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芸術集団れんこんきすた Vol.17 「カメラ・オブスキュラ」 @川崎H&Bシアター 2012/07/28
※本文中に激しくネタバレ含みます!
上演中の公演についてこれから観劇予定の方は閲覧ご遠慮ください。
芸術集団れんこんきすた Vol.17
「カメラ・オブスキュラ」
2012/07/28更新 ≪川崎H&Bシアター≫ ≪芸術集団れんこんきすた≫ ≪2012/07≫
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芸術集団れんこんきすた Vol.17 「カメラ・オブスキュラ」 【脚本・演出】 奥村 千里 【キャスト】 中川朝子、 舘成樹、 尾崎彰雄、 濱野和貴、山本春樹(芝居集団「Team-Jishin」)、 加賀喜信、調布大(ULPS)、大橋きよし 【日程】 2012年7月25日(木) 〜 29日(日) 【場所】 川崎H&Bシアター 【チケット】 前売 2,800円 当日 3,300円 学割 2,000円 全席自由席 【公式HP】 れんこんきすた 公式HP ============================ ビリヤード台とイスが何脚かだけ置いてある、薄暗い小さな部屋。 そこで男たちが会話をしているところから物語は始まる。 一人だけ女性がいるが、他の人間には見えていない異質の存在。 詳細は語られないが、どうやら部屋の外の世界は大変なことになっているらしい。 この部屋にいるのはそんな外界をシャットアウトし、 ただひたすら時を過ごす生活を選んだ人間たち。 昔の記憶があいまいな老人、妻を手にかけた男、頭が良くて口の悪いインテリ男、 アジア系で感情的な男、その幼馴染、元兵士、日本人留学生。 男7人は何気ない会話をしたり、自分の過去の話をしたり、ぶつかり合ったり・・・。 異質な部屋のなかで異質な女を交えて進む、人の心情を深く掘り下げた会話劇。 かなり興味深い世界観だった。 最初は安直に死後の世界なのかなと思ったがそういうわけではなく、 辛いことばかりの現実に確かに存在する、ひとつの逃げ場所のような部屋。 人の感情をそこで引き止めて前にも後ろにも動かなくしてしまうような、 そんな不思議で神秘的な空間がそこに描かれており、それは非常に美しく素晴らしい。 マンションの3階を改装して作られたH&Bシアターそのものの立地も手伝って、 「カメラ・オブスキュラ(暗い部屋)」の名にふさわしい作品であった。 作品は会話劇で、遊園地再生事業団の「砂に沈む月」を思い出す内容だった。 あちらは砂漠の中にぽつんと存在する観測所の室内で淡々と進む会話劇だったが、 ロケーションの滑稽さなどで共通する部分を感じた。 ただ、中盤で日本の現状を具体的に説明するシーンは不要に感じてしまったが。 ここまで登場人物の日常会話だけを見て、お客はそれぞれ劇中の世界を創造してきているのに、 急に設定を押し付けてくるような、そんな無粋な行為を受けたように感じてしまった。 こういうのはなんだかもったいない。 あと、会話そのものが単調で、世界観のわりにはあまり引き込まれなかったのが残念な点。 けっこう演技演技している喋り方をする役者が多く、 しかもそういう役者に限って長ゼリフが多いので、なんだかもっさりしたシーンが多かった。 大人数でぽんぽんと会話していくシーンはリズムが良くて見やすいのだが、 1対1での会話や、独白のシーンは正直飽きが来るのが早くて辛かった。 実際お客さんの中には夢の世界へ旅立ってしまってる人もチラホラ。 今回の芝居を観て、独白のシーンって本当に難しいなと再確認した。 脚本に書かれたセリフの内容、役者のセリフの言い回し、その表情やしぐさなど、 さまざまな要素を使ってお客を引き込まなければいけない。 笑いをとるのが一番安直な方法なのだが、 今回のようなジャンルの芝居はそういうわけにもいかない。 うーん、演出・役者ともに本当にハイレベルの技量を要求されるね。 あと芝居中で空調が直った・壊れたというのを 実際に劇場の空調のオン・オフで表現していたのだが、 これは個人的にはナシかなと思った。 これだけ殺人的に暑い季節にエアコンなしで、 あの天井が低く暗く狭い空間に大人数で閉じ込められているのはやはり苦痛。 逆にエアコンがオンになると、それまで暑かったぶんをリカバリーしようとしているのか ものすごく冷風が強く吹き込まれて、逆に寒くて仕方がなかった。 正直そこまで効果的な演出とは思えなかったので、できればやめてほしい。 エアコン起動時の臭いニオイのほうが遥かに気になるし。 気になる点をいくつか書いてしまったが、 本当に世界観は素晴らしいと思う。 もっと大きなハコで、多くのお客の前でやってほしい。 認められていい要素はたくさん持っていると思う。 年2回ほどのペースで公演を続けているようなので今後に期待したい。