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613 3rd STEP 「Vector」 @中野HOPE 2012/03/26
※本文中に激しくネタバレ含みます!
上演中の公演についてこれから観劇予定の方は閲覧ご遠慮ください。
613 3rd STEP
「Vector」
2012/03/26更新 ≪中野HOPE≫ ≪613≫ ≪2012/03≫
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613 3rd STEP 「Vector(ベクター)」 【作・演出】 613 【キャスト】 大竹浩平、丹羽隆博、大寺亜矢子、松岡努、岡崎涼子、佐藤美佐子、小林レイ、 佐藤潤平、八木佳奈子、宮ちあき、野田孝之輔 【日程】 2012年 3月24日(土)〜4月1日(日) 計14回公演 【場所】 中野HOPE 【チケット】 前売3,000円、当日3,200円 26日、27日マチネのみ平日昼割2,500円 【公式HP】 http://www.55-613.com/ ============================ おおまかにストーリーを洗うとこんな感じ。 遺伝子治療に関する研究の発表の日、 研究室のリーダー(主人公)の前にかつての友人が記者として現れる。 その記者は今回の発表が危険なものであることを掴んでいた。 主人公は記者に全てを語る。 今回の研究チームの発足時のこと、 製薬会社の一方的な意向で研究対象が変わってしまったこと、 研究員の1人に研究結果を持ち出されて競合会社に寝返られてしまったこと、 研究員の1人がガンで余命1年であることがわかり、チームから抜けてしまったこと、 ベクターに禁じ手にも近いエイズウイルスを採用したこと、 今回の発表がその安全性が立証される前の見切り発表であること。 研究者としての筋を通そうとする主人公と、それが納得できない記者。 ラストはアウトブレイクが起こって幕引き。 ・・・うーん、悪くはない。 主人公と記者の会話から回想シーンを順に進めていく 「インタビューwithバンパイア」的な見せ方は良く出来ていたし、 研究に対するいろんな人間の立場の違い、想いの違い、そこからくる苦悩など、 そういった人間関係とその発展も見事だと思った。 単純にストーリーも面白い。 ただ細かいツッコミどころが非常に多くて、それが残念だった。 まず気になったのは演出全体の一貫性の無さ。 真っ白で抽象的なデザインの舞台装置で カーテンや窓を開けるマイム動作なんかを行っているにも関わらず、 なぜか小道具だけ現物を必要以上に細かく揃えていて違和感があった。 公式HPの「今回の公演の見所」を見ると、確かに小道具にこだわっている旨が書いてあった。 しかしこれなら舞台セットも写実的にするべきでは? 表現したい方向性がよくわからなかった。 音響面でいえば、ストーリー的に辛い展開の連続なはずなのに、 時間経過と場面転換の際のBGMが歌詞アリの明るい邦楽。 徹底的に明るい曲を流すなら逆に悲しみを呼ぶこともあり効果的だが、 中途半端で微妙な前向き感がある曲ばかりで違和感だけが残った。 あと細かいが、上手下手のドアはSEでノック音が入るのに、 中央奥のドアは木製パネルを役者が叩く生音。 ・・・何故ヽ(´Д`;)ノ 演技スタイルについても、写実的な演技をする役者とそうでない役者が混じっている。 写実的な演技をしている役者も、良いセリフを言うときは正面を切る傾向があってなんか妙。 「いまから大事なこと言うから正面向きます!」みたいなのがメチャメチャ多い。 メインでしゃべってた役者はみんなそうだったから、これは演出の指示なのかなぁ。 設定もけっこうツッコミどころアリ。 各専門分野につき1人ずつだけの研究員が集められ、 しかも集められた後に研究対象の変更というのはまずありえないし、 独立行政法人が製薬会社の一社員にあそこまで一方的に仕切られることもない。 寝返った研究員がいとも簡単に研究データを持ち出していたが、 一般企業ですらアクセス権限やアクセスログの管理が当たり前のこの時代に あんなアナログなやり方はないだろう。 以上のような、細かな疑問がチラホラと頭をよぎってしまい 面白い作品なのにもうちょっとのところで集中できなかった。 本当に惜しい。 重箱の隅をつつくようにいろいろと書いてしまったが、 これも公式HPに「リアルに、シンプルに」というコンセプトが書いてあったからこそ。 できればもっともっと徹底的にこのコンセプトを追求してほしい。 それが達成できた上でこの作品を作れたならもっともっと良いものになったと思う。 今後に期待。 絶対ポテンシャルは持ってる集団。 P.S. 終盤まで主人公が基本あまり主張をせず、環境に振り回されるポジションだったため、 お客自身をこの主人公に置き換える狙いだったのかなぁと、ちょっと思った。 (ドラクエのように主人公の主張をなくしてプレイヤー自身にみせる、みたいな) 実際自分はそういうシンクロするような感覚に陥った。 もしこれを狙ってやっていたなら、ラストの主人公の 「発表のときはダンマリを決め込む」という決断はちょっと。。。 治すための研究を続けるためにって想いはわかるけど、 エイズウイルスベクターの安全性を立証できていない事実の隠蔽に手を貸すってことは 薬害で新たな患者を増やしてしまう可能性を無視するってことなわけで。 あまりに共感できない決断に、それまで主人公にシンクロしていた自分が 乱暴に引っぺがされた感覚があった。 あ、そんな狙いはないっていうならそれでいいっす。 個人的にそう感じただけなんで。