絞り込み 団体=「Office Months」
Office Months 音楽劇 「ウレシパモシリ」 @ザムザ阿佐ヶ谷 2013/05/22
※本文中に激しくネタバレ含みます!
上演中の公演についてこれから観劇予定の方は閲覧ご遠慮ください。
Office Months 音楽劇
「ウレシパモシリ」
2013/05/22更新 ≪ザムザ阿佐ヶ谷≫ ≪Office Months≫ ≪2013/05≫
Office Months 音楽劇 「ウレシパモシリ」 【原作】 遠藤周作「おバカさん」 【作・演出】 阿部義嗣 【音楽】 AKIRA 【キャスト】 秋山秀樹、阿部よしつぐ、天野朋子、岩本潤子、岩倉真彩、浮谷泰史、遠藤瑠美子、 小笠原大史、小倉卓、河上泰子、気谷ゆみか、金城尚美、沓沢周一郎、熊倉滉希、 小西のりゆき、小林沙織、小林美歌、佐々木誠、さとう未知子、じぇいそん、 鈴木彬子、高田亜矢子、高松舞、武田桃子、田中利花、土肥真夕菜、主山ナオミ、 芳賀一之、橋本薫、羽根渕章洋、日野原希美、平川めぐみ、平林靖子、原田美穂、 藤田悠平、藤本ゲン、松下湧貴、三浦奏子、宮下舞香、望月龍平、守屋由貴、 安室夏、谷中しおり、山本有祐子 【日程】 2013年5月17日(金)〜26日(日) 【会場】 ザムザ阿佐ヶ谷 【チケット料金】 前売 3,800円 当日 4,000円 【公式HP】 http://ureshipamoshiri.com/ ========================================== 兄妹の元に突然下宿人としてやってきたフランス人ジェルマン。 彼はあのジャンヌ・ダルクの末裔だというが、 顔は冴えなく、格好も小汚く、体格も華奢で頼りない。 より多くの日本人に会いたいといって兄弟の元を離れたジェルマンは、 売春婦や占い師に助けてもらい一緒に時を過ごすが、 殺し屋をやっている遠藤に拉致されてしまう。 遠藤の復讐の道具として利用されるジェルマンだが、 彼の凶行を止めるべく自ら行動を起こす。 遠藤の最後の復讐相手・小森との騒動の中で 行方不明になってしまうジェルマン。 彼の仲間達がその安否を心配する中で、 まるで彼が生まれ変わったようなシラサギが皆の頭上を舞う・・・。 ざっくりと書くとストーリーはこんな感じ。 ちなみにウレシパモシリとはアイヌ語で「育み合う大地」の意らしい。 「音楽劇」と銘打っていたので てっきり登場人物がミュージカル的に歌い出すものかと思っていたが、 基本的には芝居自体はストレートプレイで、 芝居の要所要所で男性と女性の歌い手的な存在が現れて 登場人物の心情を歌い上げるような作りになっていた。 これのハマリ具合がとにかくすごかった。 歌い手の歌唱力・立ち振る舞い・表現力が非常にすばらしく、 曲のメロディ、歌詞も非常に芝居にマッチングしているために、 彼らが登場してそれを歌い上げるたびに心をグッと掴まれて 大きく感情を上下左右に揺さぶられる。 その心地よい揺さぶりに自分は幾度となく鳥肌を立たされた。 隣の女性客は歌唱シーンになるたびに鼻をすすって泣いていた。 とにかく素晴らしかったの一言に尽きる。 最近ミュージカルの人気が少しずつ高まってきたせいなのか、 小劇場でもとってつけたように歌唱シーンを入れてくる芝居が多い。 とりあえず歌入れときゃ感動するだろみたいな。 しかしそんな浅はかな考えを持つ演劇人全員にこの舞台を観て欲しい。 「劇中に歌唱シーンを挿入する」とはこういうことなのだと、 まじまじと実感させられるであろう。 歌以外の芝居部分も非常に秀逸。 ダブルキャストどころかクインティプルキャストまで存在するという、 稽古の労力を想像すると油汗が出そうなキャスティング方式にも関わらず、 穴になっている役者は(自分が観た回では)一人もいなかった。 フランス人の主人公ジェルマンを演じていた山下湧貴は 最初こそ違和感を感じたものの、中盤から本当に外人にしか見えなくなっていたし、 劇団四季の羽根渕章洋が演じた渋い味のあるヤクザは 悪人でありながらも人間臭さ・泥臭さが醸し出された魅力的な人物になっていたし、 野良犬ポールを演じた山本有祐子の動物的なコケティッシュな動きも見事。 もちろん他のメンツも非常に技量のレベルが高く、 よくぞここまで人を集めたなと思った。 風船や布を使った舞台装置もシンプルながら非常に綺麗だったし、 ガンガン炊かずにピンポイントで絞りに絞って使っていた照明も好感度が高い。 ピアノやパーカッションの生音・生演奏ももちろん良かったし、 客席上に2階があるザムザの特徴的な構造を活かして いろんな方角から立体的に音を出していたのも非常に効果的な手法だと思った。 個人的にいいなと思ったのは、 劇中で序盤から最後まで話題になっていた「ジェルマンが日本に来た理由」について。 ラストシーンで兄弟がこの追求を放棄したことにより、 最後までそれが明らかにならなかったことがよりお客の想像をかき立てて、 物語の奥行きと幅を広げてくれたように思った。 非常に刺激と元気を与えてくれた作品。 今回が再々演らしいが、もしまたさらにパワーアップした姿で再演してくれるのなら 自分は何度でも観に行く。 P.S. 今回の劇評が絶賛的な内容なのは、もちろん作品が良かったからです。 けっして東京小劇場観劇速報さんに 「辛口のレビューで注目です」って書かれたからではありません(苦笑)