日々是劇評

関東圏内で観劇した舞台について率直に感想を書いています。
自分用の備忘録みたいなもんなんで遠慮なく辛口な批評もしています。

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HIME企画 1st Stage 「NINE to KNUCKLE DOWN」  @中野MOMO 2012/05/22
CAP企画vol.5 「A-15〜アイゴ〜」  @中野MOMO 2012/03/08

※本文中に激しくネタバレ含みます!
 上演中の公演についてこれから観劇予定の方は閲覧ご遠慮ください。


HIME企画 1st Stage
「NINE to KNUCKLE DOWN」

2012/05/22更新  ≪中野MOMO≫ ≪HIME企画≫ ≪2012/05

HIME企画 1st Stage 「NINE to KNUCKLE DOWN」

HIME企画 1st Stage 「NINE to KNUCKLE DOWN(ナイン・トゥ・ナックル・ダウン)」

【脚本】
伊藤裕一(お座敷コブラ)

【演出】
岡崎涼子

【キャスト】
岡崎涼子、渕井達也、仁木紘、原田尚美、平田剛、大高史也、
鬼塚智子、山田うさぎ、石井隆平、石戸サダヨシ(劇団宇宙キャンパス/Re:Play)
帯包麻菜(張ち切れパンダ)、加藤千秋、藤宮潤(B-Box)、矢嶋美春

【日程】
2012年5月
17日(thu)◇19:00
18日(fri)◇14:00/◆19:00
19日(sat)◆14:00/◇19:00
20日(sun)◆14:00
◇鬼塚智子出演回
◆山田うさぎ出演回

【場所】
中野MOMO

【チケット】
前売り2800円
当日3000円
平日昼割2500円

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ただなんとなく日常を生きているだけの平凡な青年(主人公)。
ある日、国の秘密治安維持部隊の隠密作戦に巻き込まれて不幸にも命を落としてしまう。
秘宝ともいえる人工心臓を埋め込まれて命を取り留めた彼だが、
その秘密保持のため治安維持部隊のエージェントにならなければいけなくなる。
主人公にしか見ることのできない人工心臓の元となった女の子の意識(幽霊的な感じ)、
その姉、その姉に好意を持つもの、研究者、人工心臓を狙う悪の組織の者達、
いろんな人間関係を描きつつ、
秘密治安維持部隊と悪の組織の対決を描く。

まぁ、大体そんな感じのお話。


脚本をお座敷コブラの伊藤裕一氏が書いているだけあって、
「あれ?ここお座敷コブラ?」ってぐらいに仕上がりが似た作品になっていた。
演出もそういう方向を目指したのだろうか。

かなりベタなSF話なわけだが、脚本自体は良いと思う。
急すぎず遅すぎず、良いテンポで展開していくので話は頭に入ってくるし、
お客を裏切る展開こそないが、王道SFって感じで楽に観ることができた。

しかしそのSFの世界観をお客に理解させる作業をはしょっていたのはかなりのマイナスだと思う。
この作品、内容がかなりアニメよりの世界なのだ。

アクションシーンはほとんど銃を使わない肉弾戦、
電撃を放つグローブや、指輪をモチーフにした多機能な兵器、大鎌などのアニメ的な武器、
正義側も悪側も隠密行動にはまるで向いていないカッコつけ系の衣装、
ピンチになると目覚めるエヴァ暴走みたいな力、
大事なはずの心臓を、手で簡単に鷲掴みで引き抜くムチャクチャぶり・・・etc。
これらは「こういう作品なんだ」っていうのを理解した上で見れば「設定」として成立するが、
世界観を理解していない状態でいきなり見せられれば「ツッコミどころ」でしかない。
最悪、厨二病作品にしか受け取られないことだってある。

SF映画を見れば、必ず冒頭で世界観を表現する時間が設けられているはずだ。
たとえば近未来SFなら、壮大な建造物がずらーっと並ぶ景観、タイヤのない浮かぶ乗り物、
2足歩行で歩くロボットたち、音声で料理も洗顔もやってくれるハイテク機器など。
ファンタジーSFなら、広大な大地とその上空を優雅に羽ばたく巨大なドラゴン、
森で自然と共存する原住民、魔法で火を起こしたり食べ物を出したりしている日常などなど。

この作品ではそういう「早い段階でお客に世界観を理解させる」作業が足りてなかった。
どんなムチャクチャな設定だろうが、それを世界観としてお客に認めさせてしまえば
その時点でお客は脚本の味方になってもらえるだけに、もっと大事にしてほしい部分だと思う。


あと気になったのは役者の個々の技量。
セリフをちゃんと聞かせることのできる役者が少なかった。
音量、間、スピード、トーン、単語の立て方、感情の乗せ方など、
セリフを吐く上でいろんな要素があるわけだが、いろいろと技量不足。

見せれる水準に至っていないセリフが発せられる度に、シーンの温度は確実に下がっていく。
テンポの良くどんどん展開させていくストーリー構成の作品なだけに、
この部分が大きな足枷になっていて残念に思った。

あと台本通りなのかアドリブなのかは知らないが、役ではなく役者本人でボケる系のネタ。
あれはその時点で役者本人がお客を引き込んで味方につけていて初めて成立する。
その技量がないならばやらないほうがいい。


いろいろ書いたが、総合的に決して悪い作品でなかった。
個性的な役者を集めている部分も評価できるし。
今回が旗揚げだということでこれからの成長に期待。


 


CAP企画vol.5
「A-15〜アイゴ〜」

2012/03/08更新  ≪中野MOMO≫ ≪CAP企画≫ ≪2012/03

CAP企画vol.5 「A-15〜アイゴ〜」 CAP企画vol.5 「A-15〜アイゴ〜」

CAP企画vol.5 「A-15〜アイゴ〜」

脚本・演出:
鄭光誠

出演:
金恵玲、安岡和弘、森田兼史、中山佑太、保土田充、西山聖了、吹上かずき
北川宏美、相原えみり、佐藤衣里子、木原梨里子、栗林真弓、川田友紀、
西本桃、小関佳奈子、パク・チュンソン

公演日時:
2012年2月28日(火)〜3月11日(日)

チケット料金:
前売3,200円、当日3,500円(全席指定席)

場所:
中野MOMO

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ストーリーをざっくり書くと、
一流企業を辞めてフリーター生活してる主人公、劇団の座長、韓国留学生、
バツイチのスナック経営の女性などの個性的な人間が住んでいるシェアハウス。
そこに在日の女の子が新たに引っ越してくる。
各々が家族関係、差別、劇団の運営などについていろんな事情と想いを抱えており、
それに悩みつつも自分のあるべき姿を見つけていく。
まぁ、そんな感じのお話だった。


ストーリー自体はよくあるベタなお話。
これに似たような作品はドラマでも舞台でもたくさん観てきた。
ああ、このパターンの話かって感じで飽食気味に感じる部分もちょっとあった。

しかし見せ方が非常に良く出来ていてとても入り込みやすい。
音も、光もとても心地よいタイミングで入ってくるし、
会話シーンもテンポの取り方が上手くて、聞きやすく飽きにくい。
これは演出の力だろうか。

大人数がパーティーで騒ぎまくってるシーンでもフォーカスが散らからず、
舞台のどこを見ていいのかちゃんとこちらに暗黙的に伝えてくる。
役者全員がちゃんと「いま現在あるべきフォーカス」を理解しているんだろう。
大人数シーンでこれができるかできないか、それでその集団の地力がわかる。

印象に残ったのはフリーターの主人公と在日のヒロイン。
笑って、怒って、泣いて、そして成長していく。
とてつもなく人間臭く。

私は、芝居において演技が上手いかどうかっていうのはもちろん大事な要素だが
お客にとって単に魅力的な人間に映るかどうかっていう要素も同じぐらい大事だと思っている。

ほかのキャストもそうなのだが、この二人はとくに人間的な部分で魅力的に感じることができた。
そんな魅力的な人達が思い悩み、葛藤するからこそ見ているこちらも共感し、感動する。
この芝居の主軸として二人の存在はかなり大きかった。
おかげで非常に楽しめる作品だったと思う。


ただ気になったのは窃盗団の存在。
ストーリー的に必要性が全くないように思ってしまったのだが・・・。

窃盗団が忍び込んだことでシェアハウスの人間関係に何か影響があったわけでもないし、
かなり小ネタに走っていたせいで全体の中で浮いてしまっている印象もあるし。
意図的に笑いのアクセントとして入れているのであったなら
もっとガッツリ笑いをさらっていってほしかった(滑るかややウケしかなかった)。

しかも、主人公達のこれぞという感動できるラストシーンが終わり、
いい音楽が入ってこのまま暗転して終わるのかな、って流れでまさかの窃盗団シーン。
それもシェアハウスに忍び込んで見つかって逮捕されるまでというそこそこの長尺で。
そしてエンディングへ。

何故この順番にした(笑)(笑)
これシーンの順番逆にしたほうが良かったのでは。

あ、あとなんで「A-15〜アイゴ〜」ってタイトルにしたんだろう?
シェアハウスの名前がA-15(通称アイゴ)なのだが、あまり劇中では触れられず。
別に『そのお芝居の内容を総括したタイトルをつけるべきだ!』なんて固いことは言わないが、
あまりにアイゴってワードが劇中で印象にないので、なんだかなぁと思ってしまった。

そのへんが気になった以外は完成度の高い、良い舞台だったと思う。
CAP企画、今後も気にしてみよう。


 

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