日々是劇評

関東圏内で観劇した舞台について率直に感想を書いています。
自分用の備忘録みたいなもんなんで遠慮なく辛口な批評もしています。

絞り込み 記事更新日=「2013/07」

ナイロン100℃ 40th SESSION 「わが闇」  @KAAT 神奈川芸術劇場 ホール 2013/07/23
相模舞台同盟 「エン殺陣☆ファンタジー!」  @相鉄本多劇場 2013/07/22
劇団熱血天使 第8回公演 「春雪雷風 志ver 最後の二人」  @日暮里 d-倉庫 2013/07/20
カプセル兵団 「超鋼祈願ササヅカイン 〜新たなる脅威〜 」  @笹塚ファクトリー 2013/07/15
零’sRecord企画 第1弾 「居酒屋三ツ星」  @北池袋 新生館シアター 2013/07/07
劇団扉座 「アトムへの伝言」  @新宿 紀伊国屋ホール 2013/07/05

※本文中に激しくネタバレ含みます!
 上演中の公演についてこれから観劇予定の方は閲覧ご遠慮ください。


ナイロン100℃ 40th SESSION
「わが闇」

2013/07/23更新  ≪KAAT 神奈川芸術劇場 ホール≫ ≪ナイロン100℃≫ ≪2013/07

ナイロン100℃ 40th SESSION 「わが闇」 ナイロン100℃ 40th SESSION 「わが闇」

ナイロン100℃ 40th SESSION 「わが闇」

【作・演出】
ケラリーノ・サンドロヴィッチ

【キャスト】
犬山イヌコ、峯村リエ、みのすけ、三宅弘城、大倉孝二、
松永玲子、長田奈麻、廣川三憲、喜安浩平、吉増裕士、
皆戸麻衣、岡田義徳、坂井真紀、長谷川朝晴

【日程】
神奈川公演
2013年7月23日(火)
(ほか東京公演〜名古屋公演は6月22日〜7月31日)

【会場】
KAAT 神奈川芸術劇場 ホール

【チケット料金】
前売・当日  6,500円
U25チケット 4,000円
R65チケット 5,000円

【公式HP】
http://www.sillywalk.com/nylon/

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三十余年前。
柏木家は、人口1000人にも満たない小さな村「御五色村」に引っ越して来る。
小説家である柏木信彦には三人の娘がいた。
長女・立子は齢10歳にして文壇デビュー。
同業者として、信彦は立子に嫉妬の念を抱いていた。
一方で、妻の基子がふとした事で情緒不安定に陥るようになり、
ある事柄をきっかけに自らの命を絶ってしまう。

月日は流れ、現代。
病床に臥せた信彦のドキュメント・ムービーを製作する為、
二人の男が柏木家を訪れる。
一見、さしたる悩みもなく日々を過ごしているように見える
柏木家の三姉妹だったが、
それぞれが人には言えない「事情」を抱えて暮らしていた。
季節が過ぎ行く中、彼ら彼女らの「事情」が浮上してくる……。


以上、劇場のホームページに掲載されていたあらすじ。

いつものようにエンディングまでの大筋を書きたかったが、
さすがに3時間20分の上演時間の中でめまぐるしく起きる事象と、
これ以上ないぐらいに絡み合う人間関係を全部書き綴っていると
2000字、3000字といってしまいそうなので割愛(汗)

舞台は常に柏木家の居間の中を描いており、
オープニングが引っ越してきたところから母が自殺をするところまで、
そこからその30数年後の冬、春、夏とそれぞれシーンが描写されている。


とにかく人間描写が見事。

長女・立子は、子供の頃に文壇デビューして脚光を浴びたが、
父との確執ができてしまいそれに悩む。
最近では作品が冴えず連載は打ち切られ、
病気にて失明する運命を背負ってしまう。

次女・艶子は、なんでも自分で背負って穏便に済ませてしまう性格ゆえに
劣悪な夫の行動さえも理解を示して許容してしまう。
夫の不注意の火事で小さな娘を失っている。
芸術的な才能を持ちながらも長女や三女のようにそれを表に出すことができず、
ただ周りの環境に従うだけの暮らしを送っている。

三女・類子は、破天荒な性格。
芸能プロダクションに所属して女優になる。
しかし妻子ある男性と不倫してスキャンダルになり失踪、
柏木家に戻った後は酒に浸っている。
実母の死因にもなった大嫌いな義母と、自分が同じ行動をしていることに自己嫌悪。

この三姉妹を軸にして、
引越し当初から柏木家に仕え続ける三好、
艶子の夫で暴力や暴言が絶えない最悪の性格を持つ寅夫、
病床に伏せた父・伸彦のドキュメンタリーを撮りに訪れる滝本、
その撮影スタッフの大鍋、プロデューサーの飛石、
立子に恋をする立子担当の雑誌編集者・皆藤、
兄の恋路を心配する皆藤の妹、
信彦の再婚相手で、結局は家族を捨てて出て行った志田、

とにかくいろんな事情を抱えた人間が
次々に柏木家を出入りして物語が紡がれていく。


母の精神障害と自殺、父親の再婚、その再婚相手の失踪、
文壇としての父との確執、仕事、病気、恋愛、結婚・離婚、暴力、
これでもかというぐらいに重くて暗いテーマが盛りだくさんなのだが、
その中で笑顔を見せて一生懸命に生きている人間の姿が
観ている側の心をガンガン揺さぶってくる。

特に前半ラストの雷雨の夜に大音量でBGMをかけながら
みんなで踊り楽しんでいるシーンは印象に残った。
辛いことをいっぱい抱えている人間達がみせる感情解放。
表情こそ皆笑顔なのだが、そこには計り知れないぐらいの複雑な感情が隠れていて、
観ていて本当にせつない気持ちでいっぱいになった。


役者の中では、大倉孝二演じるカメラマン・大鍋と、
松永玲子演じるプロデューサー・飛石がかなりズルイ存在だった。
とくに大鍋のほうは、もう後半はしゃべるたびに笑いが起こるぐらいに
ブッ飛んだ存在になっていてとにかく圧巻。

残念に思ったのは岡田義徳が演じた滝本。
ストーリーテラーの役割をしているにも関わらずに滑舌が悪いのは致命的。
作品のクオリティが完璧に近いだけに、そういう部分が非常に目立つ。
そんなつまんない部分で作品に水を差してしまうのはもったいない。


あ、個人的には、滝本がストーリーテラーを務めるのは
なんだかなぁという感じがあった。
滝本は今回のドキュメンタリー映画作りに命をかけていたが、
この作品に固執する理由がいまひとつわからないし、
飛石のヒモになっていて億近い借金があるというだらしない面も手伝って、
どうもこの滝本という人間に共感しづらいのだ。

そんな共感しづらい人間が要所要所で柏木家の出来事を
したり顔で語っている姿に大きな違和感を感じてしまった。
あと前述したとおり滑舌悪いし(苦笑)

別に三好さんがアホな感じでストーリーテラーやってくれても良かったような(笑)
どちらかというと自分はそっちのパターンのほうが観てみたいと思う。
いろいろやってくれて面白そうだもん。


ほか、やはり秀逸だったのは映像と照明の使い方。
プロジェクションマッピングを使った転換は見事で、
心情を表現する毒々しい効果音とともに明かりの中に人間が消えて行く姿は
夢に出そうなぐらいに脳裏に焼きつく。

立子の深層意識に現れる伸彦の姿が溶けるように消えたシーンでは、
映像だと気付いていなくてリアルでハッとしてしまったし。

ここまで舞台効果で心を揺さぶられたのは初めてかもしれない。
こういう部分のセンスもたまらなくいい。


観終わった後にとてつもなく充実感を残してくれた良い作品だった。
今回が20周年記念、40回目の公演だったようだが、
こういった団体が息長く、しかも息切れせずに走り続けてくれていることは本当に嬉しい。

これからもずっと良い作品を提供し続けていってほしい。


 


相模舞台同盟
「エン殺陣☆ファンタジー!」

2013/07/22更新  ≪相鉄本多劇場≫ ≪相模舞台同盟≫ ≪2013/07

相模舞台同盟 「エン殺陣☆ファンタジー!」

【作・演出】
實方誠一郎

【キャスト】
遠藤正志、柳沼慶樹、関根圭太、藤本ゆき乃、谷生優子、
成瀬優子、宮下真弥、大畑美恩、柴田尚輝、稲垣知美、
南雲桃、佐久間綾、佐藤麻実、雨宮ゆりの、茂原純子

【日程】
2013年7月20日(土)〜21日(日)

【会場】
相鉄本多劇場

【チケット料金】
前売  2,000円
当日  2,500円

【公式HP】
http://www.sagabu.com/

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剣や魔法で戦ってミッションをこなすタイプのオンラインゲーム。
マサシはそのゲームを剣士としてプレイして楽しんでいた。

マサシはこのゲームの前バージョン7.0の世界で
名の知れたプレイヤーだった。
しばらくゲームを離れていたが、新バージョン8.0がリリースされたために、
久しぶりにゲームにログインすることに。

そこで現れる謎のプレイヤーたち。
それに対抗するために主人公は7.0時代の自分の仲間を集める。

いろんなミッションをこなしながら、
最終的には謎のプレイヤーたちとの決戦に挑み、
マサシは多くの仲間を失いながらもこれに勝利する。

しかし実は今回のシナリオは8.0のオープニング部分で、
すべてかつてのプレイ仲間・シキが仕組んだものだった。
彼はこのゲーム会社に就職していて、
ドッキリでこのシナリオをマサシに仕掛けていたのだった。

「マサシ、楽しんでもらえたかい?」
大団円。


あらすじ的には大体こんな感じ。


とにかく戦って戦って戦いまくる100分。
ゲームの世界ということもあって武器の種類も、
剣、槍、拳、銃、鈍器、扇子、魔法と非常に多種多彩。

魔法は後に映像投射用白布を垂らして、
それにプロジェクター映像を映すことで表現していた。


上演時間の半分以上は戦ってるんじゃないかってぐらいに
長いアクションシーンの連続。
手数が多くて役者もよく覚えられるものだなと感心するが、
そのせいなのか、ちょっとクオリティが欠けていた部分もあったのが残念。

ここの殺陣師の特色なのだろうか?
殺陣が全体的に「舞」っぽい。

人間の動きが「舞」っぽいことは全然いいのだが、剣の振りまで「舞」っぽいのだ。
役者の意識の問題になるのかなぁ。
剣の振りに相手を倒す意志が感じられず、どうしてもダンスの振りっぽく見える。
「斬る気がないのに段取りだからそこに剣を出してる」って雰囲気が、
こちらに場の迫力を伝えるための邪魔をしていた感があった。


あと芝居部分の演技力は・・・もうちょっと頑張って。
特に若いメンバーの芝居は。。。(汗)


そして気になったのはラストのオマケの存在。
扇子を使ったダンスや、ダンス要素の多いアクションをやっていたのだが、
クオリティは正直言って本編中のものより高かった。
これってオマケにせずに、本編に組み込めばよかったのでは?

わざわざゆるキャラみたいな映像(オグマ?)を間に挟んでいたのもちょっと。
自分はこういうタイプのお芝居では、
お客に呼吸させないぐらいの展開で最初から最後までグイグイ引っ張って、
終演後に「フーッ!」って初めて呼吸してなかったことを思い出させるような、
そういう構成にしたほうが効果的なのではないかと思っている。
テンションが加速したお客に無駄に息つく時間を与えないほうがいいんじゃないかと。
まぁ、それをやると演じる側はとてつもなく大変だけどもね(笑)


以前にも同じようなことを書いたが、
相変わらず集客力は高く、ファン層もしっかり獲得している団体。
芝居作り以上に顧客確保が劇団を悩ませることが多いわけだが、
もうここはそれをクリアしているようだ。

あとは作品の総合的なレベルアップに期待。


 


劇団熱血天使 第8回公演
「春雪雷風 志ver 最後の二人」

2013/07/20更新  ≪日暮里 d-倉庫≫ ≪劇団熱血天使≫ ≪2013/07

劇団熱血天使 第8回公演 「春雪雷風 志ver 最後の二人」 劇団熱血天使 第8回公演 「春雪雷風 志ver 最後の二人」

劇団熱血天使 第8回公演 「春雪雷風 志ver 最後の二人」

【脚本】
水谷暖人

【演出】
菅沼萌絵

【キャスト】
高山史也、三橋忠史(劇団熱血天使)、金澤洋之(劇団熱血天使)、田山楽、
越前屋由隆(もんもちプロジェクト)、鈴木紀進(劇団熱血天使)、千代祐一郎
古田龍(演劇集団 激突撃破)、佐藤彌(81プロデュース)、岩永ゆい(プロダクションタンク)
大坂真璃子(劇団熱血天使)、丹呉麻里江

【ダンサー】
長澤仙明、春夏冬哲、落司さとこ、笠川奈美(もんもちプロジェクト)

【日程】
2013年7月11日(木)〜21日(日)

【会場】
日暮里d-倉庫

【チケット料金】
前売  3,300円(2公演セット券6,000円)
当日  3,500円
※学生はそれぞれ500円引き

【公式HP】
http://ameblo.jp/nekketsu-tenshi/

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幕末モノの物語を「志ver」と「華ver」の2つに分けて上演。
「志」は幕末から伊藤博文総理大臣就任までの話を男性中心に描き、
「華」は幕末の男達を支えた女たちの頂上決定戦を描いたコメディだったらしい。

今回自分は「志」のみを観た。


この物語でスポットが当たっている人物は
伊藤博文、山県有朋、大久保利通、桂小五郎あたり。
彼らも十分に幕末から明治維新にかけての重要人物ではあるが、
やはりどうしてもこの時代の物語では陰に埋もれがちなライン。

あえて坂本龍馬や西郷隆盛あたりの最も目立った人物を出さずに
埋もれがちな彼らのみで話を進めているのは面白いなと思った。

ただ、やや史実を丁寧になぞりすぎていた感があって、
どうしても歴史の教科書のダイジェストっぽくなってしまっていたのは残念。
次の展開に対してのワクワク感がない脚本はちょっと辛い。
もうちょっと話に肉付けしても良かったんじゃないかと。


あと演出の不在感がとてつもなく強かった。

明かりが変わって、役者が2、3人出てきて会話して、会話が終わったら明かりが変わる。
これを淡々と繰り返しているだけで、シーンがひたすら単調。
ネタ交えて笑わせるところ、ガッチリとキメるべきところなど、
メリハリがあるべきところがふわっとしていて、どうも締まりがないのだ。

稽古中、外から観ている人を立てないで役者だけで作ってきたのかなと思うぐらいに、
第三者に演出されている感が全然なかった。
うーん、なんだろう?
自分で「これだ!」という確固たるものを提示せずに、
役者から提出してきたものをチョイスして作るタイプの演出家なのだろうか?

「このシーンはこう見せたい!だからこんなふうに演出つけた!」みたいな
演出の強い意志が感じられるシーンがほとんどないため、
どうしてもメリハリがなくて全体としてのっぺりしてしまっていた。


そして、役者がどうも頑張り過ぎて空回っている感が目立っていたのが残念。
演じる側の「熱い時代を生きた熱い男達の姿を届けたい!」という想いが凄く感じられて
それはそれでいいのだが、力を抜くべき箇所でも力が入りすぎて、
常にテンションの高い位置で平坦な演技をしてしまっていたように思う。

今回の芝居に関しては、演者は「熱く見せよう」なんて思わなくて良かったのではないか。
だって、別に幕末の彼らは「熱く生きよう」と思って生きていたのではないのだから。
その時代を彼らは彼らなりに必死に生きただけ。
その生き様が、後世の私たちに熱く見えている、ただそれだけなのだ。

シンプルに彼ら自身にただ成りきって物語を綴れば、
それだけで十分に熱い物語になったのではないだろうかと思う。


あと演技を自分だけでやりすぎかな。
女性キャストはそうでもなかったが、男性キャストはほとんどがそう。

相手あってこその会話。
相手の想いをしっかり受け取ってこそ、それを踏まえた自分の想いが生まれる。
それを見せられて初めてお客は心が動く。
どうも各々が「自宅で作ってきた熱いセリフの吐き方」を実践しているだけに見えてしまった。
このやり方は必ず会話の中でボロが出るし、お客は敏感にそれに気付く。


ダンスの挿入の仕方は良かった。
アンサンブルダンサーが役者の感情や戦争状況を表現するような、
カプセル兵団などでよくやってる演出に似た手法だが、
ダンサーの質も高くてとても効果的だったと思う。

エンディングのダンスもしっかり作り込んであって良かったが、
芝居とダンスの質の差を考えると、
今回はダンスに払ったチケット代3,300円だなって印象だった。

芝居部分の根本的なレベルアップを期待したい。


 


カプセル兵団
「超鋼祈願ササヅカイン 〜新たなる脅威〜 」

2013/07/15更新  ≪笹塚ファクトリー≫ ≪カプセル兵団≫ ≪2013/07

カプセル兵団 「超鋼祈願ササヅカイン 〜新たなる脅威〜 」 カプセル兵団 「超鋼祈願ササヅカイン 〜新たなる脅威〜 」

カプセル兵団 「超鋼祈願ササヅカイン 〜新たなる脅威〜 」

【脚本・演出】
吉久直志

【キャスト】
青木清四郎、吉久直志、周晴奈、瀬谷和弘、庄章子、工藤沙緒梨、
中山泰香、矢島慎之介、下尾浩章(劇団BRATS)、岩田栄慶(キャスタッフ)、
森澤碧音(DancecompanyMKMDC)、林潔、石神まゆみ、遠藤公太朗、
北出浩二(teamSPITFIRE)、林智子(劇団ヘロヘロQカムパニー)、
ウチクリ内倉(ツラヌキ怪賊団)、谷口洋行、
中澤まさとも(有限会社トリトリオフィス)、五十嵐勝平(スタイルキューブ)、
片山健(Aflowtroupe〜空〜)、大場トシヒロ、塩路牧子(裏庭巣箱)、小林美穂、
神里まつり、小森秀一、山崎涼子、松岡美那、浦浜里奈、蓮岡煉、川島千加子、
西村岳(ツラヌキ怪賊団)

【特別出演】
稲田徹(青二プロダクション)

【日替わりゲスト】
11(木)山口勝平(悟空)
12(金)津久井教生(81プロデュース)
13(土)石川英郎(青二プロダクション)
14(日)関智一(アトミックモンキー/劇団ヘロヘロQカムパニー)
15(月祝)千葉繁(81プロデュース)

【日程】
2013年7月11日(木)〜15日(月)

【会場】
笹塚ファクトリー

【チケット料金】
前売  3,500円
当日  3,800円

平日マチネ割 500円引き
高校生以下  1,000円引き
笹幡割(笹塚、幡ヶ谷に在住の方) 300円引き

【公式HP】
http://kapselheidan.com/

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笹塚のご当地ヒーロー・ササヅカイン。
前作のブラックドリル団との戦いから2年後、
すっかり平和になった笹塚でヒーローショーをやっていた。

ネオブラックドリル団として再生した悪の組織は、
ササヅカインの設計図を元に作り上げたササヅカイン・ダークネスを投入、
本物のササヅカインを完全に圧倒する。

その後ダークネスに再戦を挑むササヅカインだったが、
そこにニューオーダーズを名乗る5人が現れて、
ササヅカイン、ダークネスは共に破壊されてしまう。
彼らは街の巨大商業施設のオーナー・ミツグが開発した有機ロボットで、
ネオブラックドリル団が集めたマイナス心エナジーの影響で暴走してしまい
究極の戦闘破壊兵器になっていた。

ニューオーダーズの圧倒的な力の前に、
ササヅカインの研究所も笹塚警察も全て壊滅させられてしまう。

しかし最後まであきらめない人々は
ササヅカインをバイオテックロイドを元に再開発、
警察は戦闘ロボットやサイバースーツを投入、
マイナス心エナジーの供給源を断ってニューオーダーズを倒していく。

ニューオーダーズ最後の1人との戦闘にて
人々から心をもらったダークネスが味方として参戦、
ササヅカインとダークネスのコンビネーションキックにて見事勝利。

この騒動を通していろんなことを学んだ街の人々は、
それぞれの道を決めて前に向かって歩いていく。
めでたしめでたし。


とまぁ、こんな感じの2時間半のお話。


笹塚ファクトリーを大人数で駆け回る激しい演出は、
いつもながら圧巻でものすごい熱量が伝わってくる。
場の転換もおそろしくスピーディーで、
とにかく観ているほうに息をつかせない、休ませない、体温を下げない、
そんな工夫がいたるところにされていた。

またアニメやテレビドラマのような本来映像作品でしかできない、
カメラワーク的な演出手法をガンガン舞台に取り入れていくのも面白くていい。
やはりこういう部分は本当に見事な集団だと思う。


ササヅカインとダークネスに対して、
思いっきり観客に見える形で声優をアテレコにつけているのも楽しい。
この声優は役者には見えない体(てい)になっているのだが、
声優本人がそれを利用してネタとして遊びまくっていた。
またその声優も舞台で遊べる人ばかりを選んで連れてきているので、
そのムチャクチャっぷりがハンパなく面白い。

罵り合ってる声優達がおもしろ過ぎて
スーツアクターのほうに目がいかないという弊害はあったが、
この手法は本当に素晴らしいと思う。
この無茶を思いついて、しかも実行しちゃってることに拍手。


ちょっと惜しいなと思ったのは役者間の実力差。

あきらかにシーンを引っ張れている人と、
それができていない人の差が激しく、
引っ張れる人不在のシーンはけっこう辛かった。
特に序盤に多かったので、物語に引き込まれるまでに時間がかかってしまった。

これだけアクションときっかけが多い芝居だと、
稽古時間のほとんどを段取り稽古に費やしてしまうのだろうか?
演技の稽古をする時間が取れていないのかなぁという印象を受けた。

上手い役者は稽古回数が少なくても自分で脚本を消化して仕上げてくる。
セリフと段取りさえ入ってしまえばなんとでもなったりする。

しかし下手な役者は自分で消化して仕上げる作業ができないし、しようとしない。
演出からの指示を受けてそのとおりにやろうとするだけなので、
稽古回数が少なくなればそれだけ指示を受ける回数が減って
最終的な成果物のクオリティは下がる。

後者側の役者ばかりで構成されていたシーンは、
やはりシーンとして完成していない、つまり稽古不足感が強かったため、
勝手にそんなことを想像してしまった。
全体としては素晴らしい芝居なのに、こういうことで水を差していては勿体無い。


役者達の総合的な地力をもっともっと高めて、
最高のエンタメ集団になっていってもらいたい。



P.S.
あー、いかん、

劇評書くときに、良いこと書いてからその後に悪いこと書いて、
結果的に『上げて落とす』みたいな感じになっちゃうのは悪いクセだなぁ。
まったくそんな意図じゃないんだけども。

ああ、文才がほしい。


 


零’sRecord企画 第1弾
「居酒屋三ツ星」

2013/07/07更新  ≪北池袋 新生館シアター≫ ≪零’sRecord企画≫ ≪2013/07

零’sRecord企画 第1弾 「居酒屋三ツ星」 零’sRecord企画 第1弾 「居酒屋三ツ星」

零’sRecord企画 第1弾 「居酒屋三ツ星」

【原作】
林大介

【脚色・演出】
荒木太朗

【キャスト】
赤沼正一、高山かな、根岸涼史、荒井晃恵、坂入翔威、本田和大

【日程】
2013年7月3日(水)〜7日(日)

【会場】
北池袋 新生館シアター

【チケット料金】
前売  3,000円
当日  3,500円

【公式HP】
http://srecord.webnode.jp/%e9%9b%b6%e2%80%99s-produce/

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気さくなマスターが一人で経営している居酒屋「Matilda」。
そこにはぐーたらな役者の卵であるマサとカズ、
マスターの旧友の三村などが入り浸っていた。

ある日、そのMatildaの二軒隣の寿司屋が
ミシュランの三ツ星を取得したという記事がフランスの新聞に掲載される。
しかしその写真には紛らわしくMatildaの看板が写りこんでいた。

新聞の写真を見たテレビ局のリポーター大竹は、
Matildaが三ツ星を獲得したものと勘違いしたまま取材に訪れる。
そこでマスターのやさしさに触れた大竹は、
無断でグルメリポート番組内でMatildaの宣伝をしてしまう。

店は大繁盛。
マスターに恩がある演歌歌手・宇田川ヒカルの協力もあり、
なんとか押し寄せる大量のお客をさばいて閉店時間となったMatildaで、
マスターの過去を知ることになる。

マスターが舞台監督であったこと、
兄貴分であった舞台監督の病死、
その意志を継いで役者のためのお店を続けていること。

自分の夢を追わずに人の夢ばかり応援することに納得がいかない皆は
一芝居打って、マスターに自分達の思いをぶつける。

そして彼らはそれぞれの道を前を向いて歩き出す。


なんだかうまくまとめられなかったけども、だいたいこんな筋のお話。


うーん、全体的には別に悪くなかったし、
大きなアラも目立たなかったのだが・・・

90分の芝居のわりにはちょっと退屈で長く感じてしまった。


前半がとにかく話が展開しなくてちょっとタルいなって印象。
そして後半は、大事なストーリーの主軸を全て長ゼリフで説明し過ぎていて、
『物語を観ている』というよりは『物語を聞かされている』という感じがした。
劇中でこういう時間が長いと観ていてゲンナリしてしまう。

物語が王道のベタ展開で先が読みやすいということも悪い方に手伝ってしまい、
次の展開にあまりワクワクできず、
強い興味心を保ったまま最後まで観劇することができなかった。


あと役者の会話スキルが微妙?
テキスト的には面白い内容をしゃべってるのに、
会話のキャッチボールがうまくいってなくて笑えないって部分が結構あった。
こういうのは単純にもったいない。


それと細かい部分だが、盛り上がり方が汚いのも残念に思った。
店内でみんなでワーッと盛り上がるシーン。
普通は登場人物が笑顔で楽しい気持ちを分かち合ってる瞬間というのは、
観ているお客側にとっても気持ちの良いものになるはずなのだが、
チェーン系居酒屋で下品な笑い声でバカ騒ぎする大学生的雰囲気になっていて、
観ていて好感の持てない盛り上がり方になってしまっていた。

こういった些細な部分でお客との距離をあけてしまうと、
後半の感動を与えるべきシーンで共感を得難くなってしまう。


第1回公演ということで色んな部分に実験的な部分もあったであろうが、
もっともっと計算高く、大胆に作品を作ってほしいなと思った。
今回の作品はキレイにまとめようとして良くない方向にいっている気がしたので。

今後に期待。


P.S.
パンフレットの中で「居酒屋の思い出」というテーマで各役者が文章を書いていたのだが、
ひとつこれ致命的にマズイでしょう、というのがあった。
人として、社会通念として。
その文章は「お酒って怖いですね」で締めていたが、ソレ怖いのはお酒じゃないよ。

本人以外でも誰かしら校正・チェックをしてる人いたはずだよね?
学生のツイッターじゃないんだから、こういう脇の甘さは気をつけるべきだと思う。


 


劇団扉座
「アトムへの伝言」

2013/07/05更新  ≪新宿 紀伊国屋ホール≫ ≪劇団扉座≫ ≪2013/07

劇団扉座 「アトムへの伝言」

劇団扉座 「アトムへの伝言」

【脚本・演出】
内謙介

【キャスト】
岡森諦、六角精児、山中崇史、野口かおる(客演)、中原三千代、
伴美奈子、犬飼淳治、高橋麻理、鈴木利典、高木トモユキ、江原由夏、
上土井敦、新原武、松本亮、松原海児、野田翔太、比嘉奈津子、塩屋愛実

【日程】
2013年7月3日(水)〜7日(日)

【会場】
紀伊国屋ホール

【チケット料金】
一般  4,500円
学生  3,000円
※当日券は500円増

ミナクルステージ割(7/3の回) 3,000円

【公式HP】
http://www.tobiraza.co.jp/

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天才・柳博士率いる森の里科学研究所は、
世界初のコメディアン・ヒューマノイドの開発に成功!
その名は「カッパ」。

世界に笑いをもたらす為、華々しく誕生したカッパだが、
肝心の科学者たちは笑いを知らない。
そこで伝説の漫才師「海老乃家ラッパ」のもとへ、
カッパともども弟子入りすることになる。

しかしカッパには重大な欠点があることが判明する。
暴言や暴力を禁じられているカッパは、激しいツッコミができないのだ。
そこにはかつて研究したロボットが軍事利用されてしまったことを
悔やんでいる科学者たちの、平和への強い想いが秘められていた。

カッパの完成を望む科学者たちはラッパの要望を受け、
暴言・暴力のセーフティーを甘くする。
しかし、ある日ラッパをゆすりに来た元・同門たちの横暴に耐えかねて、
カッパは彼らに暴力を振るってしまい、
それがマスコミ沙汰になってしまう。

カッパの廃棄処分が決定してしまうが、
ラッパは、どうせなら持ちネタの「地雷コント」を本物の地雷でやって
華々しく散るのがいいのではないかと提案する。
ロボットとして、芸人として。

そしてカッパは全国の人間が見守る中、
「地雷コント」を披露して観衆を爆笑の渦に巻き込んだ後、
はかなく粉々に散っていった・・・。


ざっくり書くとこんな感じのあらすじ。


最先端のロボット工学に対してやってることは昭和のベタベタなお笑い、
笑いが非常に多い中で奥底から時折顔を出す深い悲しみ。
本来真逆であろうことが非常にうまく融合されていて、
素晴らしい作品だと思った。


テレビでもおなじみの六角精児の存在感はとてつもないし、
メインどころを張っている役者それぞれの個性はどれも魅力的で、
どの登場人物にも好感が持てた。

個人的にはカッパが人間臭すぎて、
もうちょっとだけロボットロボットしててもよかったかなとは思ったけど。
でもそれでも非常に良い演技をしていたと思う。


演出としてすごいなと思ったのはシーンの緩急のつけ方。

シックな会話で物語が始まったかと思えば、
河童の格好をしたカッパが怒涛の笑いを展開して場を巻いたり、
テンポの良い稽古のシーンを見せたかと思えば、
カッパへの愛着に耽る研究者達の果てしない沈黙を見せたり。

「ジェットコースターのように緩急を」っていう例えがあまり好きではないが、
まさにそれに近いようなテンポのコントロールで
観ている側の心を上下左右に揺さぶりかけてくる芝居は、やはり面白い。
これは演出の力でもあるし、役者の力でもあるだろう。

ラストシーンの「地雷コント」で観客を本当に腹の底から笑わせ、
笑わせ切ったところで突然「カチッ!」と入る地雷の起動音。
そしてお別れの言葉を述べた後、沈黙の中ゆっくりと闇に溶けていくカッパ。
いやー、こういう揺さぶり方はズルいね(笑)


楽しくて、面白くて、悲しくて、
そして科学のあり方、人間としてのあり方に問いかけを発する、
奥の深い素晴らしい舞台だった。


P.S.
作品とは関係ないのだが、今回客層が非常に気になった。

木曜夜の回だったのだが、
20歳前後の若い子たちが集団で観に来ていて、
自分の周囲にそれがたくさん固まって座っていた。
大学、もしくはタレント系の養成所の授業の一環なのだろうか。

会話の内容から察するに彼らは招待扱いで来ているらしかったが、
どうやら半強制的に観に来させられたようで、開演前から、
 『えー、2時間もあんの?』
 『あー、いますぐ(終演時間の)21時になんねーかなー』
などと周囲に聞こえる声量で言いたい放題だった。

しかもその観劇中のマナーもひどく、
上演中はまるで自宅でテレビにつっこむかのごとく地声でしゃべり続け、
一度よその人に注意されても声が小声になるだけ。

そして終演後にはこれまた大きな声で一言。
 『お前アンケートに住所書いてんの?いらなくね?
  だって、金払ってまで観に来ないでしょ?』


正規のチケット料金を払って観劇している立場としては、
不愉快以外の何物でもなかった。
せっかくいい内容の芝居観てるのに完全に台無し。

マナーが悪い彼らを責めるべきか?
そんな彼らを劇場に足を運ばせた指導者を責めるべきか?
そんな指導者に招待を出してる運営を責めるべきか?

招待に関してはいろいろ大人の事情があるだろうが、
それはもっとしっかり吟味してやってほしいと切に願う。


 

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