
超外伝と言わずにぜひ定期的にやってほしいと思った。
そうしてくれれば自分の今後の観劇生活がまたひとつ楽しくなる。


 


劇団熱血天使 第7回公演
「一筆入魂 締切追うもの、追われるもの」

2013/04/21更新  ≪八幡山ワーサルシアター≫ ≪劇団熱血天使≫ ≪2013/04

劇団熱血天使 第7回公演 「一筆入魂 締切追うもの、追われるもの」 劇団熱血天使 第7回公演 「一筆入魂 締切追うもの、追われるもの」

劇団熱血天使 第7回公演 「一筆入魂 締切追うもの、追われるもの」

【作】
水谷暖人

【演出】
高橋祐介

【キャスト】
大坂真璃子、金澤洋之、菅沼萌恵、鈴木紀進、大柿誠、
北川瞬((株)SPARK)、菅沼哲、高山史也、田山楽、丹呉麻里江
水口早香、三橋忠史(ダブルアップエンタテインメント)、宮尾知里
吉田彩花

【日程】
2013年4月17日(水)〜21日(日)

【会場】
八幡山ワーサルシアター

【チケット料金】
一般   \3000
学生   \2800
平日割・初日割 一般2,800/学生2,500

【公式HP】
http://ameblo.jp/nekketsu-tenshi/

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芥川龍之介が新思潮を刊行する1914年前後のお話。
創作に対しての芥川、菊池、久米、松岡らのそれぞれの想い、
彼らに関わる編集者や婚約者、妻の想い、
それらをうまく絡めた人間ドラマを
「無名作家達の一日」、「或る求婚者の話」、「締切戦争」、「話の育て方」の
4本立てのオムニバスで上演している。


チラシやパンフにはオムニバスと書いてあったが、
実際にはこの4つの話に出てくる登場人物は共通で、時系列もそのまま並んでいるところから、
4場構成の1つの演劇作品といったほうがいいかもしれない。

1話目は、書きたい作品と売れる作品との確執、
そしてその才能に悩む若者たちの話。
2話目は、友人の婚約者に執拗に言い寄られる作家のドタバタ劇。
3話目は、締め切りに終われる作家を囲む編集者達と妻とファンの、
これまた多人数型のドタバタ劇。
4話目は、自分の才能がなかなか認められず作家の道をくじけそうになっている若者を
珈琲店の女将が叱咤激励する話。


個人的には2話目のコントチックなおもしろおかしいやりとりが好きだった。
登場する3人の役者はどれも個性的でおもしろく、
ボケとツッコミのテンポの良さは非常に秀逸で、大いに笑わせてもらった。

作品としてのまとまりが一番良かったのは3話目かな。
締め切りを守らせつつも作家を持ち上げたり、作家の将来を考えたりしている編集者達、
作家の一ファンで、その作家をダメにしないためにいろんな努力をみせる女性、
作家の妻という立場のおかげで締め切り前のドタバタ騒動に巻き込まれている奥さんの心情。
そしてアイデア不足に悩み苦しむ作家本人。
たぶん、観ていたお客さんも実際に登場人物のどれかに近い立場で仕事をしていると思うので、
どこかのポジションに感情移入できたのではなかろうか。

1話目は正直イマイチ。
会話劇なのに妙に元気にハキハキと声を張り上げる役者が多くてちょっとゲンナリしてしまった。
登場人物が沢山いたわりには引っ張れる役者は不在で、
お客を惹きつけなければいけない1話目としては残念な仕上がりに感じてしまった。

4話目は珈琲店の女将の安定した演技力に支えられて
すっきりとまとまっていた。
登場人物の役割とキャラ立てがしっかりしていたせいもあるだろう。
見やすいし、話的にもしんみりと心に染み込んでくる良いお話。

全話通して全体的にみれば、しっかりと作られていてテンポもよくて
素直に楽しめる作品だったと思う。


ちょっとだけ気になったのは「一筆入魂」というタイトル。
最後の話のまとめを平たく言うと、
「苦しいことをなぜ続けることができるのか、それは今日だけはがんばるを毎日続ける」
といった旨の内容だったのだが(ちょっと平た過ぎる言い方で語弊がありそうだが)
自分が持っている「一筆入魂」という単語のイメージとはちょっと遠い気がした。
その点だけ観劇後に違和感として残っちゃったかな。

しっかりとした地力のある集団だと思った。
次の公演も楽しみにしたい。


 


カプセル兵団 番外公演
「ゾンビ×幽霊×宇宙人 オール恐怖大行進」

2012/07/23更新  ≪八幡山ワーサルシアター≫ ≪カプセル兵団≫ ≪2012/07

カプセル兵団 番外公演 「ゾンビ×幽霊×宇宙人 オール恐怖大行進」

カプセル兵団 番外公演 「ゾンビ×幽霊×宇宙人 オール恐怖大行進」

【脚本・演出】
吉久直志

【キャスト】
ノーマルバージョン:
吉久直志・周晴奈・瀬谷和弘・岡田勇輔・工藤沙緒梨・森澤碧音(DanceCompanyMKMDC)・
遠藤公太郎・林潔・小林美穂・仁木紘・若林辰也(優演隊)・神里まつり・福山渚・
中森康仁(株式会社碗)

バカバージョン:
吉久直志・周晴奈・青木清四郎・庄章子・中山泰香・北出浩二(team SPITFIRE)・
熊手竜久馬(虹の素)・五十嵐勝平・石神まゆみ・大場トシヒロ・渕井達也・谷口明日菜・
國崎馨(スターダス・21)・西村太一(ジャングルベル・シアター)

【日程】
2012年7月12日(木) 〜 22日(日)

【場所】
八幡山ワーサルシアター

【チケット】
前売・当日 2,800円
2バージョンセット券 5,000円
※14日〜16日限り、中学生以下3名までの同伴無料

【公式HP】
カプセル兵団 公式HP

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ゾンビに追いかけられた若者たちが逃げ込んだ屋敷は、有名な心霊スポットだった・・・。
屋敷の中で起きる怪奇現象の数々。
外にはゾンビ、家の中には幽霊が待ち構える絶体絶命の状況へ
様々な人々が逃げ込んでくる。
はたしてこの状況を打破することはできるのか!?

新しい演劇の可能性に挑戦し続ける劇団、カプセル兵団が
「飛び出す演劇」「ビジュアルイマジネーション」に続き挑戦するのは「ダブル演出」!!
同じ脚本を使い『ホラー』と『コメディ』相反するジャンルの作品を作り上げる!
超実験的シチュエーションホラーコメディ。

以上が公式HPより転載した公演詳細。


ノーマルバージョン、バカバージョン両方を観たが、
まぁ、普通に面白かった。
シチュエーションコメディとしてスピーディーに展開していて、
笑わせどころの数も質も良し。
頭を使わずに目に映るものを純粋に楽しめばいいという、単純な作品に仕上がっていた。

いや、うん、十分面白いと思う。
そのへんの劇団が作る作品の水準にはちゃんと達している。
・・・しかしやはりこれは言いたい。

カプセル兵団ってもっとスゴい事やってくれる団体じゃなかったっけ?
「え!?マジで!?」みたいな演出を毎回見せてくれる団体じゃなかったっけ?
これは高望みし過ぎだろうか。
「カプセル兵団の作品」を期待していた者としては今回の作品、不満が多かった。


まずはストーリー的な部分。

「オール恐怖大行進」というわりには、恐怖を演出できていたのは序盤の迫り来るゾンビぐらい。
幽霊はそのへんのお化け屋敷程度の演出でしかないし、そのシーンも少ない。
宇宙人にいたっては完全に登場時からギャグ要素でしかない。
(個人的には感情が読めないリトルグレイみたいなのを期待していたのだが)
そしてそのあたりから完全に話がコメディ的にまとまり始めてしまい、
それまで怯えていたはずの登場人物が、ゾンビも幽霊も全く恐れないモードになってしまったのだ。

いくらコメディーを目指していたにしても、それまでの恐怖が途中でなかったことになってしまうのは
やはりいただけない部分だと思う。
観ていたこちらも、序盤はその世界観と迫りくる恐怖にちゃんと引き込まれていたのに、
途中から急に現実味のないギャグ世界としてしか見れなくなってしまった。
そうなってしまうと、事件解決に向けて行動している彼らからは全く必死さが伝わってこなくなり、
ストーリー全体が急速に陳腐で薄っぺらいものになってしまう。

あと脚本にご都合主義部分やツッコミどころが多過ぎる。
宇宙人を噛むだけでゾンビ化が治ったり、
何の医療設備もない場所で特効薬が作れたり、
幽霊が館と無関係なのに地縛霊だったり、
序盤あんなに恐怖だったゾンビを、終盤は皆あっさりかいくぐって行動していたり、
工業高校の生徒がいとも簡単に故障したUFO直せたり...etc。

コメディだから細かいトコはいいや、って目をつぶってもよい量を超え過ぎていた感がある。
これも話が陳腐に感じられてしまう要因になってしまった。

そしてラストの幽霊との約束を果たすシーン。
シーンとしては良くできているし感動もできる。
しかし個人的にこの作品の中ではものすごく浮いているように感じてしまった。
ホラーコメディってことなら最後にこのような形で感動を盛り込む必要はあったのだろうか?
焼肉定食をいままさに食べ終わりそうなタイミングで「あ、これサービスです」って
大きな海老天を出されたような、そんな感じの蛇足感。
そもそも幽霊が劇中で影が薄かったのもあってか、
余計に無理やり感動要素を付け足したような印象を受けてしまった。

脚本、もしかしてだいぶ迷走したのだろうか?
実際どうだったのかはわからないが、
まとめ方に苦労してとりあえずこういう着地点におさまったって感じがする。


次に演出面。

「ノーマルバージョンとバカバージョンの2パターンの演出!」
というのが売り文句だったのだが、
蓋を開けてみれば小ネタを詰め込んでいるかどうか、ってだけの違いだった。
「全く違う演出」って言葉を取り違えると肩透かしをくらってしまう。

そして出来としてはノーマルに関しては全く問題がないのだが、
バカのほうはちょっと難アリかなと思った。

元々コメディ要素が多い台本にも関わらず強引に小ネタを入れてきているので
台本上の本来の笑い所を殺している場所が多かった。
あとギャグの多さによって登場人物の真剣さがなくなるので
館に追い込まれている緊迫感が皆無になり、ストーリーに引き込まれづらい。
そのわりに終盤はまとめに入るためなのか極端にギャグが控えめになり、
ノーマルと同じように繰り広げられるラストの感動シーンにものすごく違和感を感じてしまう。
このへんがおもになんだかなぁと思ってしまった点。

ノーマルを先に観た後でのバカならパロディ版として楽しめる気がするが、
観る順番が逆だったり、バカだけしか観ない人は楽しみづらいのではないだろうか。
うーん、このあたりどうなんだろう。。。


長々と書いてしまったが、先にも書いたとおり十分面白い作品だった。
しかしこの劇団の持っている自力からすると、
今回の作品はいつものクオリティまで届かなかった 『失敗作』 に思える。
バージョン分けなどせずに、十分に時間と労力をかけて、
1本の作品を作ってほしかったなぁというのが正直な感想だ。

目線が厳し過ぎるかもしれない。
しかし、カプセル兵団だからこそ、もっともっと上のレベルを期待したい。
絶対にそれができる集団のはずなのだ。


 


東京都カリスマイル
「トラウマニア」

2012/03/19更新  ≪八幡山ワーサルシアター≫ ≪東京都カリスマイル≫ ≪2012/03

東京都カリスマイル 「トラウマニア」 東京都カリスマイル 「トラウマニア」

東京都カリスマイル ワーサルシアター提携公演 「トラウマニア」

【作・演出】
平田侑也×東京都カリスマイル

【タイムテーブル】
2012年
14日(水)→19時30分
15日(木)→14時30分/19時30分
16日(金)→14時30分/19時30分
17日(土)→14時30分/19時30分
18日(日)→14時30分

【料金】
3200円(全席自由・日時指定)

【劇場】
八幡山ワーサルシアター

【出演】
中村まゆみ、橋本カムイ、志井しおり、繁森優、宮崎優美、海野亮平、
中田豪一、升ノゾミ(黒色綺譚カナリア派)、衛藤将展(俳協)、ひらたゆうや

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この東京都カリスマイルは、
「役者の魅力を前面に押し出す作品を目指す」をコンセプトに、
2011年11月11日11時11分に始動した集団だそうだ。

 脚本が良いねと言われても、
 演出が良いねと言われても、
 作品が良いねと言われても、
 嬉しいけれどに違うのです。
 私達は「あの役者が良かった」と言われてガッツポーズを繰り出せるのです。

これは当パンに書いてあった文章だが、
全体より「役者の個」を前面に押してくるのは非常に珍しい。
いま思うと芝居を観る前から、「興味深さ」という点ですでに引き込まれていたのかも。


芝居は小さなボロアパートの一室で展開される。
大きなヤバイ仕事を目前にして家に帰ってきたチンピラ・和馬、
結婚詐欺にあって人生の再スタートのため戻ってきた元住人・愛を中心にして、
いじめられっこ中学生、元チンピラ先輩、料理人を目指して留学するつもりの女性、
画家を目指すホームレス、借金取りから逃亡中のヅラ男とその娘などなど、
個性あふれる10人の人間が織り成す失敗ばかりのハートフルストーリー。
ざっくりいうとそんな感じのお話。


・・・圧巻だった。


当パンの言葉通り、とにかく役者が魅力的。
登場人物としてみても、役者としてみても。

みな不器用な人間でちょっと感性がずれていたりもするけれど、
各々が自分なりに一生懸命に生きている。
登場人物全員の心情が理解できるから共感し、応援したくなる。
現実にこんな集団がいるならば自分も混ざってみたいと素直に思えた。

役者としても演技力が高くて非常に素晴らしい集団だった。
見せ方を熟知した上でキッチリと自然に演じきっている。
これは主催の人を集める力なのだろう。


そして「役者の個」を押しているとのことだったが、
脚本や演出も間違いなく一級品だったと思う。
センスのいい会話の妙で何度も何度も客席を笑いの渦に巻き込んでいたし、
温かみのあるシーンではナチュラルにほっこりされられた。

あとそんな中にシュールに登場してくるトラウマの象徴。
これは上半身がトラ、下半身がウマになっていて
まるで劇団四季のキャッツのようなメイクをしたもの。
開始30秒でこれが無言で出てくるのは卑怯だろ(笑)
しかも途中で何の説明もなく2人になるし(笑)
ハイセンス過ぎて降参だYO!(;´Д`)ノシ


とにかくあらゆる面で非常にレベルの高い素敵な作品だった。
次も絶対観にいきたい。


 

◎日々是劇評

劇場

APOCシアター
Art Theater かもめ座
KAAT 神奈川芸術劇場 ホール
KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ
pit北/区域
RAFT @東中野
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北池袋 新生館シアター
本願寺ブディストホール
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