絞り込み 劇場=「下北沢 「劇」小劇場」
ネコ脱出 「人生快速」 @下北沢 「劇」小劇場 2013/12/22
※本文中に激しくネタバレ含みます!
上演中の公演についてこれから観劇予定の方は閲覧ご遠慮ください。
ネコ脱出
「人生快速」
2013/12/22更新 ≪下北沢 「劇」小劇場≫ ≪ネコ脱出≫ ≪2013/12≫
![]()
ネコ脱出 「人生快速」 【作・演出】 高倉良文 【キャスト】 高倉良文、谷口ヒロユキ、徳田真由美、朴贊革、迫真由美、吉川英夫、今泉マサタカ、 はじかのゆうた、杉田麻由香、船戸慎士(StudioLife)、畑中ハル(潟}イカンパニー)、 大木麻紀、門柳陽子、高野亜沙美(潟tジプロダクション)、鈴木とーる(ショーGEKI) 【スタッフ】 脚本・演出: 高倉良文 舞台監督: 今泉馨 照明: 今西理恵(LEPUS) 音響: 仙浪昌弥 舞台美術: 齊藤樹一郎 宣伝美術: SaMy-BEST 制作: 小口春菜・新井知夏 企画: The cat escaped 【日程】 2013年12月18日(水)〜12月23日(月) 【会場】 下北沢 「劇」小劇場 【チケット料金】 前売 3,500円 当日 3,800円 平日マチネ割 3,000円 【公式ブログ】 http://www.the-cat-escaped.net/pctop.html ========================================== 寂れた登山鉄道駅「日向山駅」。 その駅は寂れていて、お客は一部の鉄道マニアぐらい、 鉄道会社にとっては問題のあった社員を処分する左遷先でもあった。 今回新しく辞令を受けてこの駅の勤務にやってきた白滝。 自分が左遷されたという事実を知り一時は落ち込むが、 そこに務める全員が何かしら重い過去を背負っていることを知る。 彼らの心の中の電車はずっと止まったままだったのだ。 女結婚詐欺師が騒動を起こしたり、 東山の重い病気で倒れたり、 様々な事件を経て、白滝を含む駅員達は自分の進むべき道を見つける。 そしてようやく前に向いて歩き出す。 幕。 ざっくりと書くとこういった筋のお話。 上演時間は1時間45分ぐらい。 あらすじだけ見ると非常に重苦しい話のように感じてしまうかもしれないが、 実際はバカバカしい笑いアリで楽しく見れる人情劇。 各々の笑いのセンスが光る、非常に面白い作品だった。 序盤は、正直言ってあまり話の中に入っていけなかった。 過剰な演技のキャラクターが多く、ストーリーも状況説明のためのシーンが中心のために 観ていてもあまり面白いものではなかった。 女詐欺師の事件も急展開過ぎてなんだかなぁ、って感じだったし。 しかし、中盤から近くの学校の教師であるハヤブサ先生と、 8年前の駅長であった鳥居が登場してからは急変。 確かな演技力に裏付けられたおバカなネタの数々に客席の温度は一気に上がり、 本編のストーリー展開も加速して、作品に釘付けになっていった。 とにかく面白いの一言。 脚本が非常に考えて作られているなぁと思った。 本編と関係ないコントシーンや即興シーン(ある程度は筋書きがあったようだが)に 20分ぐらい時間を割いていたので、本編は実質90分無いぐらい。 その短い時間の中で登場人物の深い部分の心理をきっちりと描写し、 めまぐるしい展開の中でそれが「停滞」から「前進」へと変化していく。 不器用な彼らのその心情の変化が、観ているこちらの心を大きく揺さぶってくるのだ。 普段「感動した」なんて言葉は安っぽくてなるべく使うのを避けているが、 この作品については率直に言うことができる。 本当に感動した。 表現力豊かな役者が多かったのも魅力的だった。 特に印象的だったのは駅長ネコの役をやっていた迫田真由美。 序盤は元気があり過ぎて、うるさい演技してるなぁと煙たく思ってしまったのだが、 年をとって死期が近づいてきてからはその佇まいが落ち着き、 長い間ずっと駅を見守ってきた、その人生から紡ぎ出される言葉は非常に重みがあった。 人生を悟りきっていてあきらめにも似た感情を持っていたにも関わらず、 東山の行動によって大きく揺り動かされ、そして最後にはその身を犠牲にして列車に飛び込む。 その姿は果てしなく美しかった。 前述したとおり序盤の空気感だけがちょっと残念だったが、 全体を見ればそんなものが気にならないぐらいに良く出来た作品であったと思う。 また次に期待。